艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、6話が終わりました

今回のお話ですが、かなり賛否両論があると思います

そこはすぐに分かるかと思います

ですが現段階では、私自身、一番のお気に入りの回になっています

理由は、今回のお話で登場する艦娘に、祖父が実際に搭乗していたからです

感想&要望等、お待ちしております


7話 恋する雄鶏(1)

「…」

 

目の前を、地下鉄が通り過ぎて行く

 

昨日、私に休暇が下りた

 

「二週間の休暇です。その間、基地には立ち入りを禁止…ですって」

 

「武蔵やたいほう、それにフィリップはどうするんだ⁇」

 

「武蔵とたいほうは、私の基地で預かります」

 

「…」

 

「に、睨まないで下さい。出撃も遠征もさせませんから…ね⁇」

 

気付かないうちに、彼を睨んでいた

 

「絶対だぞ︎」

 

「了解です︎」

 

”フィリップは任しとき”

 

「分かった。じゃあ頼んだぞ」

 

「心配じゃないですか⁇」

 

「お前の所だ。何にも心配してないよ」

 

 

 

とは言ったが、心底心配だ

 

武蔵はまだしも、特にたいほうが心配だ

 

ちゃんとご飯は食べているか…

 

どっかですっ転んで怪我でもしていないか…

 

鼻水は垂らしてないか…

 

電車に揺られ、景色を眺めている間、ずっとその事を考えていた

 

地元の駅に着き、煙草に火を点けた

 

「なるべく帰って来たくなかったんだがな…」

 

「大佐⁇大佐だ︎」

 

「おかえりなさい︎」

 

「大佐〜︎」

 

「あ…あぁ…」

 

「ママ〜、あの人だれ〜⁇」

 

「こらっ。あの人なんて言っちゃダメ︎あのお方、この街の誇りよ」

 

帰ればいつもこうだ

 

部下も家族も失って、何が英雄だ…

 

何がこの街の誇りだ…

 

「たいさ︎おかえりなさい︎」

 

「あぁ、ただいま」

 

だが、子供の夢を壊す訳にはいかなかった

 

たいほうと同じ位の身長の女の子の頭を撫で、そのまま街をふらついた

 

「はぁ…」

 

二週間か…長いな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃横須賀の鎮守府では…

 

「な、なんだこれは︎」

 

「これは最新の主砲さ」

 

目の前で造られて行く、白黒が入り混じった迷彩柄の主砲を目の当たりにし、武蔵は驚いていた

 

「こっちはなに⁇」

 

「これは改修工廠です︎たいほうちゃんも修理しますか⁇」

 

「たいほうはけがしてないよ⁇」

 

「あんまり、兵装は見た事無いかな⁇」

 

「ない。必要無いからな」

 

「ふぃりっぷがいるよ︎」

 

「そっか…」

 

 

 

 

 

二人が工廠を見学している時、私は街をぶらついていた

 

「大佐、揚げたてだよ︎持って行ってくんな︎」

 

「あぁ、ありがとう」

 

コロッケを貰い、それを食べながらまた歩く

 

「大佐、キンキンだよ︎」

 

「おぉ、ありがとう」

 

今度はラムネを貰い、木陰のベンチで一息ついた

 

「ふぅ…」

 

心配で心配で仕方がない

 

「よいしょっと」

 

考え事をしていると、隣に女性が腰掛けていた

 

「ごめんね、おじさん。ちょっと休憩させて⁇」

 

「おじさん…」

 

開口一番におじさんだと︎

 

失礼な女だ…

 

「あんた、この街の人か⁇」

 

「そうよ、おじさんは⁇」

 

「私もこの街の産まれだ」

 

「そう」

 

「この街は平和だな…」

 

「そう⁇」

 

「あぁ…」

 

ベンチの上を見上げると、木漏れ日が差し込み、蝉が鳴いている

 

「平和だ…戦時中とは思えない」

 

「おじさんは、お仕事何してるの⁇」

 

「あ…えっと…その…パイロット、だ」

 

この街では、提督と言うのは控えた方がいい

 

先程の様な事になってしまうからだ

 

「そっかぁ、パイロットかぁ…」

 

「そう言う君は…学生かい⁇」

 

「うん、そう。青春を取り戻してるのよ⁇」

 

彼女は一瞬悲しそうな顔をした後、先程と同じ顔を見せた

 

「へぇ…」


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