艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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48話 欲しい物(2)

「タイミングが悪い」

 

「…」

 

まっくすの言っている事がちょっと当たってるだけに腹が立つ

 

「じゃあじゃあ、次はボクの作戦ね‼︎」

 

次の作戦はれーべが立てた

 

れーべが手渡したのは、体を洗うタオルだ

 

「これでレイの体を洗ってあげるんだ。ゴシゴシって‼︎」

 

「…やってみるわ」

 

昼間の作戦を失敗してから、霞は何だか乗り気では無い

 

 

 

「風呂風呂〜っと」

 

レイがお風呂に入ったのを見計らって、私もこっそり入渠する

 

提督が入ろうがレイが入ろうが、みんな気にしない

 

提督に至っては、たいほう達を入れている位だ

 

「♪〜」

 

口笛を吹きながら髪を洗うレイの背後にそ〜っと近付き、いざタオルを出そうとした時だった

 

「レイ〜‼︎背中流しますね〜‼︎」

 

今度はプリンツの邪魔が入る

 

「っ…」

 

タオルを握る手に、力がこもる

 

入渠だけ済ませて、私はドックを出た

 

 

 

「タイミングが悪い」

 

まっくすが同じ事を言う

 

「もういい…レイは振り向かない…」

 

「たいほうもさくせんつくった‼︎」

 

一番子供のたいほうが作戦を立てていた

 

正直不安だ

 

「あのね、すてぃんぐれいはひとりでねんねするのがきらいなの。きょうはかすみがねんねしてあげるの‼︎」

 

「本当に上手く行くかしら…」

 

「だいじょうぶだよ‼︎たいほうもいっしょにねんねしたことあるよ‼︎」

 

「…分かったわ」

 

 

 

今日は夜間哨戒も無い

 

やるならチャンスだ

 

レイは既に自室に入った

 

鹿島は食堂でテレビを見ている

 

今しかない‼︎

 

「…」

 

部屋のドアを開けようとした時、手が止まった

 

本当に上手く行くだろうか…

 

…やめとこうかな

 

そんな感情が頭を過ぎったが、ここで諦めてはダメだ

 

そう思い、ドアを開けた

 

「zzz…」

 

時間は深夜0時

 

既にレイは寝息を立てていた

 

寝返りを打ったのか、布団が剥がれており、それを掛け直そうとした

 

「あっ…」

 

レイの背中には、しおいがくっ付いていた

 

そっか…

 

二人は親子だったわね…

 

この絆には勝てないや…

 

布団を掛け直した後、涙が溢れてきた

 

「バカね…私。こんな叶わない恋なんて、するんじゃなかった…」

 

自分が情けなくなり、急いで部屋を出た

 

 

 

「かえってきたよ⁇」

 

「え⁉︎」

 

れーべとたいほうがまだ起きていた

 

まっくすは既に眠っている

 

「ひっく…えぐ…」

 

「だめだったの⁇」

 

「………うんっ」

 

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 

頭一つ分小さいたいほうは、私の頭を撫でようとしているのだか、届かずに頬を撫でて来た

 

「私…もう分からない‼︎」

 

「たいほうといっしょにねんねしよ⁇ね⁇」

 

「…うん」

 

すすり泣きながら布団に入ると、たいほうがようやく頭を撫でて来た

 

「パパいっつもいってるの。だいじょうぶ、だいじょうぶって。かすみもだいじょうぶだよ」

 

「あんた…大人なのね…」

 

「たいほうおとな⁇」

 

「…何でもないわ」

 

「消すよ⁇」

 

れーべが電気を消す

 

部屋が真っ暗になり、不安がより一層強くなる

 

たいほうは一瞬で眠り、起きているのは私だけになった

 

 

 

明日、どんな顔して会えばいいだろうか…

 

たいほうに抱かれながら、そんな事を考えていた


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