艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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83話 ドSな黒い姫(2)

「グレイゴーストか…そう言えば実物は見た事無いな…」

 

「ラプター以上に激レアな機体さ。まぁ、不遇とも言えるな…産まれた後、前線に出た記録が無い。それで捻くれてるのかも…」

 

「ま、会ってみなきゃ分からんな」

 

「もうすぐフィリップの横の格納庫に入る。レイ、あの子に何かあったら、手助けしてやってくれ」

 

「分かった」

 

「じゃあな」

 

「ばいばい」

 

「ばいば〜い」

 

ミハイルとUちゃんと別れ、ようやくゴマ団子と杏仁豆腐を食べ始めた

 

「やっぱ結構イケるね」

 

「おぉ。アンコもミチミチに入って美味い」

 

「ごちそうさま‼︎」

 

「うむ、美味であった‼︎」

 

きそは頬にゴマを付けた所を見ると御満悦だった様だ

 

「ありあとうろあいあした‼︎」

 

丹陽と別れ、店を出る

 

俺達二人があまり食べ無かったのは、もう一件行かなければならないからである

 

「こんにちは〜‼︎」

 

「あら‼︎いらっしゃい‼︎」

 

浦風の店だ

 

少し覗いてみたかったんだ

 

いざ席に座ろうとした時、無線が鳴った

 

「あ⁉︎んだよ‼︎」

 

無線の先は横須賀だ

 

《格納庫の所に来て‼︎至急よ‼︎》

 

無線は切れた

 

「きそ。俺はグレイゴーストを見てくる。どうも任務らしい…」

 

「後でその子にパック持たせるけぇ、ゆっくり食べて‼︎」

 

「すまん、助かる」

 

「いってらっしゃ〜い」

 

浦風の店を出て、グレイゴーストの所に急ぐ

 

フィリップの格納庫の横って言ってたな…

 

「うわ‼︎」

 

「ぐわ‼︎」

 

「え''」

 

フィリップの格納庫に近付いた瞬間、人が二人飛んで来た

 

「どうした⁉︎敵か⁉︎」

 

「アレです、イテテ…」

 

飛ばされた二人は、パイロットスーツを着ていた

 

どうやらグレイゴーストに乗ろうとしたらしいが、弾き出された様だ

 

「あ‼︎きたきた‼︎レイ、こっちよ‼︎」

 

格納庫の前で横須賀が手招きしている

 

「この機体がYF-23 グレイゴーストよ」

 

目の前には、濃い灰色をした機体が鎮座している

 

「話によるとして無人機だって⁇」

 

「そうなんだけど…ちょっと性格に難有りでね…」

 

《私に乗るなんて10年早いわ‼︎》

 

幼さが残る高い声で、乗るパイロット全てを弾き出し、あまつさえ自分でファイアコントロールを外している

 

「で。俺に何しろと」

 

「性格治して頂戴。アンタ得意でしょ、機械弄り」

 

「断る」

 

「命令よ‼︎」

 

「あの子は生きてる。弄らなくてもいい。俺のやり方で行く。文句あるなら、俺は降りる。どうする⁇」

 

「…任せる」

 

こう言う時に限って弱気になりやがって…

 

「そこにいろ。前に出るなよ」

 

横須賀を陰に隠し、グレイゴーストの前に立った

 

「とんだじゃじゃ馬だな、グレイゴースト」

 

《失礼な男ね。初対面の女性にイキナリじゃじゃ馬は無いと思うわ⁇》

 

「人を護る奴が人を傷付けるとは、感心しないな⁇」

 

《私は私のやり方でやるの。ゴミ以下のパイロットを乗せる訳には行かないわ》

 

「なるほど…プライドは立派だな」

 

《貴方、名前は⁇》

 

「マーカス・スティングレイ。エンジニア兼パイロットだ。お前は何か別の名前はあるのか⁇」

 

《そんなの無いわ。今までの科学者やエンジニアは、私の身体を触るだけ触って、用済みになったらポイしたからね。じゃ、アンタ今から犬ね》

 

「言ってくれるじゃないの」

 

《犬、燃料入れなさい》

 

「はいはい…」

 

こう言う扱いは横須賀で慣れている

 

グレイゴーストにホースを繋ぎ、燃料を入れる

 

《犬。私に乗ろうなんて、考えちゃダメよ⁇》

 

「考えてねぇよ。俺は素直でマヌケで甘えんぼな無人機のパイロットなんでね」

 

《…あら、犬も無人機に乗る時代になったのね⁉︎あはははは‼︎》

 

「言ってろ」

 

グレイゴーストの罵声はしばらく続いた

 

夕飯頃、ようやくきその持って来たパックに入った広島焼きを食べられた

 

「お嬢様みたいだね」

 

「ま、性格は人それぞれさっ。お前みたいな奴もいれば、クイーンみたいな奴もいるし、こいつだってそうさ」

 

《犬。それは何⁇》

 

「広島焼きさ。中々美味いぞ⁇」

 

《犬の子分。他の連中が居ないか、外を見て来て》

 

「う…嫌だけど仕方ないね…」

 

きそは渋々外に出た

 

「何だ⁇二人っきりになりたかったのか⁇」

 

《そうよ。悪い⁇》

 

「悪かないな。レディと二人っきりになれるとは光栄だね」

 

《犬の癖に煽てるのは上手ね》

 

「まぁな。ここの司令官にウンザリする程相手させられてるからな」

 

パックをゴミ箱に捨て、椅子にもたれかかる

 

《…グレイゴーストって、呼びにくいでしょ⁇》

 

「いや。いい名前だと思うな」

 

《私は嫌い。所詮は科学者共が付けた名前だもの》

 

「なるほど…」

 

《…犬。私に名前を付けなさい》

 

「普通逆じゃねぇのか⁇主人が犬に名前を…」

 

《犬の分際で主人に逆らうつもり⁇》

 

「よし、ちょっとだけ考える。待ってくれ‼︎」

 

俺は一瞬だけ考えた

 

すぐに答えを言わないと、お嬢はすぐに冠に来る

 

《まだ⁇》

 

5秒もしない内にコレだ

 

「”ヘラ”…ヘラにしよう」

 

《ヘラ…》

 

「気になるなら自分で調べるこったな」

 

《犬》

 

「ん⁇」

 

《気に入っわ。二人の時は、その名前で呼んで。いいわね》

 

「…おぅっ‼︎」

 

こうして、俺は少しずつ彼女と会話し、少しずつ打ち解けて行く事にした




YF-23 グレイゴースト ”ヘラ”…超の付くドSお嬢様AIの無人機

アメリカからやって来た、性格に難有りの無人機

搭乗するパイロットを弾き出したり、自身のファイアコントロールを弄る事が出来る為、危険因子として処分寸前の所を、横須賀が超☆格安で購入

申し分無い性能を持っているが、他人の命令は絶対に聞かず、自身の思った事が一番正しいと認識して行動する

彼女に無許可で無理矢理乗ったり、乱暴な扱いをすると更に怒る

話し相手になってくれるレイを犬と呼んだり、結構お嬢様気質が目立つが…⁇

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