艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、76話が終わりました

今回のお話では、とある人物の過去に関わった人物が出て来ます


77話 あの日の鳥(1)

変わらない日常が、基地に流れて行く

 

レイは砂浜で子供達の面倒を見ている

 

私は執務室で報告書を見ていた

 

”所属不明機、攻撃過激化”

 

目を引く記事だ

 

「提督よ、物騒な世の中だな」

 

「あぁ。タンカーやら漁船が何隻もやられてる」

 

タンカー…二隻

 

民間船舶…三隻

 

客船…一隻

 

「み、民間人に被害が出てるのか⁉︎」

 

「そうらしいな…早い所止めなければ…」

 

「ただいまーっと‼︎」

 

日焼けした子供達とレイが帰って来た

 

「隊長、今日の報告書見たか⁇」

 

「今見た。マズイな…」

 

「写真だけ見れば、そいつは…」

 

レイが何か言おうとした時、警報がなった

 

《スカイラグーン付近に所属不明機襲来‼︎横須賀分遣隊、ラバウル航空戦隊、出動を願います‼︎》

 

「オーケー、出番だな‼︎」

 

「行こう‼︎」

 

互いの機体に乗り、一気に空に上がる

 

《所属不明機を確認しました。解析を開始しますね》

 

「頼んだ。絶対レーダーから逃がすな」

 

《かしこまりました。ラバウル航空戦隊が合流します‼︎》

 

《レイ、遅れたか⁉︎》

 

《お前は大遅刻だ‼︎》

 

レイとアレンが軽口を飛ばし合う中、珍しく健吾が黙っている

 

いつもならアレンにツッコミを入れるのに…

 

「ギュゲス、どうした⁇」

 

《キャプテン、大佐…今回の機体、俺に任せて頂けませんか⁇》

 

健吾の声に張りが無い

 

いつもと明らかに様子が違う

 

「訳ありみたいだな…よし、分かった‼︎私達は後方に回る‼︎頼んだよ‼︎」

 

《ありがとうございます》

 

健吾は大きく深呼吸した後、所属不明機に向かってエンジンを吹かせた

 

《バッカス、彼の様子に異変はありましたか⁇》

 

《報告書を見てからずっとあんな感じでした》

 

《まさか…昔の隊長なんじゃ…》

 

「クイーン、所属不明機の解析は済んだか⁇」

 

《佐世保鎮守府所属機、ヘルハウンド隊隊長機です‼︎》

 

《キャプテン、ビンゴです‼︎》

 

《行かせてあげましょう。過去と完全に決別するには、必要な行為です》

 

「ヘルハウンド隊…」

 

数年前、健吾を見捨てた後、私が墜とした部隊名だ

 

《先の戦争で、パパさんが撃墜してます。隊長だけは生き残り、基地を転々としていた様です》

「機体は⁇」

 

《ラバウル航空戦隊と同じT-50です。ただ、ぶら下げている兵装が特殊な弾頭です》

 

《核じゃねぇだろうな⁉︎》

 

《あ、いえ、違います。貫通性を高め、内部まで食い込んだ後に爆発する投下型爆弾の様です》

 

 

 

 

 

四人が話している最中、健吾は必死に所属不明機を追い掛け回していた

 

「隊長、何故俺を見捨てた‼︎」

 

《あら、生きてたんだ。へぇ〜…》

 

「それに、ぶら下げた爆弾は何だ⁉︎」

 

《ま〜あれよ。見たら分かるって奴⁇》

 

「ふざけるな‼︎」

 

健吾が叫んだ瞬間、背後に回って機銃を放った

 

しっかりとエンジンだけを狙い、爆弾には当たらない様にしている

 

《うわぁ‼︎》

 

「撃墜完了。救助班を要請…」

 

《…》

 

帰って来た健吾は、やはりどこか浮かない声をしていた

 

 

 

 

