艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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53話 ボーイッシュな海賊(4)

「持とうか⁇」

 

「いい…これ、大切なの」

 

「そっか」

 

Uちゃんはジュラルミンケースに触れられるのを嫌がった

 

それは後々分かるとして、食堂には三人が座っていた

 

今から軽い面談をするみたいだ

 

左から

 

プリンツ

 

れーべ

 

まっくす

 

が座っている

 

れーべとまっくすからほんのり湯の香りがする

 

直前に隊長が入渠させていたみたいだ

 

「では、私は工廠におりますので」

 

「後で行くよ。ありがとう」

 

俺が工廠に向かった後、面談が始まった

 

グラーフがそれぞれに冷たいお茶とお菓子を置き、まずはれーべからスタート

 

「れーべ、調子はどう⁇」

 

「うん、みんな良い人だよ‼︎優しいし、色んな艤装を造ってくれるんだ‼︎」

 

「そっか‼︎れーべは気に入ったんだね⁇」

 

「うん‼︎」

 

「じゃあ、まっくすはどう⁇何処か調子が悪いとか無いかな⁇」

 

「無い。健康そのもの。グラーフとはまかぜが作るご飯も美味しい」

 

「うん、健康で何よりだ‼︎最後はプリンツ‼︎」

 

「は、はひ‼︎」

 

気の抜けた返事をするプリンツ

 

あれから特に悪い事はしていないのだが、何故か緊張している

 

「体調はどうかな⁇」

 

「だ、ダイジョブデス、ハイ‼︎」

 

「ははは‼︎何にも怒らないよ‼︎あ、そうだ、プリンツに渡す物があるんだ。Uちゃん⁇」

 

「はい」

 

Uちゃんはジュラルミンケースを開け、中から勲章を取り出した

 

「おめでとう‼︎」

 

「何の勲章ですか⁇」

 

「君は世界で初めて”4連撃”を達成した艦娘なんだ。それを讃え、勲章を授与します‼︎」

 

「あ…れ、レイにあげて下さい‼︎」

 

「いいのかい⁇」

 

「はい‼︎レイが居なきゃ、その4連撃は達成出来ていません‼︎」

 

「…ん、分かった。これはレイに渡そう‼︎」

 

プリンツは嬉しそうな顏をした

 

ようやくレイに感謝の気持ちを形にして渡せるからだ

 

「じゃあ…最後にグラーフ」

 

「はい………何で⁇」

 

「君の事をもっと知りたくてね」

 

「あ…」

 

グラーフにとって、またと無いチャンス

 

この基地に居る男性は二人共ケッコンしているので、グラーフ自身も少し焦っていた

 

そんな中、タイミング良くミハイルが現れ、一目惚れした

 

「みんな、席を外してくれるかな⁇」

 

「分かった‼︎」

 

「仕方無い」

 

「分かりました‼︎」

 

「Uは⁇」

 

「Uちゃんもだ。れーべ達と遊んでおいで」

 

「分かった」

 

Uちゃんはジュラルミンケースを大事そうに持ち、れーべ達と共に子供部屋に入った

 

そこには隊長もおり、たいほう達が騒がない様に面倒を見ている

 

「さて、グラーフ」

 

「はい」

 

「そ、その…ビールは好きか⁇」

 

「たまに飲む」

 

「今度、その…一緒に飲みに行かないか⁇スカイラグーン辺りに…」

 

「グラーフと⁇」

 

「そう…」

 

「うん、いいよ」

 

「よしっ‼︎」

 

ミハイルがガッツポーズをする

 

何と両思いだった

 

グラーフは澄ました顏をしているが、内心凄く嬉しかった

 

「次コッチに回って来た時、スカイラグーンで待ち合わせをしよう‼︎」

 

「うん、おめかしして行く」

 

「やった‼︎」

 

ミハイルは性格に裏表が無く、誠実を絵に描いたような人物だ

 

グラーフは初対面の時、何と無くそれに気付いていた

 

「さ、私は工廠に顏を出すよ‼︎」

 

「場所分かる⁇」

 

「えぇ、一度行った事がありますから」

 

「じゃあ、私は子供部屋に行く。楽しみにしてるね」

 

「こっちもですよ‼︎」

 

ミハイルが工廠に向かい、グラーフは子供部屋に入る

 

子供部屋では、たいほう達がぬり絵をして遊んでいた

 

その中心で、隊長がみんなの輪に混ざってぬり絵をしている

 

レイと同じく、隊長も時々子供に戻る

 

「おっ、グラーフ。どうだった⁇」

 

隊長がグラーフに気付き、顔を上げた

 

「うん…デートの約束した」

 

「そっか‼︎良かったな‼︎」

 

グラーフは隊長の前に座り、霞の絵を見た

 

「上手だね」

 

「…ありがと」

 

霞の頭を撫でながら、隊長と話す

 

「隊長、気付いてた⁇」

 

「まぁな。あの演習の時、何と無くそうかなって」

 

「隊長は何でもお見通し⁇」

 

「ある程度はな。まっ、未だに乙女心は分からん仕舞いだ…」

 

「ミハイルは良い人」

 

グラーフが発した言葉に、れーべとまっくすが反応した


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