艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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55話 因縁の相手(3)

「行くぞ‼︎」

 

大火力の武蔵の主砲が先制

 

「うわうわうわぁ‼︎」

 

至近弾を初撃で叩き込むのは、相当な熟練がいる

 

プリンツは持ち前の回避力で、何とか小破未満で済んだが、これ以上続くとマズイ

 

「行きます‼︎ファイヤァ‼︎」

 

流石に武蔵の主砲の威力には及ばないが、4連撃ともなると、それに匹敵する威力を見せる

 

「ぐっ…やるな‼︎」

 

互いに小破未満で済んだ

 

「武蔵…やっぱり、武蔵とは撃ち合いはヤダよ」

 

「そうだなぁ…どうやら、主砲の威力は互角の様だ」

 

互いに艤装を捨て、腕と首を鳴らす

 

海に落ちた艤装は、妖精達が回収している

 

「行くよ‼︎」

 

「来い‼︎」

 

海の上で、壮絶な殴り合いが始まった

 

 

 

「あ〜ぁ、やっちゃってるねぇ」

 

双眼鏡で二人の様子を見ていたレイは、私に双眼鏡を渡して来た

 

「どれ…」

 

双眼鏡を覗くと、武蔵がプリンツに右フックを当てていた

 

しかしプリンツは怯む事無く、武蔵の鳩尾に右ストレートをかます

 

「互角だな…」

 

「いや、プリンツが若干押されてる」

 

よく見ると、プリンツに若干の息切れが見えた

 

「何か分からないけど、決着付けるとか言ってるし、付き合ってやってくれないか⁇」

 

「俺は別に構わんよ。武蔵も楽しそうだしな」

 

武蔵はしっかりしたフォームでプリンツを少しずつ追い込む

 

対するプリンツは、持ち前のタフネスと、一昔前”アウトロー”や”ヤンキー”と言われた時代に培った、粘り強い格闘を見せていた

 

「やるな…ぷりんつよ‼︎」

 

「武蔵も…変わらず強いね‼︎」

 

互いに息を切らし、神経スレスレの戦いを見せていた

 

そんな時、プリンツの右フックが武蔵の頬に当たった

 

「…あっ」

 

大したダメージは無いはず

 

なのに、頬を叩かれた時、武蔵の胸が痛んだ

 

 

 

またこの感覚だ…

 

昔、同じ事をされた気が…

 

誰だ…

 

誰に…

 

「くっ‼︎」

 

痛む胸を隠し、プリンツに反撃する

 

「うわ‼︎」

 

「どうした。その程度か⁇」

 

「…まだまだ‼︎」

 

 

 

 

「武蔵がおかしい」

 

私は武蔵の異変に気付いていた

 

武蔵自体は特に異常なさそうな感じをしているが、いつもより瞬きが遅い

 

「やめさせるか⁉︎」

 

「何か…思い出してるのか⁇」

 

「…恋人、だったっけ⁇武蔵は」

 

「そうだ。今は”武蔵”として生きている」

 

「いいのか⁇このままで」

 

「むやみやたらに記憶を蘇らせるなって、横須賀に言われた。頭がイカれるらしい。だから、俺はその手解きをするだけだ」

 

「じゃ‼︎しょうがないか‼︎」

 

「演習だしな‼︎」

 

そう言って、二人は呑気に瓶のコーラを飲む

 

 

 

 

一旦プリンツから距離を取り、立ち止まる

 

流石の武蔵も、ここまで粘られるとスタミナが切れて来た

 


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