艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

234 / 1086
さて、60話が終わりました

今回のお話は、みんな大好きハンマー榛名のお話です

前回のお話で、何故か大人しかった理由が明らかになります


61話 素直になれない姫君

スティングレイと横須賀基地で暴れる数日前の単冠湾基地…

 

「提督」

 

「ん⁇」

 

「榛名は提督の所に生まれて幸せダズルよ」

 

「榛名⁇」

 

「それだけは忘れないで欲しいダズル」

 

「榛名‼︎」

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

夢か…

 

「うるさいダズル」

 

どうやら執務中に寝てしまったみたいだ

 

「あぁ…ごめんごめん…」

 

「執務中に寝るとは、良い身分ダズルな」

 

「…」

 

変な夢を見た所為で、榛名に逆らえない

 

いつもなら、少し強気で言い返してる所なのに…

 

僕は棚に書類を整理している、後ろ姿の榛名を見つめた

 

「何ダズル。榛名を見つめて」

 

後ろ姿でも気配を察知された‼︎

 

「榛名はさ…僕の所に生まれて幸せか⁇」

 

「幸せダズルよ⁇」

 

答えは一瞬で返って来た

 

「…何か理由でもあるの⁇」

 

「好きな人の傍に居れるのは幸せダズル」

 

榛名は平然とした顔で言い張る

 

どうも夢では無い

 

「好きな人って、僕の事⁇」

 

「他に誰がいるダズル」

 

どうやら本気の様だ

 

この間も、榛名は此方に振り向かずに書類を整理している

 

「何で僕に惚れたの⁇」

 

「あれだけ普段からハンマー振り回しても、提督はいつも最後まで付き合ってくれるダズル。提督は榛名を見捨てた事が無いダズル」

 

「まぁ…初めての艦娘だからね」

 

「それにな。提督の背中を見てると、いつも申し訳無い気分になるダズル」

 

「あぁ…気にしないでいいよ」

 

 

 

僕の背中には、大きな傷がある

 

まだ提督になりかけの頃、この基地は建設の最終段階だった

 

その時運悪く落ちて来た鉄骨から榛名を庇った時に付いたのだ

 

 

 

 

「榛名がハンマー振り回さなかったら、ケッコンしてくれてたダズルか⁇」

 

「いや、しない」

 

「言う事は言うダズルな」

 

「榛名とはケッコン”カッコカリ”なんてしない」

 

「そこまで言われると一発やりたくなるダズルな」

 

僕は机を叩いて立ち上がった

 

「榛名と”カッコカリ”なんて嫌だって言ったんだ‼︎」

 

「そんなに怒らなくてもいいダズル。若いのに血圧上がるダズル」

 

「榛名‼︎」

 

「何ダズル⁇」

 

この事は最後まで言わないつもりだったが、ここまで来たら言ってしまおう

 

「僕は香取先生とケッコンした。だけどあれは”カッコカリ”だ‼︎」

 

「提督は戦争が終わっても香取と仲良く暮らすダズル」

 

「…僕が何で香取先生とケッコンしたか分かるか⁇」

 

「そりゃあ決まってるダズル。相思相愛だからダズル」

 

「香取先生は…僕に気は無い」

 

「…それは初耳ダズル」

 

「香取先生は年上が好みだ。年下の僕は眼中に無い。未だに生徒扱いだ」

 

「じゃあ何でケッコンしたダズル」

 

「榛名がハンマーばっか振り回すからだよ‼︎チョットは反省するかと思ったら逆効果だったんだよ‼︎」

 

「そりゃあ好きな人を取られたらそうなるダズル」

 

「それで香取先生と相談して、ケッコンする事にしたんだ。ホントに”カリ”だけどな‼︎」

 

「キスしてたダズル」

 

「榛名‼︎」

 

終始後ろ姿だった榛名の肩を掴み、振り向かせた

 

「榛名…」

 

榛名は泣いていた

 

だからずっと後ろ姿しか見せなかったのか…

 

「僕が初めてキスしたのは榛名なんだ‼︎それ以外はいないよ‼︎」

 

「嘘嘘‼︎嘘ダズル‼︎執務室でたまにしてたダズル‼︎」

 

「顔近付けてただけだ‼︎香取先生の悪い癖だ‼︎」

 

「じゃあケッコン式はどう説明するダズル‼︎」

 

「…よし、分かった」

 

僕はスクリーンを降ろし、映写機を出した

 

”三基地合同ケッコン式”と書かれたフィルムを取り出し、セットする

 

「嫌味ったらしく見せるつもりダズルか⁇」

 

「黙って見てなさい」

 

僕達の番が来た

 

「おい。香取のケープを何故どかさないダズル」

 

「してないからだよ‼︎」

 

映写機を止めると、榛名は何故かハンマーを握っていた

 

どうやら映写機を叩き割ろうとしていた様だ

 

「榛名が間違っていたダズルか…」

 

「今、榛名は全部を知って、それでも僕をハンマーで叩くなら叩くといい」

 

