艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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50話 ブロンド少女と凶鳥と(2)

「えぇ。彼はとても優しいです。お茶の作法を教えてくれたり、色んな料理を教えてくれたり…あ、デザートの作り方は凄く勉強になります‼︎」

 

「あいつ、昔喫茶店か何かで働いてたらしいからな…」

 

「あんまりお話はしないのですが…そこがまた良くって」

 

「なるほどな…ま、ギュゲスは心配しなくても大丈夫だ」

 

私は、ギュゲスに関しては確信していた

 

「それは何故ですか⁇」

 

「あいつが女性に対してお熱になるのは初めてだからさ」

 

「身持ちが固いんですね」

 

「誰に対してもホドホドだったからなぁ…そこまでするのは初めてだよ」

 

「では、期待しても⁉︎」

 

「大丈夫だと思うよ。そのままで」

 

「あはっ‼︎」

 

大和の顔がパアッと明るくなった

 

「もう上がるよ。のぼせて来た」

 

「すみません、引き止めてしまって…」

 

「次はあいつでも誘ってやるんだな」

 

風呂から出て、少し扇風機を回した

 

ちょっとのぼせたな…色んな意味で

 

服を着て、愛宕を待つ

 

「…ウッ」

 

左目が痛む

 

この症状は時々あり、左側だけ白黒に見える

 

何度か病院に行ったが、治らなかった

 

命に別状は無いのと、まだ見えるのが救いだが、空にいた時に起きるとマズい

 

これまでも何度かあったが、何とか耐えて来た

 

「お待たせ〜‼︎アレン⁇」

 

「あぁ…もういいのか⁇」

 

愛宕には分からない様にしないと…

 

また心配を…

 

あれ⁇

 

「ア〜レ〜ン〜‼︎」

 

愛宕の声が聞こえる度に、色が戻って行く…

 

「アレン‼︎アレンってば‼︎」

 

「ん⁇」

 

「またボーッとしてたわよ⁉︎大丈夫⁇」

 

「大丈夫だよ」

 

不思議だな…

 

愛宕の傍に居ると、この症状が緩くなる

 

「目が痛いの⁇」

 

愛宕の顔が、息がかかる程に近付く

 

湯上がりの匂いと、甘い吐息のせいで心臓の鼓動が速くなる

 

「大丈夫だ。ホントだって‼︎」

 

「そう⁇痛くなったらちゃんと言ってね⁇」

 

「…」

 

ふと、彼女には心配を掛けたくないと思った

 

「帰ろう」

 

「えぇ」

 

基地に続く、砂利で舗装された道を歩く

 

「…えいっ‼︎」

 

愛宕が腕を組んできた

 

「全く…」

 

「否定しないんだ〜‼︎やっぱり私の事好きなんでしょ〜‼︎」

 

「…好きだよ」

 

「えっ⁇」

 

「何でもない‼︎機体の整備をしてる。何かあったら呼んでくれ」

 

「あらあら〜」

 

これ以上傍に居たら、変な気持ちになる

 

急いで格納庫に入った

 

まだ乗り慣れていないT-50の説明書を手に取り、機体に乗った

 

「え〜と、トレーニングモード起動」

 

《音声認識に入ります》

 

「あいうえお」

 

《音声認識完了。前方のカメラに向かって、ここ一番の笑顔を見せて下さい》

 

「に〜っ」

 

この認識システムを造った奴、いつかぶっ飛ばしてやる

 

 

 

 

「ウェックショイ‼︎」

 

「あらあらレイ、風邪ですか⁇風邪薬、作りましょうか⁇」

 

「大丈夫だ。バッカス辺りが噂してんだろ⁇」

 

 

 

 

《認識完了。こんにちは、アレン大尉。トレーニングモードを起動します》


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