艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、63話が終わりました

今回のお話は、前回の番外編になります

繋がってなさそうで繋がってます

呉さんの下の名前も分かります


64話 ラスト・ヒロイン番外編 家族団欒(1)

グラーフ達と別れた後、総理と文月は繁華街に向かい、二人は瑞雲に入って行った

 

奥の隅っこの席に予約を入れている様で、そこに文月と共に座る

 

座ると同時に、総理は文月の手を握った

 

「文月〜⁇もうすぐ”清政お兄ちゃん”が来るから、お父さんとぉ、椅子に座ってじっとしてような〜⁇」

 

側から見ても、どう見ても、おじいちゃんと孫の会話風景である

 

「うんっ‼︎おとーさんとおそとでごはん、ひさしぶりだね‼︎」

 

「ここの蟹は美味しいぞ〜⁇」

 

「父さん‼︎」

 

「来た来た‼︎」

 

総理は手を離し、デレデレの顔を戻し、入って来た二人を睨んだ

 

「座れ」

 

「失礼します」

 

「し…失礼します…」

 

キレのある動きで椅子に座るのは、清政こと呉さんだ

 

ガチガチの動きで椅子に座るのは隼鷹だ

 

いつもの服では無く、今日は綺麗な服を着こなしている

 

「すまんな。中々時間が取れなくて」

 

「いえ。ありがとうございます」

 

「でた、清政。横の女性が妻か⁇」

 

「そうです。隼鷹と言います」

 

「隼鷹です。いつも御子息様にお世話になっております」

 

隼鷹がいつもと違う

 

まるで、何処かのお姫様の様な対応をしている

 

人はここまで変わるのか…

 

「此方こそ、ボンクラを貰って頂き、誠にありがとうございます」

 

隼鷹と総理が、互いに頭を下げる

 

文月も同時に頭を下げている

 

「父さん‼︎」

 

「清政。私は、昔からお前が言う事を聞かないのを知っている。そんなお前の面倒を見てくれるんだ…隼鷹さん、これからこいつは、貴方には苦労を掛けます…」

 

「大丈夫です、お父様。この隼鷹、死するまで彼のお供を致します」

 

”だらしない”を絵に描いたような隼鷹だが、今日ばかりは輝いて見える

 

「とにかく、私は結婚には大賛成だ‼︎」

 

「ありがとう、父さん‼︎」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

「でだ。文月の事は言わずもがな…かな⁇」

 

「えぇ。勿論‼︎」

 

「お前の妹だぞ、清政」

 

「きよまさおにーちゃん‼︎」

 

「父さんの事、頼むぞ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

「さっ‼︎食おうか‼︎」

 

頃合いに出来た蟹鍋を、新しい家族が突いて行く

 

「ほ〜ら文月‼︎蟹さんだそ〜‼︎」

 

「かにさんぷりぷりだね‼︎」

 

微笑ましい光景が目の前で行われている

 

しばらくすると、蟹鍋は空になった

 

「おとーさん、たばこは⁇」

 

「文月の前では吸わないよ〜」

 

「父さん。表で吸いましょう」

 

「そうだな。隼鷹さん、少しだけ文月を頼みます」

 

「畏まりました」

 

二人は表に出て、煙草に火を点けた

 

「良い妻じゃないか」

 

「父さんもな」

 

二人きりになると、ようやく元の親子の会話に戻る

 

「どうだ、海軍は」

 

「順風満帆だ。彼等に付いて良かったよ」

 

「私は彼等に何度も助けられている。彼等に何かあったら、護ってやってくれ。精々、私に出来る恩返しは、円卓で彼等の背中押しをする位しか出来ん。現場では、お前が返してくれ」

 

「勿論さ。俺も助けられてる。父さんはどうなんだ⁇文月との生活は」

 

呉さんがそう言うと、総理は”待ってました”と言わんばかりにスマホを取り出した

 

待ち受けの時点で文月とのツーショットだ

 

「見ろ‼︎これはこの前の伊勢志摩サミットの時の帰りに行った水族館で一緒に撮った写真だ‼︎これは広島の…」

 

この溺愛っぷりである

 

最近行われたサミットにも、連れて行った様だ

 

「今回、他の国の首相も子供同伴OKにしてな。そしたらこれが好評でなぁ‼︎文月も楽しかったみたいだ‼︎」

 

「ははは…」

 

返す言葉が無い

 

呉さんは思った

 

人の事を言えないが、顔に似合わない事をするな…と

 

「さぁ、戻ろう。これから文月と繁華街を回った後、遊園地に行くんだ‼︎」

 

「好きにしてくれ…休みなんだろ⁇」

 

「たまには休みも必要さ。ま、もしかしたら週刊誌に載るかもな‼︎ははは‼︎」

 

「はぁ…」

 

元々破天荒な人だとは思っていたが、ここまで溺愛すると、逆に何も言えない

 

それなりの躾はしっかりしている様だし、父さんはいつもガツンと怒らない

 

”失敗を叱っては、人間は絶対伸びない。次の行動が大切なんだ。何度失敗したっていい、前回よりはウンと良い”

 

父さんがいつも言っていた言葉を思い返し、ようやく意味が分かった気がした呉さんだった


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