《皮肉なもんだな。記録から一度抹消された物同士が、再び相見えるとは》
「こっちのセリフ…だっ‼︎」
《右翼にヒット‼︎》
P-40に撃墜判定が降りた
《負けたか…だが、これで終わりじゃないぞ》
「へ〜へ〜。降りっぞ‼︎」
基地に戻ると、いの一番にP-40に駆け寄った
既に彼は降りている
「ター坊‼︎ははっ‼︎」
高山の後ろから抱き着いた
「レイ‼︎」
「お前誰が降りただって〜⁇」
「悪い悪い‼︎てっきり提督してるかと思っただけだ‼︎」
「全部続けてるわい‼︎」
二人が話しているのを、私は少し離れた所で見ていた
「あらあら、大佐。お久し振りです」
「香取先生⁇ご無沙汰です」
香取先生は私の機体を見て、左手で触れた
「綺麗な機体ね。F-15かしら⁇少し違う⁇」
「F-15 SQ。仲間の皆からのプレゼントさ」
《香取…先生⁇》
クイーンは不思議そうにしている
元々女性型の学習AIを持つクイーンは、この機体になってもしっかり残っていた
「クイーンは知らなかったな。私の教師だった人だ」
「あら、お話出来るの⁇」
《対話型IFが付いています。貴方も見えます》
「ホント、貴方は昔から機体や人に恵まれるわね」
「間違いないです」
《恵まれる…その内に、私も入りますか⁇》
突然の質問に、私達は少し驚いた
「当たり前だ‼︎クイーンが居なきゃ、今までの戦争だって、乗り越えられなかった」
《そう…ですか‼︎よかった…》
「これからも頼むぞ⁇」
《えぇ‼︎このクイーン、貴方がたをお護りします‼︎》
名はクイーンだが、時々幼く見える時がある
物語とかに出て来る、若くて優しいお姫様みたいな感じだ
少し抜けてはいるが、根はしっかりしている
「凛ちゃんにはもう会った⁇」
「凛…あぁ‼︎コックの‼︎」
「貴方も問題児だったけど、あの子は更に問題児だったわ⁇ふふふっ‼︎」
「あいつがか⁉︎」
香取の言い分は面白かった
俺が問題児なのは、今まで私の様な生徒が居なかった事らしい
先生の言う事を聞かずとも、的確な判断で行動していたらしい
彼が問題児なのは、先生の言う事に対して反論する事
彼は空に対して自論を持っているらしく、先生の言う事に対して、あぁではない、こうではないと言い、レイを相手に置いて、よく模擬戦をしていたらしい
「それに貴方、凛ちゃんをサンダーバード隊に誘った事があるんでしょ⁉︎」
「断られましたけどね…」
「申し訳無いって言ってたわ。純粋に空を目指す人に対して、成り行きで空軍に入った俺が、入る訳には行かないって」
「気にしなくていいのに…」
「でもいいんじゃないかしら⁇呉の提督さんに腕を買われてここに所属して、今は恋だってしてる」
「相手は⁇」
「加賀さんよ。演歌歌手の」
「なんですか」
「うわぁ‼︎」
話していた相手が急に現れた
「良い機体ね」
加賀はテレビで何度か見た事がある
年末の歌番組でトリをしていた気がする
「あ、あぁ…ありがとう」
「陸戦機かしら。武装が沢山付いてる」
加賀はクイーンを物珍しそうに見ている
《対空兵装は長距離対空ミサイル4本、短距離対空ミサイル2本。そして…》
クイーンは下腹部のハッチを開いた
普通のF-15には付いていないが、クイーンは少しだけなら爆弾を積める様に設計されている
《対地兵装は軽投下爆弾が2個、中規模散弾ミサイルが1本です》
「マルチロールなのね。”昔の”私の艦載機とは比べ物にならない」
《戦闘機だって流行は気にします‼︎》
「昔のって、もう艦娘じゃないのか⁇」
「えぇ。最近居住区に住み始めたわ。ビスマルクとも知り合いよ」
無表情を貫く彼女だが、居住区の話をした時、少し顔が綻んだ
「感謝するわ。貴方が居たから、引退した私達は幸せに暮らせる」
「お相手も居るみたいだしな⁇」
「あまりに行動を起こさないので、こちらから行こうかと」
空母の子は、どうも積極的だ
グラーフも彼女から告白したみたいだし、お淑やかに見えて肉食が多い
「隊長‼︎ター坊連れてスカイラグーン行こうぜ‼︎行った事無いんだってよ‼︎」
格納庫の端からレイの声がした
「呉さんには言ったか⁉︎」
「是非連れてってくれ、だと‼︎」
「よし‼︎なら行こうか‼︎」
「じゃあ、私はこれで。皆さんに宜しくお伝え下さい」
「ありがとう、先生」
「私もこれで。高山さんに着替えを持って来ただけですから」
「気をつけてな。みんなに宜しくな‼︎」
「えぇ」
二人と別れた後、既に離陸していた二人を追って、空に上がった