艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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53話 ボーイッシュな海賊(2)

「肝試し‼︎置いて行かれたのっ‼︎」

 

「来て。海岸まで連れて行ってあげる」

 

きそに着いて行くと、海岸まで出れた

 

「歩くって、こんなに良いんだね」

 

「何だよ。今まで歩いた事無かったのか⁇」

 

レイはタバコに火を点け、ようやく呼吸を整えた

 

「レイはいつもこんな感じなんだね」

 

砂浜をピョンピョン跳ねながら、その辺をウロチョロするきそ

 

「面白い奴だな…」

 

「楽しいね‼︎足跡がいっぱい付いてる‼︎」

 

「その…なんだ。ありがとな」

 

「この前の事⁇」

 

「そう。本当に助かった。指輪もフィリップに預けてくれたんだってな」

 

「そんなの…」

 

「お前、何処の艦娘なんだ⁇」

 

「僕⁇僕はいつもここにいるよ⁇」

 

話しながらも、相変わらずピョンピョン跳ねている

 

レイの周りは、既に足跡でいっぱいになっている

 

「何か欲しい物とかあるか⁇」

 

「あるよ」

 

「言うだけ言ってみろ」

 

「いいよ。もう叶ってるし」

 

「あれか。俺の傍に居たいとかそんなんだろ⁇」

 

「まぁね」

 

「他だ他‼︎」

 

「じゃあ…ん〜…そこで動かないで」

 

言われた通り、レイは動かずにいた

 

すると、きそはレイの背中からゆっくりと抱き着いた

 

「あったかいなぁ…」

 

レイから見れば、きそはまだまだ子供だった

 

一丁前な格好をしてはいるが、身長はれーべ達と同じ位だ

 

「鹿島には内緒だよ⁇」

 

「分かったよ」

 

その後、砂浜に腰を下ろし、きそはレイのお腹にもたれかかった

 

「へへへっ、いいね。小柄で良かったよ」

 

「本当、変わってるよな…」

 

「こうするのを夢見てたんだ…」

 

「提督は嫌な奴なのか⁇」

 

「とってもいい人だよ⁉︎優しくて、寛容な人だよ⁇」

 

「そっか…」

 

「レイはパイロットだよね⁇」

 

「そう。こう見えて、昔は世界を股に名を馳せてたんだぞ⁇」

 

「どんな機体に乗ってるの⁇」

 

「今は”フィリップ”って機体だ。本当に俺に良く仕えてくれる、最高の相棒さ」

 

「そ、そっか…へへへ」

 

こう褒められると、きそも嬉しそうだ

 

そんなきそを見て、レイは不思議そうな顔をする

 

「レイ〜‼︎何処ですか〜‼︎」

 

「鹿島だ」

 

「きそ、俺と来いよ。楽しいぞ⁉︎」

 

「ううん、僕はいいんだ。レイをここから見てる」

 

「寂しくなったらいつでも来いよ⁇」

 

「うん‼︎次は基地に行きたい‼︎」

 

きそが離れ、二人は立ち上がる

 

「ありがとう、レイ」

 

「おぅ‼︎またな‼︎」

 

レイがきその頭を撫でる

 

きそはそれだけでも幸せだった

 

フィリップの時だって、レイは時々撫でてくれたが、今回は違う

 

レイの体温…

 

髪が乱れる音…

 

柔らかい手…

 

きその小柄な体が、少し震える

 

これが、気持ちいいって感じなんだね

 

機械の体じゃ分からなかった感情だ

 

好きな人に触れられると、嬉しくて気持ちいいんだね…

 

鹿島に連れられ、レイは基地に戻った

 

途中でレイは鹿島に頭を叩かれていた

 

奥さんが強い夫婦って、長持ちするんだよね、確か

 

レイはあぁ見えて、他人の意見を尊重する人間だ

 

パパの良い所をしっかりと受け継いでいる

 

「…時間だ」

 

誰かにバレない内に、格納庫に戻らないと…


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