艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、82話が終わりました

今回のお話は、新しい戦闘機と新しい艦娘⁇が、出て来ます

戦闘機はまだしも、艦娘は誰か分かるかな⁇


83話 ドSな黒い姫(1)

朝早くから、横須賀で一機の機体が白煙を吹いている

 

「横須賀‼︎お前バカか⁉︎」

 

《丸々返してあげるわ‼︎》

 

「確かに面倒見るとは言ったがなぁ…」

 

俺の周りには

 

零戦

 

零戦

 

零戦

 

零戦零戦零戦‼︎

 

ぜーんぶ零戦‼︎

 

大規模空襲でも、こんな規模は無い‼︎

 

横須賀から空戦訓練の要請があったのはいいが、まさかこんな規模だとは…

 

「何で一人でこんだけ見れると思ったかなぁ…」

 

《アンタ一人じゃないわ。隊長は対艦訓練、鹿島は護衛訓練をしてるわ》

 

「んで、俺は対空戦かい」

 

《私語は終わりよ‼︎全機、レイに撃墜判定を出しなさい‼︎出した部隊には間宮の券をあげるわ‼︎》

 

「でたぁ‼︎間宮の無料券‼︎」

 

《よっしゃあ‼︎行くで‼︎》

 

《覚悟し‼︎》

 

「はぁ…仕方無い。フィリップ、敵は何機いる⁇」

 

《スキャンデータだけでも50機はいるね》

 

「行くぞ…‼︎」

 

急ブレーキを掛け、零戦の群れから離脱する

 

「さぁ来い‼︎蹴散らしてやる‼︎」

 

 

 

 

二十分後…

 

横須賀は執務室で呑気にオレンジジュースを飲んでいた

 

流石のレイも50機相手は無理だろうと踏んでいた

 

《…横須賀》

 

「あら、撃墜されちゃった⁇」

 

《終わったぞ…計72機、全機撃墜だ》

 

「はぁ⁉︎嘘でしょ⁉︎」

 

モニターを見ると、発進した機体全てに撃墜判定が出ていた

 

「アンタ化け物なの⁇」

 

《アホ‼︎テメェがやれって言ったからやってやったんだろうが‼︎》

 

横須賀は数個間違いを犯していた

 

一つ目は、フィリップには光学ステルス機能がある事

 

二つ目は、レイを甘く見た事

 

そして三つ目は、その二人を敵役に回した事

 

「良いデータが取れたわ‼︎帰って来て‼︎」

 

《間宮の無料券以外の褒美用意しとけよ》

 

「あ〜…きそちゃんの前でキスしてあげる」

 

《よ〜し、いっちょう新型ミサイルの威力を横須賀で試すか‼︎》

 

「わ、わ〜かったわよ‼︎ちゃんと用意しとくから、ねっ⁇機嫌直して、レイくんっ‼︎」

 

《…ちっ》

 

横須賀との無線を終えてすぐ、フィリップが話し掛けて来た

 

《レイくん、だって》

 

「あいつにそう呼ばれると、何でか反発出来ないんだよな…」

 

 

 

 

しばらくし、陸戦機も艦載機も元いた場所に戻る

 

「お帰りなさい」

 

格納庫に戻ると、横須賀があきつ丸の服を着て待っていた

 

「爆裂似合わんな‼︎」

 

「うっさいわね‼︎タンクトップ一丁で乗ってる誰かさんよりマシよ‼︎」

 

「けっ‼︎」

 

《やっぱり仲良いね‼︎》

 

「良い訳ないだろ‼︎」

 

「良い訳ないでしょ⁉︎」

 

二人してフィリップにツッコむ

 

《レイ、これから繁華街に行くの⁇》

 

「そうだなぁ…腹減ったし、たまには行くか。こいつの執務室にいるから、準備出来たら来いよ⁇」

 

《分かった‼︎》

 

横須賀の執務室に行き、戦闘データの入ったディスクを渡した

 

「ホラよ」

 

「いつも悪いわね…」

 

「んで‼︎報酬は何だ⁉︎たまには期待していいだろ⁉︎」

 

「そうね…」

 

 

 

 

 

 

「う〜ん‼︎」

 

フィリップから出たきそは背伸びをした

 

最近日常の光景になりつつある、フィリップからの分離

 

格納庫に居た人間はほとんど驚かなくなっていた

 

「きそちゃん、これから繁華街に行くのかい⁇」

 

いつもの中年の男性が、きその前で膝を曲げた

 

「うん‼︎何か甘い物食べたいなぁ〜」

 

「ちょっと見て欲しい物があるんだ」

 

「あ、うん」

 

中年の男性に連れられて来た場所には、強化ガラスで厳重に保護された何かの鉱石があった

 

「これ、榛名さんから貰った鉱石だ‼︎僕、これで刀造ったんだよ‼︎」

 

「か、刀⁉︎」

 

「そう‼︎この鉱石はね、一回溶かして違う形にすると、その形を覚えて自分で修復する凄い物なんだよ‼︎」

 

「そっか…これにはそういう効果が…」

 

「これ何処で手に入れたの⁇」

 

「私達も榛名さんからだよ。研究するんダズル‼︎とか言って置いて行ってくれたんだけど、用途が分からなくてね…」

 

