艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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47話 愛の巣(3)

「じゃすこ‼︎」

 

「そうか。たいほうは初めてか‼︎」

 

「じゃすこひろいね‼︎」

 

店内に入るなり、たいほうは広さに驚いていた

 

《イオンモールへようこそ‼︎》

 

「‼︎」

 

店内放送が流れ、たいほうはそれに反応した

 

「たいほうおかいものにきたの‼︎」

 

《本日は火曜特売の日です。お値打ちな商品が沢山あります‼︎》

 

「たまねぎとおにくはありますか⁉︎」

 

《お肉は2割引、野菜はたまねぎ、ジャガイモ等がお安くなっています‼︎》

 

店内放送と上手く話が噛み合い、見ている二人もクスッとなってしまった

 

たいほうをカートの子供シートに乗せ、買い物を始める

 

「たまねぎ」

 

「待って。これと…これね」

 

みほが目利きでたまねぎを選び、カゴに放り込む

 

「おにく」

 

「焼肉だからこれね」

 

「ういんなーたべたい‼︎」

 

「じゃあ、これも入れましょう」

 

たいほうはどんどんカゴに入れられる商品を目で追っている

 

「お菓子はどうする⁇」

 

「おかしいらない。おにくたべるの」

 

「ふっ…ならジュースにしよう」

 

ジュースコーナーに行くと、たいほうは何かを取ろうとしている

 

「りんごのじゅーす」

 

「これか⁇」

 

「それのみたい‼︎」

 

ニコニコマークが書かれたりんごのジュースをカゴに入れ、その場を後にする

 

その後、お酒を少し買って、レジを済ませた

 

「だいぶ時間余ったな…」

 

「私、荷物持って帰るから、もう少し居る⁇」

 

「いいのか⁇」

 

「いいわよ。親子二人で楽しみなさい⁇」

 

ウインクを残し、みほは軽々と荷物を持ち、店内を出た

 

「だっこ〜」

 

カートの子供シートは狭い様で、たいほうは手を上下して抱っこをせびって来た

 

「よいしょ」

 

たいほうを抱き上げ、二階へと向かう

 

「何か欲しいか⁇」

 

「えほんかうの」

 

本屋に向かうと、普段横須賀の売店では売っていない本が沢山あった

 

「好きなの持っておいで」

 

「これ‼︎」

 

降ろしてすぐに持って来た本は、小さな虫の図鑑と生き物の図鑑、絵本の計三冊

 

「みんなとよむの‼︎」

 

「よしよし、買ってやる」

 

「たいほうおかねあるよ‼︎」

 

武蔵辺りに持たせて貰ったのか、首から下げたカエルのポーチのジッパーを開けると、中には小銭が入っていた

 

全部集めても2千円行くか行かないか位しか無い

 

ポーチを見て口を尖らせているたいほうの頭を撫で「パパが買ってやる」と言うと、たいほうはニコッとした後、ジッパーを閉じた

 

「さ、そろそろ行こうか」

 

「ありがと‼︎」

 

ジャスコを出ると、たいほうは店に振り返り「じゃすこばいば〜い」と言い、私の手を握った

 

 

 

 

居住区に帰ると、美味しそうな匂いが漂って来た

 

居住区は円形になっており、中心に広場があり、その中心でバーベキューをしている

 

居住区の全員が集まっており、広場は賑やかになっていた

 

「大佐‼︎もうすぐ焼けるわよ‼︎」

 

「すぐ行くよ‼︎ビスマルクの所に行っといで」

 

「わかった‼︎」

 

バイクのケースに本を入れ、広場に向かう

 

「わぁ〜‼︎」

 

たいほうが肉を見て目を輝かせている

 

たいほうは、あぁ見えて結構食べる

 

蟹鍋の時もそれなりに食べていた

 

「じゃ‼︎頂きましょう‼︎」

 

ビスマルクが天高く缶ビールを掲げ、その場にいた全員が「頂きます‼︎」と叫び、頃合いに焼けた肉をそれぞれ手にし始めた

 

たいほうはビスマルクの所で一緒に食べているので安心だ

 

私は…

 

「よっ‼︎大佐‼︎」

 

「摩耶⁉︎」

 

いつかの何でも屋の摩耶だ

 

ベンチに座り、二人で話し始めた

 

「へへへ、ビックリしたか⁇最近ここに住み始めたんだ‼︎」

 

「住み心地はどうだ⁇」

 

「良い感じだよ。戦争から離れた場所には、こんな場所もあったんだなぁ…」

 

「ふっ…そりゃ良かった。何でも屋は引退か⁇」

 

「そうだな。今は駄菓子の卸問屋をしている」

 

「またマイナーな…」

 

「駄菓子は良いぜ⁉︎何せ子供が寄って来る‼︎」

 

摩耶も子供好きの様だ

 

そう言えばこの居住区が出来てから、急激に犯罪数が減ったらしい

 

朝の通学路では保護者に代わり、ここにいる子達が横断歩道で旗を振ったりして安全を確認

 

夕方はまた通学路の安全確認

 

夜は代わりばんこで巡回

 

これが今の彼女達の本職だ

 

朝からお昼までは自由時間だが、摩耶の様に短時間のアルバイトをする子達もいる

 

「大佐には感謝してもしきれねぇな」


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