艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、75話が終わりました

結構要望が多かった、レイとパパはどうして出逢ったの⁉︎に、答えたいと思います

物凄いハイスピードて行くので悪しからず…


76話 雷鳥の過去(1)

いつも仲の良いレイと鹿島

 

私はレイの過去を知っているので、仲睦まじい事は素晴らしい事だと思う

 

「ねぇ、パパ⁇」

 

横には両手でコップを持ったきそがいた

 

「ん⁇どうした、きそ」

 

「レイとパパって、どうやって知りあったの⁇」

 

「あぁ…言ってなかった‼︎レイ、ちょっと話すぞ⁉︎」

 

「どうぞ〜」

 

読者の皆も知りたがっていた様だから、簡潔だが、私の口から話す事にしよう

 

「あれは、私が25歳位の時だったかな…」

 

 

 

 

 

 

 

十数年前…

 

当時、私の部隊はブラック・アリスと言う名だった

 

私と横須賀、そして入りたてのグラーフの三人だけだった

 

実はこう見えて、レイは四人の中で一番年下だ

 

当時ベルリンは西と東に分かれており、壁一枚で争っていたのを今でも覚えている

 

そんな中、私達は片側の方に就いていた

 

何方かは忘れた

 

雇われた位だったから、囲まれていない方だったんだろう

 

国連軍は国連軍だったが、本質は傭兵

 

私達が戦い、事が収まり、金が貰えればそれで良かった

 

 

 

 

〜ベルリン空軍基地〜

 

基地に降り、その日の出撃は終わった

 

軽く飯を食い、就寝…

 

明日も出撃がある

 

 

 

深夜、偶然目が覚めて煙草を吸っていると、格納庫に人影が入って行くのが見えた

 

気になって後を追うと、私の機体の影で機材を弄っている青年がいた

 

「何してるんだ⁇」

 

背後から声を掛けると、青年は驚き、機材を隠した

 

「スパイか何かか⁇」

 

「…」

 

此方を睨んだまま、青年はピクリとも動かない

 

「誰に言われた⁇ん⁇」

 

「…」

 

「言わねぇと食っちまうぞ‼︎」

 

少し声を張り、彼をビビらせてみた

 

「軍のお偉いさんだ‼︎機体のデータを渡せば、高値で買い取ってくれる‼︎」

 

「そっか。じゃあ取れ‼︎」

 

彼を残し、その場から立ち去ろうとした

 

「オッサンバカか⁉︎機体のデータを売られたら、すぐ対抗策を出されるぞ⁉︎」

 

スパイの癖に私の心配をする所を見ると、良心はあるみたいだ

 

「その対抗策より強くなればいい。それだけの話だ。違うか⁇」

 

「…まぁ」

 

「まっ、見た所お前はまだガキだ。目先の金しか見えてない」

 

「…だったら何だってんだ」

 

「来い。俺の金の稼ぎ方を教えてやる」

 

彼の手を掴み、無理矢理機体に乗せようとした

 

「イヤだ‼︎離せ‼︎」

 

「黙ってろ‼︎じゃないとスパイの事言うぞ‼︎」

 

そう言うと彼は黙った

 

後部座席に彼を押し込み、機体を出した

 

「うわぁ…」

 

どうも彼は戦闘機に乗った事が無いみたいだ

 

「飛ぶぞ⁇」

 

「お、おぅ‼︎」

 

夜間によく似合う、黒いSu-37が離陸して行く

 

「スゲェ…」

 

幾ら戦争中とは言え上空から見る夜景は、地上から見るそれとは一味違った

 

「オッサンはいつもこんな風景を見てんのか⁉︎」

 

「そうだ。これが仕事だ。そんで…」

 

レーダーに敵性反応が出た

 

「ボウズ、前方に二つの反応が見えるか⁇」

 

「あぁ、見えるよ⁇」

 

「そいつから目を離すな。逐一場所を報告しろ。いいな⁉︎」

 

「分かった」

 

「ふ…いい返事、だっ‼︎」

 

いきなり機銃掃射をかまして来た敵機に対し、操縦桿を右に倒す

 

「うわっ‼︎一機背後に回り込んだ‼︎」

 

「よし、良い子だ」

 

手元のボタンを押し、後ろ向きにミサイルを発射、見事命中

 

当時はこの機体にしか出来なかった芸当だった

 

「撃墜した‼︎三時の方向だ‼︎」

 

「了解‼︎」

 

しかし、相手のパイロットは腕の立つパイロットの様だ

 

あっと言う間に背後に着かれた

 

背後に回り込まれたと同時に、鳴り響くミサイルアラート

 

「オッサン‼︎フレアだ‼︎フレアをばら撒け‼︎」

 

