艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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48話 欲しい物(3)

次の日の朝…

 

れーべとまっくすがパパに連れられ、スカイラグーンに向かった

 

二人が居なくなり、少し不安になる

 

「ぶるるるる〜」

 

食堂の地べたでは、たいほうがオモチャで遊んでいる

 

私は日課の様に、レイのいる工廠に向かった

 

「…」

 

工廠の角から中を覗くと、沢山の妖精達が艤装を造っていた

 

「ひゃっ‼︎」

 

右頬に冷たい物を当てられ、背筋が跳ね上がった

 

「何見てんだ⁇」

 

振り返ると、そこに居たのはラムネを持ったレイだった

 

「へへへ、くすねて来た。飲むか⁇」

 

今日だけは…

 

今日だけは、この笑顔に腹が立った

 

「このクズ‼︎あんたなんか大っ嫌い‼︎」

 

「あっ‼︎」

 

跳ね除けたラムネの瓶が割れ、コンクリートの上に染みていく

 

「あんたの艦隊になんか、入らなきゃ良かった‼︎あんたに助けて貰わなきゃ…良かった」

 

最初は怒鳴っていたが、途中から涙声になってしまった

 

「だったら、あんたなんか…好きにならずに、済んだのに…」

 

下を向いて泣き出してしまった

 

もっと正直になれ‼︎

 

何度も何度もそう思ったが、やっぱりこんな拙い言葉しか出て来なかった

 

「レイなんか大っ嫌い‼︎」

 

挙句の果てに走り出してしまう

 

私は困った女だ…全く

 

僻みに八つ当たり

 

それに暴力

 

こんなの、嫌われたに決まってる

 

 

 

「すん…」

 

格納庫の裏側ですすり泣いていると、壁越しにフィリップが話し掛けてきた

 

《霞は正直じゃないね》

 

「はぁ⁉︎ウッサイわね‼︎戦闘機の分際で何よ‼︎あんたまで私をバカにするつもり⁉︎」

 

フィリップの言葉に腹が立ち、つい立ち上がって怒鳴ってしまう

 

《そうそう。霞はそうじゃなきゃ。霞に涙は似合わないよ》

 

フィリップはわざと私を怒らせていた

 

「あんた…レイに似てるのね」

 

《そりゃあ、僕の大切なパイロットだからね。でもそれは、霞も一緒じゃないの⁇》

 

「そうね…彼は大切な人よ。大切な…」

 

《霞は、レイと良く似てる》

 

「えっ⁉︎」

 

《レイも正直じゃないんだ。だから鹿島とケッコンするのに時間がかかった》

 

「私…まだ間に合うかしら⁇前の基地で、とても酷い目にあって…誰も信用出来なくなって…それで…」

 

フィリップは間髪入れずに言った

 

《大丈夫‼︎レイはそんな奴じゃない‼︎僕が保証する‼︎》

 

「本当かしら⁇」

 

《この基地の人達の中で、パパの次に付き合いが長い僕が言うんだ。大丈夫。だから、もう一度勇気を振り絞って‼︎》

 

まさか戦闘機に説教される時が来るとは思わなかった

 

だけど、フィリップの背中押しのお陰で、もう一度だけチャンスがある様に思えた

 

「ありがと、フィリップ。戦闘機の分際ってのは、取り消すわ」

 

《やったね‼︎》

 

「ふふふっ…」

 

壁越しの会話が終わった途端、急に誰かに抱えられた

 

「ち、ちょっと‼︎」

 

「来い」

 

レイだ

 

目が怒ってる

 

そりゃそうか

 

彼に暴力を振るってしまった

 

絶対怒られる…

 

抱えられたまま、工廠に戻って来た

 

工廠の端っこに降ろされ、レイは怒ると思いきや、タバコを吸い始めた


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