「それで、何で僕に⁇」

 

「きそちゃんは結構有名だからね。色んな石や鉱石について詳しいって」

 

「へへへ…」

 

きそは頭を掻きながら、照れ隠しの様に笑っている

 

「僕は刀にしたけど、おじさん達は別のにした方がいいよ」

 

「どうしてだい⁇」

 

「僕はこの鉱石より少ないから刀にしただけなんだ。これ位なら、もう少しいい物が造れるよ⁇」

 

「そうかなぁ…」

 

「あ‼︎盾とかは⁉︎自己修復機能があるから壊れないよ⁇」

 

「盾…か‼︎名案だな‼︎」

 

「じゃあ…」

 

 

 

 

 

 

「きそちゃん遅いわね⁇」

 

「あぁ…」

 

きそが来るのを待って、執務室に俺は椅子に座って下を向いていた

 

「いつまで落ち込んでんのよ‼︎」

 

「色仕掛けに負けた自分が辛い…あぁ、ヤダヤダ‼︎」

 

「動画撮っておけば良かったわね」

 

「やめろ‼︎」

 

あきつ丸の服…

 

横須賀…

 

そしてこの俺の落ち込み具合…

 

何があったかは、想像にお任せする

 

 

 

数十分後、ようやくきそが来た

 

「レイ‼︎横須賀さん‼︎凄いの出来たよ‼︎」

 

「何か造ってたのか⁇」

 

「うんっ‼︎来て‼︎ホントに凄いんだ‼︎」

 

俺達はきそに手を引かれ、工廠に入った

 

「あれ‼︎」

 

男衆や妖精が動いている中心に、銀色の盾が見えた

 

見た目はジュラルミンの盾と相変わら無いが、きそが関わってるなら、何かしらの効果があるかも知れない

 

「見てて‼︎」

 

きその手には、いつの間に取ったのか、横須賀のピストルが握られていた

 

「え⁉︎いつの間に⁉︎」

 

きそは盾に向かって三発銃弾を放った

 

盾は銃弾をしっかりと防ぎ、勢いを無くした銃弾は床に落ちた

 

「おぉ…」

 

「頑丈なのね…」

 

「盾見てよ‼︎」

 

盾を見ると、不思議な事に気が付いた

 

銃弾の跡が一つも残ってない‼︎

 

「え⁉︎何この盾‼︎」

 

「名付けて”Pシールド”‼︎」

 

自慢気に語るきそだが、俺は何と無く”P”の意味が分かった気がする

 

「凄いわ…」

 

「横須賀さんにあげる‼︎じゃあ、僕はレイと繁華街に行くね‼︎行こっ、レイ‼︎」

 

「おう‼︎」

 

小走りで工廠を出たのも、何と無く分かる

 

「ごめんね、レイ。待ったでしょ⁇」

 

「横須賀の相手は大変なんだぞ⁇」

 

「なははは…甘い物食べようよ」

 

「だな」

 

前に雲龍が出店で食べていた杏仁豆腐の店を、今日は本店に行ってみる事にした

 

「いらっしゃいませ‼︎飲茶”丹陽”にようこそ‼︎」

 

甲高い声の主は身長が小さく、口が開くと前歯が見える女の子だった

 

「た…たんやん⁇」

 

「はいっ‼︎丹陽”れ”す‼︎ゆき…丹陽は中国人”れ”す‼︎」

 

何か言いかけたが、ここは二人共気にしない事にした

 

「え〜と…僕はゴマ団子二つと、杏仁豆腐の小さいの。レイは⁇」

 

「杏仁豆腐の普通で」

 

「”お”マ”ら”ん”お”二つと、杏仁”ろ”うふの小さいのと普通”れ”すね‼︎かしこまりました‼︎」

 

丹陽は注文票を持って、奥に行った

 

「濁点弱そうだね」

 

「おまらんおと、杏仁ろうふだと」

 

「ギリギリ分かるね」

 

しばらくすると、丹陽がゴマ団子と杏仁豆腐を持って来た

 

「貴方、レイさんれすか⁉︎」

 

「そうだ。何で名前知ってるんだ⁇」

 

「あの人”あ”よんれました‼︎」

 

丹陽が口を開けて指差す方には、ミハイルとUちゃんがいた

 

「ちょっと待ってろ‼︎」

 

ゴマ団子と杏仁豆腐を持ち、ミハイルの席に向かう

 

「よっ」

 

「来てんなら言えよ、水臭えなぁ‼︎」

 

「ははは、すぐここを発つ。アメリカから一機、この基地に輸送されて来た機体があるから、レイに伝えておこうと思ってな」

 

「アメリカから⁇」

 

「グレイゴースト…聞いた事無いか⁇」

 

聞いた事がある

 

YF-23 グレイゴースト…

 

一般的にはブラックウィドゥの名で知れ渡っている機体だ

 

ラプターやライトニングの基盤になった機体だ

 

だが、それが何故今更⁇

 

「無人化に成功したんだけど、性格に問題ありでなぁ…」




性格に難有りのYF-23、どっかで見た事あるって⁉︎

誰だその子は‼︎

言ってみなさい‼︎

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