艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、79話が終わりました

前回でも言った通り、今回は北上さんのお話です


80話 愛のオセロゲーム(1)

「健吾〜、健吾ってば。起きろ〜」

 

ベッドで眠っている健吾を揺する

 

「ん…スクランブルですか⁉︎」

 

健吾はいつもの癖で飛び起きた

 

「いやぁ、違う違う。遊びに来ただけだよ」

 

「そ、そうですか…」

 

再び横になり、枕に突っ伏す

 

「相変わらず整理整頓されてるねぇ〜偉い偉い」

 

「好きな本あるなら見てもいいですよ…ふぁ…新型機の資料もありま…す…」

 

「寝ちゃった…昨日の夜あんだけアイちゃんに振り回されりゃこうなるか…」

 

私は健吾の頭を撫で、彼がいつも腰掛けている椅子に座り、机の上に置かれた資料を手に取った

 

「ほうほう…よくまとめられてる」

 

健吾はヘルハウンド隊に居た頃から書類仕事やデータ管理は得意だった

 

見易く、そして分かりやすく書かれていて、上層部にも好評だった

 

「変わらないねぇ〜」

 

北上は椅子から立ち、健吾の寝顔を見て、再び頭を撫でた

 

彼が私に好意を寄せていたのは知っている

 

私自身も彼が好きだ

 

恋仲以上の関係にもなっていた

 

悔やまれるのは、あの日彼を切り離してしまった事

 

好きだから…

 

愛していたからこそ…

 

彼には生きていて欲しかった

 

だから、エドガーに任せた

 

どうやら、それだけは正解だったみたいだ

 

こんなに生き生きする彼を見たのは初めてかも知れない

 

まぁ、それも、左手の指輪を見れば何と無く分かった

 

「健吾…君はよく私に仕えてくれたね…」

 

ヘルハウンド隊に居た時から、彼はエースだった

 

上でも下でも私の傍に居てくれて

 

挙げ句の果てには、敵に体当たりしてまで私を庇ってくれた

 

ソ〜っと彼の服の右袖を捲ると、一直線に伸びた大きな縫い傷が出て来た

 

体当たりをかました時に、機体の破片が刺さった

 

直前に機体から脱出した為、奇跡的に一命は取り留めたが、しばらくは出撃も出来ない体になってしまった

 

「私、ここに来て良かったよ。また君に出逢えたし…今度は私が君の傍に…」

 

ふと、大和の顔が浮かんだ

 

あぁ、そうか…

 

この恋は、もう叶わないのか…

 

「隊長…」

 

「起きたかい⁇」

 

健吾は私の顔を見るなり手を取った

 

「お…」

 

「ここに居て下さい…」

 

「ふふ…はいはい」

 

寂しがりは治ってないね

 

全く…君を寝かせるのは今も昔も大変だ…

 

「浮気したら大和に怒られるよ⁇」

 

「浮気じゃない…隊長は今はただの抱き枕です」

 

「言ってくれるじゃないの〜」

 

そうとは言いつつ、私は健吾の手を握った

 

変わらない、まだおぼこい手

 

「よいしょ…っと」

 

健吾の隣に寝転び、彼の寝顔を見つめる

 

大和にバレたらブチコロものだ

 

「健吾」

 

「はい…」

 

彼は薄っすら目を開けた


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