「特殊兵装欄の”MSW”を起動して、ドラム缶に標準を合わせてくれ。ビックリするぞ⁇」
《こうかしら》
時間にして約二秒
ドラム缶は内部爆発を起こした
「おしっ、完璧な出来だな‼︎」
《標準を合わせるだけなのかしら⁇》
「そっ。細かい動きは嫌いだろ⁇」
《よく分かってるじゃない》
Micro Shock Wave…通称、MSW
特殊な電磁波を物体に照射し、内部爆発を起こさせる兵装だ
「人間には当たらないし、味方にも当たらない様にしてある。安心して使えばいい」
《中々やるじゃない》
「ちゃんと俺達を護ってくれよ⁇」
《面倒の掛かる犬ね…全く》
ヘラはふふふと笑う
ここの基地に来てから、ヘラは笑う事が多くなった
…叢雲はどうか、まだ分からないが
「さ、今度は叢雲に戻って試してみよう」
叢雲に戻ったヘラは、俺が待つ工廠の中心に来た
「これだ」
俺の前には、ウサ耳の様なパーツが二つ置かれている
「これは後頭部に付ける。後ろ向いてみ」
後ろを向いた叢雲の後頭部に、そのパーツを付ける
「おっ。よく似合ってるぞ⁇」
「鏡を見たいわ」
鏡を見せると、叢雲は体を一周させた
「中々いいじゃない」
「じゃ、もっかいやってみようか。野郎共‼︎ドラム缶配備ぃ‼︎」
”よっしゃ分かった‼︎”
妖精達がドラム缶を洋上に浮かべる
「やり方は簡単。見詰めればいい」
「どれ…」
叢雲は流れて行くドラム缶を見詰めた
叢雲は気付いていないが、叢雲がドラム缶を見詰めている最中、ウサ耳が赤く発光している
此方はヘラより少し遅い約五秒後、ドラム缶は破裂した
「ちょっと反応が遅いわね…」
「戦闘機と”人間”じゃ、反応速度も違うさ。まっ…」
俺は叢雲の頭に手を置いた
「あっ…」
「上手く使えよ⁇俺の力作なんだぞ⁇」
「あ、うん…」
その時、叢雲は何と無く分かった
この人は、私達を”兵器”としてではなく、一人の”人間”として見てくれる…
みんな、彼やパパに着いて行く理由が、少し分かった気がした
「あれ⁇きそは⁇」
「捕まえ…られなかった…」
横須賀が工廠のど真ん中で仰向けになって倒れている
「ムカつく乳ね」
「乳だけが自慢なんだよ。許してやれ…」
「な、何ですって⁉︎」
横須賀が二人におちょくられている最中、きそは基地内の何処かに立ち、何かを見詰めていた
「待ってて。僕がお母さんに会わせてあげる…」
MSW…叢雲とヘラの兵装
Micro Shock Waveの略で、目に見えないマイクロ波を物体に照射する兵器
無機質な物にしか効かず、人間や生き物に向けても効果は無い
短時間照射するだけで、物体内部で爆発を起こし、一気に破壊するトンデモ兵器
ヘラ使用時のみ、一度に数個照射可能