艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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44話 ジェントルマンの集い(3)

私達は、しばらく会議室で待たされる事になった

 

「暗い‼︎何か話しようぜ‼︎」

 

「そうね…アンタ、ケッコン生活はどうなのよ」

 

「とっても幸せ‼︎所帯を持ったら、やっぱ世界が違うね‼︎」

 

「あっそ。大佐は⁇」

 

「そうだな…武蔵は良く尽くしてくれる。最近、料理がとても上手くなったんだ…」

 

「ははは‼︎お前とは大違いだなぁ‼︎」

 

指差して笑うスティングレイに対し、横須賀は腰に手を回した

 

「オーケーオーケー‼︎もう言わない‼︎」

 

「呉さんは⁇」

 

「私⁇私は迷惑を掛けっぱなしですよ。この際ですし、知らないのは総督だけなので言いますが、私は本当はヘタレです。雷だって怖いし、夜は一人で眠れない。そんな時、いつだって彼女が居てくれた…」

 

呉さんは、隼鷹の肩をそっと抱いた

 

「マジか」

 

「こう見えてスタイルは良いんだぜ、私‼︎」

 

隼鷹は自分なりに色っぽいポーズを見せている

 

「確かにスタイルいいな」

 

「そういや、レイの嫁さんは⁇」

 

「あぁ、言わなかったな。ほら、ここの飛行教官だった鹿島さ」

 

「お…おおお鬼の鹿島と呼ばれた彼女を落とすとは…」

 

隼鷹が震えている

 

「総督、分かりました‼︎」

 

小さな紙切れを持った憲兵が来た

 

「何処の所属だ⁉︎」

 

「…舞鶴です」

 

「はぁ…」

 

舞鶴の鎮守府と言えば、海空バランスの取れた編成がウリの鎮守府だ

 

それ故、敵に回ったとなれば少々手こずる相手になる

 

「しかし、何で舞鶴が今頃…あそこは結構古参なハズだ」

 

「古参”だから”マズいんです。我々の弱点を理解して…」

 

話の途中、外で砲撃音がした

 

「長門だ」

 

「長門、どうしたの⁉︎」

 

《高速の飛来物が来た‼︎撃ち落としてはいるが…》

 

「始まったか…」

 

三人が窓の外を見ている間に、横須賀は机の上にあのレーダーを展開した

 

「囲まれた…飽和攻撃だ…」

 

展開された立体レーダーには、基地の周りに大量に飛来するミサイルが表示されていた

 

「提督、ミサイルの飛来方向は舞鶴の方向です‼︎」

 

明石と横須賀が切羽詰まる中、私と呉さんと隼鷹は急いで部屋を出た

 

「安心しろ、横須賀。お前は運が良い」

 

「こんな時に軽口叩かないでくれる⁉︎」

 

ただ一人窓際に残ったスティングレイは、ポケットに手を入れたまま外を眺めて、とても真剣な目をしていた

 

「昔言ったろ。神を信じる前に、俺を信じろ…って」

 

「じゃあどうやってこの状態を打開するのよ‼︎死ぬのよ⁉︎私達…」

 

「どうせ死ぬなら、何か言い残す事はあるか⁇正直に言わないまま、お前は死ぬのか⁇」

 

スティングレイと横須賀が会話している最中にも、ミサイルは接近している

 

「残り30秒‼︎」

 

明石の声に力がこもる

 

横須賀は言葉に詰まり、ただただ机の上に拳を置くだけ

 

「10秒‼︎提督‼︎」

 

「ジェミニ‼︎」

 

「あ…あんたが好き‼︎死ぬ程好き‼︎何で鹿島となんかケッコンしたのよ‼︎バカバカバカぁぁぁ〜〜〜‼︎」

 

「よく言った」

 

スティングレイが横須賀の方に振り向いた瞬間、鎮守府の周りで大規模な爆発が起き、基地が揺れた

 

「な…何が起こって…」

 

《地対地ミサイル迎撃成功‼︎やったね‼︎》

 

スティングレイの無線の先から聞こえて来たのはフィリップの声だ

 

「よくやった‼︎フィリップは天才だな‼︎」

 

《素直に受け取っておくね‼︎ありがとう‼︎》

 

「フィリップ…⁇」

 

「だから言ったろ。俺を信じろって」

 

「ありがと…」

 

「フィリップには、ミサイルを自爆させる装置を載せてある。まっ、まだ試作だから安定はしないが、成功して良かったよ」

 

「賭けだったの⁉︎」

 

「そうだ」

 

「ホンットバカ‼︎」

 

「けっ‼︎素直に言えよ‼︎”スティングレイ様が大好きです‼︎私を抱いて‼︎”って‼︎」

 

「…事が終われば、抱いてもいいわ…」

 

《レイ⁇殺しますよ⁉︎相手は誰です⁉︎》

 

無線の先で鹿島がブチギレている

 

「あぁ、いやいや‼︎マジでしないって‼︎」

 

《もし違う女の子を抱いたら匂いで分かりますからね‼︎分かりましたか⁉︎》

 

「はいっ‼︎」

 

