艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、64話が終わりました

番外編、如何でしたか⁇

今回のお話は、スカイラグーンから始まります


65話 家族のカケラ(1)

「お前ら、飯行くぞ」

 

哨戒任務から帰って来た私は、近場で救援任務をして、帰って来た秋月と照月と共にスカイラグーンに向かった

 

「イラッシャイ。ハジメテノコ、ダネ⁇」

 

「あ、秋月と申します‼︎」

 

「照月ですっ‼︎」

 

ル級さんに紹介が終わり、二人は席に着いた

 

「長10cm砲ちゃんが反応しない…味方なのですね⁉︎」

 

「そっ。此処に居る間は、全員が平等になる。深海の子だろうと、人間だろうと、艦娘だろうと、此処ではみんなお客さんだ」

 

「パパ‼︎ソノコハコレデイイカ⁉︎」

 

困った顔でル級さんが持って来たのは、少し大きめの皿に盛られた銃弾の様なお菓子だ

 

「私も食べられるか⁇」

 

「…ヤメタホウガイイカモ」

 

そんな二人をよそに、2匹の長10cm砲ちゃんは、ル級さんの手から皿を取り、美味しそうに食べ始めた

 

「コラッ‼︎ありがとうは⁉︎」

 

照月がそう言うと、長10cm砲ちゃん達は食べる手を止め、ル級さん頭を下げた

 

「キニイッタミタイダナ」

 

「すまんな、気を使わせて」

 

「パパハナニニスル⁇アキヅキチャンモ、テルヅキチャンモ、スキナノエランデネ⁇」

 

「は、はいっ‼︎」

 

「どれにしようかな〜‼︎」

 

レイが言っていた

 

”照月は嬉しい事があると、口が開く”

 

どうやら本当の様だ

 

「たぬきそばにします‼︎」

 

「きつねうどんで‼︎」

 

「私はわらび餅ときな粉で」

 

「カシコマリマシタ‼︎」

 

ル級が厨房に戻ると、陰でレ級がソワソワしていた

 

「どうした⁇」

 

「パパ、ナンポウチャンガネ、サイキンチョウシヨクナイノ」

 

「ほう…あの子が…ちょっと様子を見せてくれるか⁇」

 

「ウン。コッチ」

 

「ル級さん、二人をお願いします‼︎」

 

「マカセテ‼︎」

 

レ級に案内され、個人部屋に来た

 

”南方棲姫”と書かれた部屋をノックし、レ級が扉を開けた

 

中では南方棲姫がベッドで横になっていた

 

「ア…パパ‼︎」

 

私の顔を見た途端張り切る様子を見せる

 

「大丈夫か⁇」

 

「ウン…サイ近、チョット、ドキドキガ止まらナクて…」

 

額に手を当てるが、熱では無さそうだ

 

「ちゃ、わんっ、むし〜‼︎ちゃ、わんっ、むし〜‼︎茶碗蒸し出来てる⁉︎」

 

表で間の抜けた声がする

 

レイだ

 

どうやら昼御飯を食べに来たらしい

 

そうだ‼︎レイなら医療に詳しい‼︎

 

「レ級ちゃん。レイを連れて来てくれないか⁇」

 

「ワカッタ‼︎」

 

レ級が部屋を出てすぐ、南方棲姫が話し掛けて来た

 

「アノね、パパ」

 

「ん⁇」

 

「呉サン、知っテル⁇」

 

「知ってるよ。素晴らしい人だ」

 

「”アノ子”いつも私ニ甘えてクレるの…ソノ時、イツモドキドキする…」

 

「恋か⁇」

 

「違ウ…恋ジャ無いの…」

 

「呼んだか⁉︎」

 

レ級は、口元に茶碗蒸しが付いたレイを連れて来た

 

「ちょっと診てくれないか⁇」

 

「オーケー…」

 

レイは一通り南方棲姫を診た後、此方に振り向いた

 

「グラーフと一緒だ。人間に戻るぞ‼︎」

 

「レイさん…ホント⁇」

 

「ホントだ。呉さん呼んでやるから、しっかり気張れよ⁉︎もう少しだ‼︎」

 

「ウンッ…‼︎」

 

「隊長、此処にスカイラグーン全員呼べるか⁇良い機会だ‼︎」

 

「任せろ‼︎」

 

二人して部屋を出て、私はスカイラグーンに居た、秋月照月含めた全員を、南方棲姫の部屋に集めた

 

「急がずに来てくれ。頼んだ‼︎隊長‼︎呉さんがこっちに来る‼︎」

 

「ありがとう‼︎」

 

「”あの子”ガ…‼︎」

 

「折角だから逢いたいだろ⁇」

 

「はいッ‼︎」

 

南方棲姫の顔が笑顔になった瞬間、顔にヒビが入った

 

深海の子達も、秋月照月も驚いている

 

私とレイは数回目なので、落ち着いて見ていた

 

「ミナさん…ありがとうございます‼︎」

 

 

 

 

 

「南方棲姫さん‼︎」

 

数十分後、呉さんが来た頃には南方棲姫の姿はそこには無かった

 

「どうして…」

 

呉さんは膝を落とした

 

「ははは…」

 

涙が床に落ちて行く

 

「私には母親が居ない…だから、南方棲姫さんは、母親見たいな人だったのに…」

 

「清政…」

 

「はっ…」

 

呉さんの名を呼ぶ、小柄な女性が、彼の背後にいた

 

その顔を見て、呉さんは大粒の涙を流した

 

「か…母さん‼︎」

 

「嘘だろ⁉︎」

 

呉さんは子供の様に、その女性に抱き着いた

 

「ごめんなさいね…お母さん、ちょっと道に迷ってたみたい」

 

「迷いすぎた…父さんがどれだけ心配していたか‼︎」

 

呉さんの身長は、彼女を大きく上回り、若干犯罪臭が漂うレベルだ

 

「清政。母さん、今は”鳳翔”と言う名なの」

 

「そっか…しばらくここにいるのか⁇」

 

「えぇ‼︎散々お世話になりましたからね‼︎」

 

「皆さん…どうか、母を宜しくお願いします‼︎」


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