「そんな事しないダズル」

 

榛名はハンマーを床に落とした

 

「あらあら。ほほぅ⁇これは…」

 

「香取先生…」

 

いつの間にか香取先生が居た

 

「ワンちゃん⁇ついに返す時が来ましたね⁇」

 

「はい。香取先生」

 

「いいですか、榛名さん」

 

「何ダズル」

 

「これから先、ワンちゃんに暴力を振るってはいけませんよ⁇」

 

「余程の事が無い限りしないダズル」

 

「では…これはお返しします」

 

香取先生は手袋を取り、指輪を外した

 

「ワンちゃん⁇先生、結構楽しかったですよ⁇」

 

香取先生から指輪を受け取り、握り締める

 

「でも、年下には興味無し、ですよね⁇」

 

「どうしても生徒としか見れないの…ごめんなさいね⁇」

 

現に”ワンちゃん”と呼ばれている位だ

 

生徒、もしくは子供にしか見られていない

 

別に香取先生が嫌いになった訳ではない

 

だけど、榛名はずっと僕に愛を向けてくれていてくれた

 

何だかんだで、三食美味しい料理を作ってくれたり…

 

さっきみたいに整理整頓も上手だ

 

資源に困った時は、内緒で横須賀さんや大佐から貰って来たり…

 

眠れない夜は、ずっと横に居てくれる…

 

ハンマーで叩かれる時もあるが、他の行為でチャラになっていた

 

ハンマーで叩かれても、バケツで治る事も分かった今、半殺しまでなら耐えられる自信がある

 

殴られ続けて、体力が付いたみたいだからね

 

「榛名」

 

「う…」

 

「今更嫌とは言わせないよ⁇」

 

「香取。貴様はいいダズルか⁉︎提督はいい奴ダズル。榛名みたいな奴でも、全部受け止めてくれる最高の男ダズル‼︎」

 

「そんな貴女だからこそ、彼と番になって欲しいのですよ。貴女はそこまで彼を愛せる女性なのですから‼︎」

 

榛名は涙を拭き、勢いよく指輪を取った

 

「提督。覚悟するダズル。戦争が終わっても、榛名は提督の傍に居てやるダズルからな‼︎」

 

「こちらこそ、宜しくね‼︎」

 

「し…知らんダズルからな‼︎」

 

榛名は指輪を嵌めた

 

カッコカリのケッコンではなく、本物の結婚をした提督と艦娘が、ひっそりと誕生した

 

この事実が全体に知れ渡るのは、かなり先の話になる

 

だが、香取とケッコンしていないのは、パパ達反対派メンバーは全員知っていた

 

事実上は、香取とケッコンしたまま、榛名とワンコはひっそりと結ばれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな…それでやたらと大人しかったのか‼︎」

 

横須賀の事件から数日後、新しく出来た艤装を持って来たレイは、いち早く榛名の指輪に気が付いていた

 

「もう基地内でハンマーは振り回さないダズル」

 

ワンコの横にチョコンと座っている榛名は、ハンマーを持っていない

 

何か新鮮だ

 

「艤装は正規品を装備するのか⁇するなら造ってやるぞ⁇」

 

「戦闘に飛び道具は卑怯ダズル。これからも戦闘はハンマーで行くダズル」

 

榛名自身の騎士道精神の一つだ

 

無下に否定する訳にもいかない

 

結婚してからも、戦果は相変わらずらしいからな

 

「そっか…まっ、お前がそれならそれでいいだろう‼︎」

 

「だがな…」

 

榛名の目付きが変わった

 

「げっ…」

 

「貴様は例外ダズル‼︎さぁ、新型ハンマー”れいもんど”の餌食になるダズル‼︎」

 

「レイさん‼︎逃げて‼︎」

 

ハンマーを構えた榛名を見て、扉に向かって走った

 

「ははははは‼︎結婚した榛名は打撃力3倍‼︎スピードは4倍‼︎耐久力に至っては5倍ダズル‼︎」

 

「ちょちょちょ嘘だろ⁉︎」

 

「逃げ道は無いダズル‼︎」

 

「変わってねぇじゃねぇか‼︎ワンコのバカヤロー‼︎うわぁぁぁあ‼︎」

 

榛名のハンマーがクリーンヒット‼︎

 

俺は遥か彼方に飛んで行った

 

「ホームランダズル‼︎」

 

「榛名‼︎」

 

「ひっ…」

 

「相変わらずレイさんを見ると叩く癖は直って無いなぁ…ほら、コレ持って謝って来なさい‼︎」

 

「う〜…分かったダズル。旦那の言う事は最優先ダズル」

 

ワンコから嫌々バケツを受け取り、榛名は港まで飛んで行ったレイの所に向かって行った

 

素直になった榛名を見て、ワンコはうっすらと笑みを浮かべた後、レイに対して物凄く申し訳ない気分になった

 

 

 

 

 

ワンコが榛名と結婚しました‼︎

 

香取が単冠湾基地所属、新入生担当艦になりました‼︎


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。