艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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68話 海上騎兵隊(3)

「最新鋭ですよ。陸戦はT-50、艦載機はコレです」

 

バインダーを持って男性が話し掛けて来た

 

「露天駐機にホーネットが居た。あれは何だ⁇」

 

「ECM搭載機です。まぁ、深海の艦載機に効くかどうかは分かりませんが…」

 

「戦争も考えもんだな…てか、大湊に艦娘は居ないのか⁇」

 

「えぇ。我々の所に艦娘は配備されていません。こういった艦だけで戦っています」

 

「なるほど…まっ、誤射しない事が今後の課題だな‼︎」

 

「言う通りです…情けない」

 

しばらく話をしていると、アナウンスが入った

 

《基地に着きました。下船の方は、お急ぎ下さい》

 

「じゃあな‼︎」

 

空母から降りると、ジェットスキーが工廠の裏に運ばれているのが目に入った

 

「お前達、ありがとうな」

 

《タノシカッタ‼︎》

 

《カイジョーゴエー‼︎》

 

《マタネ‼︎》

 

「あぁ、待て待て‼︎補給と整備位して行ったらどうだ⁉︎」

 

《スカイラグーンデスル‼︎》

 

「そっか…分かった‼︎気を付けてな‼︎」

 

《バイバ〜イ‼︎》

 

イ級達を見送った後食堂に戻ると、再び居た飲んだくれの女

 

「ポーラ大変だったんですよ〜⁇お船から撃たれて〜、ボカーン‼︎って飛んで行ったんです」

 

たいほうの前に寝転びながら一生懸命説明しているが、たいほうはキョトンとしている

 

「お…おま…何でいるんだ⁉︎」

 

「あぁ‼︎このお兄さんが助けてくれた気がします〜カッコ良かったですよ〜」

 

「いいこいいこ」

 

たいほうに頭を撫でられて、大層御満悦なポーラ

 

どちらが大人なのか分からない

 

「ぬっふっふっふ〜。ポーラ、やる時はやりますからね〜」

 

「レイ、ちょっと…」

 

頭を抱えていると、隼鷹に手招きされた

 

「ポーラにはな、この言葉が効くんだ…」

 

隼鷹に耳打ちされた言葉を、何気無い素振りで言ってみた

 

「あっ‼︎そうだ‼︎ザラに用事があったんだった‼︎電話しなくちゃな〜」

 

「ざ…ザラねぇさま⁇」

 

「ついでにポーラが飲みまくってる事も報告しなきゃな‼︎」

 

「レイさん、それはいけませんて。ポーラ、真面目にしますから。ザラねぇさま行きだけはホント…ね⁇」

 

ポーラは俺の腕にしがみ付き、電話の方に行かせない様にする

 

しかもかなり強い力で‼︎

 

「ホントだ…」

 

「なっ⁇」

 

「ポーラ、痛いって…」

 

「ザラねぇさまに言いませんか⁇ホントに言いませんか⁇」

 

ポーラは更に力を入れた

 

「い、言わない言わない‼︎」

 

「ん…」

 

余程ザラに言われるのが嫌なのか、猛反発してくる

 

「ん〜…どうすればザラねぇさまに言いませんか⁇」

 

「もう言わないから心配するな」

 

「ざらざらのざら」

 

何気無しに言った、たいほうの言葉にポーラは肩を上げた

 

「うわぁ〜‼︎たいほうちゃん‼︎その名前はいけませんて‼︎」

 

「たいほう、ざらのおしゃしんもってるよ⁇」

 

たいほうのポシェットから、ザラのブロマイドが出てきた

 

「ゔ…」

 

「ぽーらににてるね‼︎」

 

「似てませんて。ポーラ、ザラねぇさまみたいに荒くれ者じゃありませんて」

 

その瞬間、辺りが静まり返る

 

「…ポーラ⁇」

 

「えっ⁉︎あっ、あはは〜」

 

恐る恐るポーラが振り返ると、そこには何故かザラが仁王立ちしていた

 

「ざ、ザラねぇさま〜⁇何でここに⁇」

 

「たまたまスカイラグーンで昼食を取っていたら、イ級さん達が教えてくれたんです‼︎さ‼︎帰りますよ‼︎貴方の基地の船が近くまで来てくれているんです‼︎ほら、来なさい‼︎」

 

逃げるポーラをザラが引っ捕らえ、出入り口の方に引っ張って行く

 

「ん〜っ、やだやだやぁ〜だぁ〜‼︎絶対怒られるぅ〜」

 

「怒られる様な事をしたのは貴方でしょう‼︎」

 

一進一退の攻防は続く

 

見ていて飽きないが、ここいらで決着を着けさせよう

 

「あ‼︎港に酒樽がある‼︎」

 

「ウソウソ⁉︎どこどこ⁉︎」

 

「今だザラ‼︎」

 

ザラはポーラを一気に担ぎ、ダッシュで海上に出た

 

「ありがとうございます‼︎では‼︎」

 

「レイさんの裏切りもの〜‼︎隼鷹〜助けて〜‼︎」

 

叫ぶポーラを見て、隼鷹は笑い転げていた

 

「ははははは‼︎じゃっ、私も帰るよ。お礼はまた後日でいいか⁇」

 

「気にするな。また来いよ⁇」

 

「おぅ‼︎」

 

隼鷹も帰り、ようやく基地に平穏が訪れた

 

 

 

 

 

2時間後…

 

呉鎮守府

 

「隼鷹‼︎ポーラぁ‼︎」

 

帰って来たポーラに、呉さんの怒号が飛んだ

 

「ひぅっ‼︎」

 

ビビるポーラに対し、呉さんは落ち着いた表情をしていた

 

「…おかえり」

 

「…ただいまです」

 

呉さんはポーラの頭を撫で、帰還を労った

 

「ポーラ⁉︎ちゃんと提督の言う事聞きなさいよ⁉︎」

 

「わ、分かってますって〜ザラねぇさま〜ははは…」

 

「提督さん。ポーラが迷惑かけたら、いつでも横須賀にご連絡下さい。駆け付けますから‼︎」

 

「分かった。ありがとう‼︎」

 

ザラが帰り、ポーラはこっ酷く叱られると思っていた

 

「ポーラ、大佐の所はどうだった⁇」

 

「え⁉︎あ、はい‼︎凄く良い所でしたよ〜⁇たいほうちゃんも、大人しくて可愛かったです〜‼︎」

 

「そっか。入渠してごはん食べたら、今日はもう休みなさい」

 

「あ…はい」

 

叱られると思っていたポーラは、全く叱る素振りを見せない呉さんを不思議に思った

 

「提督。ポーラを怒らないんですか⁇」

 

「怒ってどうなる」

 

「あ、はい…」

 

呉さんが返したのはそれだけ

 

呉さんは怒りそうな外見をしているが、今までブチ切れたのは青葉が呉さんと隼鷹のスキャンダルを撮った時以外無い

 

「そうだポーラ。二日後に横須賀で全基地をまとめた運動会がある。ポーラも出てくれるか⁇」

 

「出ます出ます〜‼︎うへへへへ〜」

 

「言っとくけど、酒は出ないからな」

 

「ポーラが持ち込めばいいんですよ‼︎」

 

「バカ‼︎子供もいるんだ‼︎」

 

「じゃあ仕方ないですねぇ…」

 

呉さんの後ろをトボトボ歩きながら、ポーラは基地の中に入って行った

 

 

 

 

そう、二日後には、大運動会が始まるのだ…


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