艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、83話が終わりました

今回のお話は、題名に少しだけヒントが隠されてます

短編だよ


84話 トータルきそ ヘラリコール

《犬。何をパニクってるの⁇》

 

「か、かか、か、か…」

 

《言語まで忘れたのかしら⁇駄犬ね》

 

「こ、こここ、こ、ここ」

 

《言ってみなさい。笑わないであげるから》

 

「子供が出来た‼︎」

 

それは数分前に遡る

 

朝食を取り終え、いざ工廠に行こうとした時、いきなり鹿島が言い放った

 

「レイっ。私、赤ちゃん出来ました‼︎」

 

「待て。誰の子だ」

 

そりゃあ俺は鹿島と体を重ねた事は何度もあるが、ちゃんとゴムはしていたはずだ

 

「うふふっ、レイの子供ですよっ、正真正銘の‼︎」

 

「あ…あああ…ああ…」

 

 

 

 

そして、現在に至る

 

《あら、おめでとう》

 

「違う‼︎俺はやってない‼︎言っただろ⁉︎戦争が終わってからにするって‼︎」

 

《じゃあ寝取られね。一気に哀れになったわ》

 

「レイ〜‼︎赤ちゃん出来たってホント⁉︎」

 

きそが来た

 

「赤ちゃんの名前決めた⁉︎」

 

「き、決めてない…」

 

「決めようよ‼︎」

 

「いや、しかしな…」

 

「レイの”本当”の赤ちゃんなんだよ⁉︎」

 

「…何で知ってるんだ⁇」

 

「あ」

 

「こらっ‼︎待てっ‼︎」

 

逃げ出そうとしたきそを捕まえ、事情を聞いた

 

 

 

鹿島は数週間前、夜間哨戒任務で疲れてベッドに直行した俺を襲ったらしい

 

きそはいつも通りの事だと思い、放っておいた

 

俺の上で鹿島が悲鳴を上げるのは日常茶飯事みたいだ

 

 

 

「もうすぐ産まれるから、横須賀に行くんだって‼︎」

 

「はぁ…起こってしまった事は仕方無い…」

 

頭を抱える俺をよそに鹿島は二式大艇に乗せられ、設備の整った横須賀で出産する事になった

 

「ばいば〜い」

 

きそが笑顔で二式大艇を見送る横で、俺は涙目になっていた

 

「…うぅ」

 

「艦娘と人間の間に出来た子は、ホントに成長早いね」

 

「心の準備も出来てねぇっての…」

 

 

 

2日後…

 

《レイ‼︎産まれたわ‼︎超☆元気な女の子よ‼︎》

 

「す、すぐ行く‼︎」

 

《それとね、レイ。正真正銘アンタの子よ。明石がちゃんとDNA検査してくれたから‼︎》

 

「う…うんうん‼︎」

 

何故か分からないが、急に涙が溢れて来た

 

「レイ‼︎迎えに行こう‼︎」

 

「隊長、行って来ます‼︎」

 

「あぁ‼︎」

 

フィリップに乗り、一直線に横須賀を目指す

 

《名前決めた⁉︎》

 

「まだ迷ってる。お前の妹だからなぁ…」

 

《そんな風に考えてくれてたんだ…嬉しいよ‼︎》

 

「見てから決める事にするかな」

 

横須賀に着くと、基地の整備士達が慌ただしく俺達を迎えに来てくれた

 

「さ、レイさん、きそちゃん。フィリップは任せて執務室へ‼︎」

 

「あ、あぁ」

 

「うんっ‼︎」

 

横須賀の執務室の前に着き、一度呼吸を整える

 

「ふぅ…」

 

「緊張してる⁇」

 

「まぁな…ちょっとしてる。あぁ‼︎俺に似てたらどうしよう‼︎」

 

「見ないと分からないよ‼︎行こう‼︎」

 

あぁ、決断力のあるきそを連れて来て良かった…

 

きそは俺と同じで、横須賀の執務室だけ蹴り飛ばして開ける

 

悪い所が似てしまった…

 

「レイ‼︎ほらっ、お父さんですよ〜‼︎」

 

鹿島の足元に、毛先の白い女の子が立っている

 

アイちゃんを見ているので、立っている事であまり驚きはしなかった

 

「お父さん⁇」

 

しかももう喋っている

 

「そう。君のお父さんだ」

 

「マーカス・スティングレイって言うのよ⁇」

 

「お父さん⁇」

 

「僕はきそ‼︎」

 

「きそ⁇」

 

覚える事が多いみたいで、少し混乱している

 

「レイ⁇名前は決まりましたか⁇」

 

「そうだな…”時津風”…時津風にしよう‼︎」

 

何と無くそんな気がする…

 

「いい名前じゃない⁇」

 

「時津風‼︎」

 

「何か悩んでたけど、もう片方の方は⁇」

 

「天津風かな…とにかく、名前に風を付けたかったんだ」

 

「なるほどね」

 

「まっ、母子共に健康で良かったわ。もう基地に帰っても大丈夫よ」

 

「横須賀」

 

「ん⁇」

 

「この子は戦いに出さんぞ。いいな」

 

「えぇ。いいわ」

 

今日は何処にも寄らず、そのままフィリップに乗った

 

「フィリップ」

 

《どうしたの⁇》

 

「俺は上手く育てられるだろうか…」

 

《あの霞を手懐けたんだ。きっと大丈夫だよ‼︎それに僕だっている‼︎》

 

「ん…」

 

 

 

 

 

 

 

《犬。起きなさい、犬‼︎終わったわよ‼︎犬‼︎》

 

「んが…」

 

《どうだったかしら⁇いい”夢”見れたかしら⁇》

 

「あ…あぁ…現実味に溢れすぎて、まぁ境目が分からん。時津風は⁇」

 

《それが夢の方よ》

 

「そっか…ははは、まぁ、そうだよな‼︎何か俺、消極的だったし⁉︎」

 

《犬は強気の方が似合ってるわ⁇》

 

「はは、だよな⁉︎」

 

実はこれまで見て来たのは、全部夢である

 

きそが開発したこのプログラムのテストの相手に俺が選ばれたのだ

 

プログラムはヘラに直結しており、ヘラに乗った時に自動で取り付けられるヘルメットから特殊な催眠ガスを出し、記憶から色々操作して、なるべく希望に沿った夢が見られると言う、本当に夢のプログラムだ

 

因みに俺が見たかった夢は”自分の子供”だ

 

よくよく考えれば、幾ら艦娘でもあんなスピード出産する訳が無い

 

が、子供は確かに俺と鹿島に似ていた

 

「しばらくは封印だね。この前見た映画みたいには行かないや。火星に行かなかったでしょ⁇」

 

ヘラのモニターを見ると、この場に居た三人が一つずつ出した”見たい夢”が書かれていた

 

俺は自分の子供

 

ヘラは性格逆転

 

きそは火星

 

この前深夜にやっていた、昔の映画の影響だと思う

 

こんな装置あったしな

 

「でもまぁっ…中々のモンだったぞ⁇きそがお姉ちゃんになってた」

 

「僕がお姉ちゃんかぁ…楽しみだね‼︎」

 

《奥さんに似ると良いわね。犬は良い所無いし》

 

「ヘラ、いいか⁇…俺はイケメンだろうが‼︎」

 

《言ってなさい》

 

三人の笑い声はしばらく工廠から止まなかった


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