《気を付けて帰って来て下さいね⁇朝ごはんはシンプルにします‼︎》

 

「楽しみにしてるよ」

 

「いいお嫁さんね…」

 

「最高の妻だ。裏切れないよ。さてっ‼︎」

 

スティングレイは両手をパンっと合わせた

 

「此方からも”お返し”と行こう‼︎」

 

横須賀はその言葉を聞き、ハッとした

 

「えぇ‼︎互いに送り合うのが礼儀よね‼︎」

 

「そのレーダー貸せ」

 

「どうぞ」

 

スティングレイはレーダーの前に座り、無線を起動した

 

「鹿島」

 

《はいはい。何ですか⁉︎》

 

「しおいは起きてるか⁇」

 

《起きてますよ‼︎代わりますね‼︎》

 

無線の向こうで”レイです”と聞こえた後、しおいの声が聞こえて来た

 

《レイ〜今何処にいるの〜⁇》

 

「いいかしおい。今から言うポイントに”散弾ミサイル”を三発発射してくれ」

 

《分かった‼︎何処⁉︎》

 

「今地図を送る…」

 

《来た‼︎》

 

「ポイントB-45。そこのC-39に落としてくれ」

 

《分かった‼︎》

 

しおいは無線を置いて外に出たのか、しばらくすると無線の先から”いっけ〜‼︎”と聞こえ、また戻って来た

 

《撃ったよ‼︎後五分で着弾する‼︎》

 

「お土産に双眼鏡買ってやるからな」

 

《やったね‼︎》

 

「いい子にしてるんだそ」

 

《分かった‼︎》

 

無線を切ると、レーダーにミサイルが表示された

 

「発射位置を特定されず、感知もされないまま敵を殲滅出来るステルス機能付きだ」

 

「何でここに表示されるのよ」

 

「俺が造ったレーダーシステムだ。弄り方位分からぁ‼︎肉眼観測出来る奴はいるか⁉︎」

 

《いる》

 

無線の先の声はグラーフだ

 

事態に気付き、付近を飛んでいるみたいだが、まだレーダーの観測外だ

 

「目標は舞鶴の鎮守府だ‼︎肉眼で弾着観測をお願いしたい。出来るか⁉︎」

 

《私を誰だと思っている‼︎任せろ‼︎》

 

しばらくすると、スペンサーがレーダーに表示された

 

《第一弾…炸裂‼︎》

 

レーダーを見る眼と、無線を聞く耳に神経を研ぎ澄ませる

 

《基地の大半を破壊‼︎艦娘が海へ逃げている‼︎》

 

「よし良いぞ‼︎第二弾飛来‼︎」

 

《炸裂‼︎着弾‼︎》

 

レーダーが荒れる

 

相当な威力だ

 

《舞鶴は壊滅状態だ‼︎ははは‼︎痛快だな‼︎》

 

「最後の一発だ‼︎」

 

《着弾‼︎》

 

本来なら二発程で充分だが、先程殺されかけた事もあり、追い打ちで三発目を出させた

 

《舞鶴はしばらく再起不能だな》

 

「殺されかけたんだ。これ位しないと」

 

《ふっ…まぁ良い。任務完了、RTB》

 

「ありがとう」

 

「凄いわね…」

 

「さ‼︎後は他の連中に任せるんだな。俺は寝る‼︎おやすみ‼︎」

 

レーダーの前で本当に眠ってしまったスティングレイの横で、横須賀がチョコンと座った

 

横須賀はしばらくスティングレイの寝顔を見続けた…

 

 

 

 

次の日、横須賀に数人の男性が送られて来た

 

横須賀は朝から彼等の処分に忙しかった

 

「おはよ、レイ」

 

「おはよう。隊長達は無事か⁇」

 

「うん。昨日の晩、ミサイルが飛んで来た時、隊長と呉さんは子供達をシェルターに避難させた後、自身達はミサイル迎撃の為、各所に設置された銃座に着いてたの。今は帰りの準備をしてるわ」

 

「事は収まったか⁇」

 

「えぇ。舞鶴の艦娘は海へ退避。人間は自分達がミサイルを撃ち出した後、シェルターに逃げて全員無事よ。死者がでなかったのが幸いね」

 

「で、彼奴らはどうなる」

 

「反逆罪で軍法会議ね…まっ、舞鶴の鎮守府は再建可能だし、新しい提督を派遣しようと思う」

 

「無理すんなよ」

 

「貴方もね、レイ…」

 

横須賀は今の様に時々しおらしくなり、無性に護ってやりたくなる

 

「じゃ‼︎俺は帰るぞ‼︎」

 

「あ‼︎そうだ‼︎大佐に双眼鏡渡して置いたから、しおいちゃんにあげて⁇」

 

「サンキュー」

 

こうして、最悪の夜は終わりを迎えた




反逆者をいち早く発見し、破壊、奪還の為に尽力を尽くした貴官等に対し、勲章を授与します‼︎

舞鶴鎮守府が反逆者の手から解放されました‼︎

反対派メンバーの一人、呉さんが舞鶴鎮守府の提督を兼任しました‼︎

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