艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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70話 雪の女王(2)

《皮肉なもんだな。記録から一度抹消された物同士が、再び相見えるとは》

 

「こっちのセリフ…だっ‼︎」

 

《右翼にヒット‼︎》

 

P-40に撃墜判定が降りた

 

《負けたか…だが、これで終わりじゃないぞ》

 

「へ〜へ〜。降りっぞ‼︎」

 

基地に戻ると、いの一番にP-40に駆け寄った

 

既に彼は降りている

 

「ター坊‼︎ははっ‼︎」

 

高山の後ろから抱き着いた

 

「レイ‼︎」

 

「お前誰が降りただって〜⁇」

 

「悪い悪い‼︎てっきり提督してるかと思っただけだ‼︎」

 

「全部続けてるわい‼︎」

 

 

 

 

二人が話しているのを、私は少し離れた所で見ていた

 

「あらあら、大佐。お久し振りです」

 

「香取先生⁇ご無沙汰です」

 

香取先生は私の機体を見て、左手で触れた

 

「綺麗な機体ね。F-15かしら⁇少し違う⁇」

 

「F-15 SQ。仲間の皆からのプレゼントさ」

 

《香取…先生⁇》

 

クイーンは不思議そうにしている

 

元々女性型の学習AIを持つクイーンは、この機体になってもしっかり残っていた

 

「クイーンは知らなかったな。私の教師だった人だ」

 

「あら、お話出来るの⁇」

 

《対話型IFが付いています。貴方も見えます》

 

「ホント、貴方は昔から機体や人に恵まれるわね」

 

「間違いないです」

 

《恵まれる…その内に、私も入りますか⁇》

 

突然の質問に、私達は少し驚いた

 

「当たり前だ‼︎クイーンが居なきゃ、今までの戦争だって、乗り越えられなかった」

 

《そう…ですか‼︎よかった…》

 

「これからも頼むぞ⁇」

 

《えぇ‼︎このクイーン、貴方がたをお護りします‼︎》

 

名はクイーンだが、時々幼く見える時がある

 

物語とかに出て来る、若くて優しいお姫様みたいな感じだ

 

少し抜けてはいるが、根はしっかりしている

 

「凛ちゃんにはもう会った⁇」

 

「凛…あぁ‼︎コックの‼︎」

 

「貴方も問題児だったけど、あの子は更に問題児だったわ⁇ふふふっ‼︎」

 

「あいつがか⁉︎」

 

香取の言い分は面白かった

 

俺が問題児なのは、今まで私の様な生徒が居なかった事らしい

 

先生の言う事を聞かずとも、的確な判断で行動していたらしい

 

彼が問題児なのは、先生の言う事に対して反論する事

 

彼は空に対して自論を持っているらしく、先生の言う事に対して、あぁではない、こうではないと言い、レイを相手に置いて、よく模擬戦をしていたらしい

 

「それに貴方、凛ちゃんをサンダーバード隊に誘った事があるんでしょ⁉︎」

 

「断られましたけどね…」

 

「申し訳無いって言ってたわ。純粋に空を目指す人に対して、成り行きで空軍に入った俺が、入る訳には行かないって」

 

「気にしなくていいのに…」

 

「でもいいんじゃないかしら⁇呉の提督さんに腕を買われてここに所属して、今は恋だってしてる」

 

「相手は⁇」

 

「加賀さんよ。演歌歌手の」

 

「なんですか」

 

「うわぁ‼︎」

 

話していた相手が急に現れた

 

「良い機体ね」

 

加賀はテレビで何度か見た事がある

 

年末の歌番組でトリをしていた気がする

 

「あ、あぁ…ありがとう」

 

「陸戦機かしら。武装が沢山付いてる」

 

加賀はクイーンを物珍しそうに見ている

 

《対空兵装は長距離対空ミサイル4本、短距離対空ミサイル2本。そして…》

 

クイーンは下腹部のハッチを開いた

 

普通のF-15には付いていないが、クイーンは少しだけなら爆弾を積める様に設計されている

 

《対地兵装は軽投下爆弾が2個、中規模散弾ミサイルが1本です》

 

「マルチロールなのね。”昔の”私の艦載機とは比べ物にならない」

 

《戦闘機だって流行は気にします‼︎》

 

「昔のって、もう艦娘じゃないのか⁇」

 

「えぇ。最近居住区に住み始めたわ。ビスマルクとも知り合いよ」

 

無表情を貫く彼女だが、居住区の話をした時、少し顔が綻んだ

 

「感謝するわ。貴方が居たから、引退した私達は幸せに暮らせる」

 

「お相手も居るみたいだしな⁇」

 

「あまりに行動を起こさないので、こちらから行こうかと」

 

空母の子は、どうも積極的だ

 

グラーフも彼女から告白したみたいだし、お淑やかに見えて肉食が多い

 

「隊長‼︎ター坊連れてスカイラグーン行こうぜ‼︎行った事無いんだってよ‼︎」

 

格納庫の端からレイの声がした

 

「呉さんには言ったか⁉︎」

 

「是非連れてってくれ、だと‼︎」

 

「よし‼︎なら行こうか‼︎」

 

「じゃあ、私はこれで。皆さんに宜しくお伝え下さい」

 

「ありがとう、先生」

 

「私もこれで。高山さんに着替えを持って来ただけですから」

 

「気をつけてな。みんなに宜しくな‼︎」

 

「えぇ」

 

二人と別れた後、既に離陸していた二人を追って、空に上がった


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