艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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72話 巨竜を屠る(4)

「目標に接近。対空砲火に注意しろ‼︎」

 

言ったしりから、緑色に発光する砲火が飛んで来た

 

だが、そこは熟練パイロット

 

全機散り散りになり、そのまま攻撃態勢に入った

 

「ワイバーン、fox2‼︎」

 

《バッカス、fox2‼︎》

 

《イカロス、fox3‼︎》

 

電磁防御装置が中和された今、爆撃機はただの大きな的に変わっていた

 

《艦載機の射出を確認‼︎迎撃に移行する‼︎》

 

健吾の声が聞こえ、すぐさまラバウルさんが健吾の援護に入った

 

《ワイバーン、まだ生きてるか⁇》

 

今度は隊長だ

 

「そろそろブチかましに行くか⁉︎」

 

《行こう‼︎艦載機の射出が止んだ今がチャンスだ‼︎》

 

「よし、行くぞ‼︎」

 

隊長の後ろにピッタリと着き、射出口に入る

 

隊長の機体を見ると、下腹部のハッチが開いていた

 

俺もハッチを開け、いつでも爆弾を投下出来る態勢に入った

 

ものの数秒もしない内に、前方に眩しい位の光を放つ場所が見えた

 

中枢部だ

 

《1、2の3で投下しろ。行くぞ、1…2の…3‼︎投下‼︎》

 

「投下‼︎」

 

床に爆弾が刺さり、中枢部を回避しつつそのまま真っ直ぐ飛ぶ

 

「3…2…1、炸裂‼︎」

 

中枢部で大きな爆発が起きた

 

爆風はどんどん迫っている

 

だが、もう抜けられる

 

《イカロス機の離脱を確認‼︎続いてワイバーン機も離脱‼︎》

 

「間一髪だぜ…ふぅ…」

 

《良くやった‼︎ワイバーン‼︎》

 

無線の先々で歓声が沸き起こるが、艦載機をまだ片付けていない

 

「よ〜し、隊長、お片付けの時間だな⁇」

 

「ボーナスタイムだ‼︎」

 

隊長と共に、撃墜数を稼いでいく

 

そんな中、ター坊のP-40が見えた

 

「パピヨン‼︎手助けはいるか⁇」

 

《大丈夫だ‼︎もう少しは持つ‼︎》

 

そんな時、爆撃機の対空砲が動いた

 

「パピヨン‼︎狙われてるぞ‼︎」

 

「えっ⁉︎」

 

撃ち出された砲火を、ター坊は避けきれなかった

 

落ちて行くP-40…

 

スローモーションの様に落ち行くター坊と落下傘…

 

そして、ミサイルで破壊された対空砲…

 

ミサイル⁉︎

 

一体誰が⁉︎

 

「はっ‼︎」

 

ター坊の落ちて行く場所に、黒い機体がキャノピーを開けて待っていた

 

そして、彼を拾い、キャノピーを閉めた

 

《貴方がたの平和の形…しかと見届けました‼︎》

 

「イェーガー‼︎」

 

間違いなくイェーガーだ‼︎

 

飛ぶ寸前、俺がミサイルを積んだのはイェーガーだった

 

《パピヨンさん、大丈夫ですか⁉︎》

 

《あ…あぁ…大丈夫だ‼︎》

 

イェーガーから送られたター坊の様子が、フィリップやクイーンにもモニターされている

 

《私はイェーガー‼︎本時刻をもって、貴方の機体になります‼︎》

 

《すまない、助かる‼︎機体を無くした所なんだ‼︎》

 

新しい主人を乗せたイェーガーは、意気揚々とエンジンを吹かした

 

《行きましょう‼︎あと少しです‼︎》

 

「イェーガー、パピヨンに操縦方法を教えてやってくれ」

 

《了解しました。左のレバーが速度を操るレバーです。前に倒すと加速、手前に引くと減速。右のレバーが…》

 

《もしかして、普通の戦闘機と同じか⁇》

 

《話が早いですね。後は体で覚えて下さい。私は貴方のフォローをします》

 

《了解した、行くぞ‼︎イェーガー‼︎》

 

《了解‼︎》

 

ター坊の乗るイェーガーは、みるみる内に敵機を落として行った

 