「オーケー‼︎」

 

言われた通りにフレアをばら撒き、攻撃を回避

 

「奴は小型機だ。危険だけど、一旦オーバーシュートさせて、前方に出さないと難しい」

 

「へっ…ボウズの癖に分かってんじゃないの」

 

「あっ…」

 

言われる前に、既に火を吹いていた敵機

 

「帰ろう」

 

「う、うん…」

 

基地に戻り、二人共降りた後、彼はまだ機体を眺めていた

 

「名前は⁇」

 

「無い。産まれた時には孤児院に居た。でも、みんなは”マーカス”って呼んでる」

 

「国に忠誠を誓ったのか⁇」

 

「…忠誠なんか誓うか。生きる為にしてるだけだ。捨てられて、利用されて…それだけさ」

 

マーカスは随分と悲しそうな顔をしていた

 

「…明日、作戦が終われば俺達は本国に帰還する」

 

「そっか…」

 

「一緒に来い。お前はパイロットの素質がある」

 

「…いいのか⁇」

 

「ま、お前が良ければ…だけどな⁇明日の夕方、また此処に来い。じゃあな」

 

流石に眠気が来て、宿舎に戻ろうとした

 

「オッサン‼︎」

 

「オッサンじゃない。せめて隊長って呼べ」

 

「隊長‼︎こんな身分で言えた立場じゃないけど…もう一人、連れて行って欲しいんだ」

 

「分かった。そいつの名前は⁇」

 

「…アレン。アレン・マクレガー」

 

「別働隊に頼んでやるよ」

 

「…じゃあな‼︎」

 

「あぁ」

 

マーカスが去り、ようやく眠りにつけた

 

 

 

 

次の日、作戦を終えた俺達は二人の青年の姿を格納庫で見た

 

「隊長、ホントに良いのか⁉︎」

 

「空軍は嘘をつかない。君がアレンか⁇」

 

「はっ‼︎」

 

アレンはピシッと敬礼をした

 

「マーカスと大違いだな‼︎」

 

「くっ…」

 

「隊長。この子は⁇」

 

今も若いが、まだ少女っ気が抜けていないグラーフだ

 

この頃から巨乳でクーデレだ

 

「マーカスとアレンだ。マーカスは俺達の隊に入れる予定だ。アレン、君は向こうにいるオジンの所に行くんだ」

 

「誰がオジンだって〜⁇」

 

背後から軽く首を締めてきたのは、若き日のラバウルさんだ

 

この頃から、ラバウルさんとは仲が良い

 

「分かった分かった‼︎エドガー‼︎ギブギブ‼︎」

 

「よ〜し、許してやろうじゃないか‼︎」

 

ラバウルさんは手を離し、アレンの前に屈んだ

 

「よ〜し、アレン。今から大佐達と共に、ニッポンに行くぞ‼︎」

 

「ニッポン…」

 

「ニッポンの基地で、マーカスと一緒に空軍の教室に入るんだ。大丈夫、私も受けた事あるけど、美人で優しい先生だ」

 

「行きます‼︎キャプテン‼︎」

 

「キャプテン…良い響きだ…」

 

ラバウルさんはアレンを連れ、自身の機体の後部座席に乗せた

 

「不安か、マーカス」

 

「本当に、現実は変わるんだろうか…」

 

「お前次第で幾らでも変わるさ。世界は広いぞ⁇壁に囲まれた生活より、世界を股に掛けた空を見たくないか⁇」

 

「…うんっ‼︎」

 

「良い顔だ。さっ、行こう‼︎」

 

俺達も機体に乗り、日本を目指して飛んだ

 

 

 

 

 

途中、補給や仮眠を済ませ、ようやく辿り着いた日本

 

〜横須賀基地〜

 

「いやぁ〜、着いたな〜‼︎」

 

降りてすぐに背伸びをする

 

「お帰りなさい。今回は随分長旅だった様ですね⁇」

 

「香取先生」

 

香取先生は昔から美人でプロポーションもいい

 

そこに男共は騙されるんだよな…

 

「あら、お客さんがいるのね⁇」

 

「そっ。俺の部隊に入れるから、鍛えてやってくれ」

 

「貴方の頼みなら仕方ありませんね…お名前は⁇」

 

「…マーカス」

 

「マーカス⁇私の授業は厳しいですよ⁇着いてこれますか⁇」

 

「大丈夫」

 

「さっ、行って来い」

 

「隊長、ありがとう」

 

「感謝してくれるなら、いつの日か俺を護る様になってくれ」

 

「任せろ‼︎」

 

護られる方が多くなってしまった今では、このセリフに少し後悔を覚えている


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