スカイラグーンに降りると、深海の子達が慌ただしく動いていた

 

こんなに慌ただしくなるのは珍しい

 

「何かあるのか⁇」

 

「ケンゴガゲキツイシタ、パイロットガクル」

 

「君達が観るのか⁉︎」

 

驚いた

 

医療に詳しい連中が居るのは、薄々気が付いていたが、まさか観てくれるとは…

 

「…借りにも自分達の家を破壊しようとした奴だぞ⁇」

 

「パパナラ、コウスルデショ⁇」

 

そう言い残し、深海の子は運ばれて来たパイロットを診察しに行った

 

「良い仲間ですね…」

 

「あぁ…」

 

私はラバウルさんと二人で、慌ただしく動く彼女達をしばらく眺めていた

 

数時間後…

 

「オワッタ‼︎」

 

「ナオッタ‼︎」

 

喫茶ルームで待っていた私達は一斉に立ち上がった

 

健吾に至っては、少し焦っている

 

「いや〜…あたし何してたんだっけ〜⁇」

 

「隊長…」

 

奥から来た女性を見るや否や、健吾はゆっくりと歩みを進めた

 

そして、顔面にグーパンチを当てた

 

「いだっ‼︎」

 

止めようかと迷ったが、全員健吾の過去を知っているので見て見ぬフリだった

 

「まぁ…仕方無いよな⁇」

 

「逆によくここまで耐えた‼︎」

 

「健吾、一発にしておきなさい⁇」

 

「ホラっ、美味いモンでも食って‼︎なっ⁉︎」

 

「…はいっ‼︎」

 

ホント、最近健吾は明るくなったよな…

 

ちゃんと自身の隊長であるラバウルさんの言う事聞いてるし、レイやアレンと話す事も多くなった

 

やはり、大和の影響なんだろうな…

 

「まぁ、自己紹介位したらどうだ⁉︎」

 

「あ〜、そうだね。あたしは北上。健吾の隊長だったんだけど…色々あってね…」

 

健吾は終始、北上と話さなかった

 

話を聞くと、北上は佐世保から来たらしく、新型の爆弾をスカイラグーンに落とす任務を遂行していた途中らしい

 

「列強の基地が皆好戦派ですか…」

 

「潰すか…」

 

「その必要は無いわ‼︎」

 

ドアを勢い良く開けて現れたのは、横須賀だ

 

「佐世保鎮守府には説明を付けたわ。佐世保の艦娘もここで補給を受けているし、破壊する意味が分からないって。それに、新型の爆弾は何処に行った⁇ですって」

 

「う…」

 

雲行きが怪しくなって来た

 

「それに、何故民間の船を撃って撃墜数に上げているのか、説明を求めてるそうよ⁇」

 

「あ…あれは敵だと思って…」

 

全員が呆れかえって沈黙する

 

「あれ⁉︎スティングレイが居ますよ⁉︎」

 

何処からとも無く、嫌な声が聞こえた

 

緑色がピョンピョン跳ねながら此方に向かって来る

 

「いただきま〜す‼︎」

 

飛び掛かって来た蒼龍に対し、隣に居た男を前に出した

 

「アレンガード‼︎」

 

「嘘だろ⁉︎」

 

そうは言いつつ、アレンはしっかり蒼龍を受け止めた

 

「あれ、この人から二人の女の匂いがしますねぇ…子持ちですかぁ⁇」

 

「そ、そうだ。女の子がいる」

 

アレンはポケットからアイちゃんの写真を出した

 

「わぁ‼︎可愛い子ですねぇ‼︎」

 

「そう⁇ありがとう‼︎」

 

「あ‼︎そうだ蒼龍‼︎あいつ、お前の基地で面倒見てくれないか⁇」

 

そう言って、北上の方を見た

 

「え〜…私、女趣味は無いですよぉ〜⁇」

 

メチャクチャ嫌そうな顔をしている


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