艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、11話が終わりました

過去の仲間の機体が見付かり、さすがのパパでも精神的に参ってしまいます

今回のお話では、

そんなパパを気遣う武蔵

それを見た、たいほうの取った行動に注目です



12話 鴉は眠らない(1)

「…」

 

私は提督机の上で、深い眠りについていた

 

「大佐…」

 

横須賀君が来た事も気付かず、武蔵が相手をしていた

 

「しばらく放って置いてやってくれ…」

 

「…まさか、そんな事があったとは…」

 

武蔵は横須賀君に、事の一部を話した

 

見た事もない機体が、砂浜に墜落していた事

 

それから、パパの調子が悪い事も

 

「サンダーバード中隊…か。懐かしい」

 

「何だ⁇貴様も居たのか⁇」

 

「えぇ。私は、大佐の二番機。つまり、サンダーバード2でしたから」

 

「この、サンダーバード中隊と言うのは、何人居たのだ⁇」

 

「大佐、私、今回見つかった彼、そして、あともう一人の四人編成でした」

 

「あと一人は見付かって居ないのか⁇」

 

武蔵がそう言うと、横須賀君は下を向き、話さなくなった

 

「そうか…」

 

何となく察したのか、武蔵はため息を一つ吐いた

 

「…見付かってます」

 

「そうか︎!!」

 

「深海凄艦として…ね」

 

「なに︎!?」

 

「大佐には内緒にして下さいね。これは、私しか知らない事項ですから」

 

横須賀君は、少しだけ武蔵にその事を話した

 

この基地から離れた海域に”姫”と呼ばれる深海凄艦がいるらしい

 

その中の一人”飛行場”と名付けられた姫が、パパの飛行中隊の最後の一人らしい

 

「証拠か何か無いのか⁇」

 

「胸のエンブレムです。サンダーバード中隊で唯一女性だった彼女は、胸にエンブレムを付けていましたからね」

 

「…なんとかしてやりたいな」

 

「我々でさえ、彼女の猛攻に耐えられない。今の所、彼女からの攻撃は無い。だから、様子を見る事しか、今は出来ない」

 

「そうか…だが、何れは…」

 

「ふふ…大佐は本当に良い娘を持ったようですね…今日は引き上げます。くれぐれも、大佐には内密に、ね⁇」

 

「あぁ。気を付けて帰るのだぞ」

 

横須賀君が帰った後、武蔵はパパに上着を掛け直し、しばらく海を眺めていた

 

「なるほど…道理で提督は戦いを嫌うはずだ…」

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

深夜に目が覚めた

 

時間は…2時か

 

何か腹に入れよう

 

食堂に向かう道中、武蔵が窓際の椅子で眠っているのが見えた

 

「ごめんな…心配掛けて」

 

武蔵に毛布を被せ、額にキスした後、再び食堂を目指した

 

「初めてだな…提督よ」

 

実は起きていた武蔵が、独り言を呟いた

 

 

 

食堂に着くと、テレビが付いていた

 

《撃ちます︎!!ファイヤー︎!!》

 

「ふぁいやー」

 

テレビの向こうでは、英語訛りの女の子が、砲撃を披露していた

 

《バーニング、ラーーーブ︎!!》

 

「ら〜〜〜ぶ」

 

女の子の後に、誰かが掛け声をマネしている

 

《テートクゥ︎!!》

 

「パパだ」

 

女の子が提督に抱き付いているシーンで、その子はパパと呟いた

 

電気のスイッチを入れ、食堂を明るくした

 

「誰だぁ〜⁇夜更かしする悪い子は〜⁇」

 

テレビの近くで、チョコンと正座していたのは、たいほうだった

 

「ごめんなさい…」

 

「どれ…」

 

たいほうが見ていたのは、多分武蔵が録画してくれたであろうアニメ

 

子供にも分かりやすく艦娘を広げるために作ったものだろう

 

「たいほうも、このこみたいになれるかな⁇」

 

指をさしたのは、先程の英語訛りの女の子だった

 

「そうだな。パパや武蔵の言う事を聞いてれば、きっとなれるぞ」

 

「パパ」

 

「どうした⁇」

 

「パパは、たいほうも、むさしも、はまかぜも、すき⁇」

 

「当たり前だ」

 

「ふぃりっぷも⁇」

 

「そうだ」

 

「あのね…」

 

「ん⁇」

 

たいほうの近くに顔を寄せると、何を思ったのか、彼女は私の頭を抱き寄せた

 

「たいほうもね、これしてみたかったの」

 

「むさしのマネか⁇」

 

「うん。でも、むさしはおむねがあるから、もっとやわらかい⁇」

 

「あったかいのは一緒だよ」

 

「ふふふ。よかった」

 

最近、たいほうにあまりかまってやれなかったかな⁇

 

考えてみれば、すぐ分かる

 

深夜に一人でアニメを見ていたのも

 

アニメの中で提督が出て来た時に”パパだ”と呟いたのも

 

英語訛りの女の子になりたいって言ってたのも

 

私に甘えたかったからじゃないか…

 

少し考えれば、すぐ分かる事なのに…

 

私はきっと、無意識の内に、母性のある武蔵に甘えていたのだろう

 

現に昨日の一件だって、甘えっきりだった

 

もっと、甘えさせてやらなければ…

 

もっと、楽しませてやらなければ…

 

私は弱いな…

 

「たいほう、もうねるね⁇」

 

「俺と一緒に観ないか⁇」

 

「いいの︎!?」

 

「今日だけだぞ⁇」

 

「やった〜︎!!」

 

たいほうを膝の上に乗せ、彼女が眠るまで、アニメを流していた


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