《凄い…何なんだあの機体は…》

 

《相性が良いのかも知れないな…》

 

隊長とラバウルさんでさえ驚いている

 

元々、ター坊の空戦技術はピカイチだ

 

当時から鹿島に楯突いていた位だ

 

それに、俺も模擬戦で撃墜判定を何度も喰らってる

 

それに、隊長がサンダーバード隊に誘う位だ…こんな軌道を見せられりゃ、尚更それが分かる

 

《敵性反応消失‼︎目標完全破壊‼︎僕達の勝利だ‼︎》

 

フィリップの言葉で、戦いの幕が降りた

 

《よっしゃあ‼︎最高のチームワークだぜ‼︎》

 

《みんな‼︎スカイラグーンでお祝いしようよ‼︎》

 

そう言ったのは健吾だった

 

健吾は大和とケッコンしてから、随分明るくなった気がする

 

《バッカス⁇また死亡フラグを折りましたね⁇》

 

《キャ、キャプテン‼︎》

 

無線の声で皆が笑う中、ター坊だけが後ろを振り返り、敬礼をしていた

 

《パピヨン‼︎俺達は勝ったんだ‼︎》

 

《ワイバーン…》

 

《そうです‼︎機体は残念ですが、貴方には最高の相棒が出来たんですよ‼︎》

 

俺とクイーンの言葉に絆されたのか、ター坊は息を整えて、言った

 

《お‼︎俺もお祝い行って良いか⁉︎》

 

《当たり前だ馬鹿野郎‼︎今日のMVPはお前だ‼︎》

 

《やりましたね、パピヨン‼︎》

 

《イェーガー…ありがとうな‼︎》

 

誰がどうみても、二人は良いコンビだ

 

六機はスカイラグーンに帰り、小さいながら祝勝会を上げる事になった

 

 

 

 

皆が楽しく食事をし、好きな物を飲み、そして笑う

 

あの爆撃機はスカイラグーンも充分爆撃出来る距離にいたらしく、ここにいる皆からも感謝された

 

皆が楽しく話している中、アレンと愛宕が皆の輪から少し離れた場所に座っていた

 

「話ってなんだ⁇」

 

「驚かない⁇」

 

「焦らさないでくれよ…」

 

すると愛宕はアレンの手を取り、自身のお腹に当てた

 

「聞こえる⁇」

 

「まさか…‼︎」

 

「デキたみたい‼︎」

 

「マジかよ‼︎」

 

驚いたのは俺だった

 

「おい‼︎今日はめでた過ぎるぞ‼︎爆撃機は破壊‼︎アレンと愛宕には赤ん坊だぁ‼︎」

 

今日一番の歓声が沸き起こる‼︎

 

「あのね、アレン…私、艦娘でしょ⁇だから産まれて来るのも早いんだって‼︎」

 

「あぁ…名前は何にしよう‼︎」

 

「気が早えぇよ‼︎ほら‼︎お前も飲め‼︎」

 

あたふたするアレンの肩に手を回し、ノンアルコールの酒を飲む

 

こうして、エース部隊が集結した戦いは大勝利に終わり、またしばらく平和が戻った

 

 

 

 

高山凛太郎及び深海棲艦航空機”イェーガー”が、呉鎮守府から支援要請可能になりました‼︎

 

有事の際に召集をする事が出来ます‼︎




イェーガー…一度戦いを辞めた、元深海側の無人戦闘機

帰る場所を失い、スカイラグーンにやって来た無人戦闘機

深海側の航空機は無人な事が多く、機体自体が意識を持っている事がほとんど

パイロットの存在があるとシステムが向上したり、機動性が良くなるなど、性能のレベルが上がる

フィリップやクイーンと違い、礼儀正しい青年の声をしており、クイーンに対しても最初から友好的だった

深海の暗号化されたデータを解読する事が可能で、今回の爆撃機のデータは彼が居なければ、存在自体が分からないままだった

平和な世界を取り戻そうとする、パパやレイ達パイロットを見て、もう一度戦う事を決意

高山が撃墜された所を救い上げ、そのまま彼の機体となる

呉では駆逐艦の子とお話したり、ポーラが隠れてお酒を飲む絶好の隠れ場所として人気がある

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