艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

156 / 1086
42話 青い楽園(2)

「かぁ〜っ‼︎」

 

「くぁ〜っ‼︎」

 

飲食する広場に戻り、二人はビールを喉に流す

 

「ウマイカ⁇」

 

「最高‼︎」

 

「たまらん‼︎」

 

ル級がしているカウンターバーに二人は座り、彼女の前でおつまみとビールを飲む

 

ル級は嬉しそうだ

 

「時々、彼女が分からなくなります…」

 

「ダイジョウブヨ。アナタナラシンジテモラエルワ…」

 

二人の後ろで、何やら意味深な台詞が聞こえた

 

先に振り返ったのはスティングレイ

 

そして、振り返ると同時に爆笑する

 

「アヒャヒャヒャヒャ‼︎バッカスだぜ‼︎ハハハハハ‼︎」

 

「え⁉︎」

 

振り返ると、そこには普段真面目なバッカスが離島棲姫に骨抜きにされていた

 

「色仕掛けされてやんの〜‼︎ハッハッハッハッハ‼︎」

 

指を指して大爆笑するスティングレイにつられて、周りの連中も笑い出す

 

「もう笑えよ‼︎どうせ俺は情けないさ‼︎」

 

「よく言った‼︎流石はバッカスだ‼︎」

 

バッカスは開き直り、離島棲姫に甘える

 

「イッパイアマエテ⁇ワタシタチ、ヒトハダコイシイノ…」

 

「可愛すぎる…」

 

「落ちてる落ちてる‼︎あ〜、可笑しい‼︎」

 

スティングレイの笑いは止まる事を知らず、カウンターに向き直してもまだ笑っていた

 

「イラッシャイマセ‼︎オツカレサマ‼︎」

 

笑い続けるスティングレイを横目にビールを飲んでいると、誰か入って来た

 

「わ、私は…」

 

「スワッテスワッテ‼︎」

 

「あっ‼︎あんたは‼︎」

 

「に、任務ご苦労です‼︎」

 

私とラバウルさんに敬礼をしたのは、トラック泊地の提督だ

 

「心配ご無用ですよ。ここは非武装地帯。貴方も此処では、一人のお客様です」

 

「は…はぁ…」

 

ラバウルさんに説得され、ようやく落ち着きを見せたトラック泊地の提督

 

「ノミモノハナニニスル⁇」

 

「で、では…サイダーを…」

 

「チョットマッテテ‼︎」

 

トラック泊地の提督を相手するのは、名札に”レ級”と書かれた、小柄な少女だ

 

しばらくすると、照れ臭そうにサイダーを持って来た

 

コップは二つある

 

「レ級…⁇」

 

「レキュウ‼︎ヨロシクネ‼︎」

 

「…一緒に飲むかい⁇」

 

「ヤッタ‼︎」

 

レ級は両手でコップを持って、注がれていくサイダーを見ている

 

二つのコップにサイダーが注がれ、乾杯をした後、少しずつサイダーを飲みながら、意外にも楽しそうに話し始めた

 

「トラックさんも落ちました、っと」

 

「あの堅気な人がねぇ…」

 

再びカウンターに体を戻すと、スティングレイの横に誰か座った

 

「ハイビスカスのやつ、くださいって‼︎」

 

「カシコマリマシタ」

 

ル級の手元で、ノンアルコールのカクテルが作られていく

 

因みに、私達が飲んでいるビールもノンアルコールだ

 

「レイ〜⁇浮気か〜⁇」

 

テンションが可笑しくなったバッカスがスティングレイの肩を持った

 

「ばっ‼︎ちげぇよ‼︎」

 

「ハイビスカスノカクテルダ」

 

「ありがとうございマス‼︎」

 

スティングレイの横に座った女性は、パレオを着ていて、肌も小麦色で健康的だ

 

「花食ってるよ…」

 

「美味しいデスよ⁇」

 

振り向いた彼女の顔を見て、スティングレイとバッカスが息を飲む

 

「可愛いな…」

 

「お…おぅ…」

 

「カノジョハ”パラオチャン”ダ。ヨコスカサンカラ、ココノケイエイヲマカサレテイル」

 

「パラオちゃんデス‼︎はいっ‼︎一回死にかけましたって‼︎」

 

「あ‼︎」

 

スティングレイが何かを思い出した

 

「パラオの提督か‼︎」

 

「あたりですって‼︎スティングレイさんは鋭いです‼︎」

 

「パラオチャンハ、ヨコスカサンニホゴサレテイタ。チョットマヌケダケド、トテモカワイイオンナノコダ」

 

「マヌケじゃないですって‼︎」

 

「だから花食うのか…」

 

「お花、美味しいデス‼︎はいっ‼︎」

 

「あっ…」

 

屈託の無い笑顔に、私を含めた三人が惚れそうになる

 

「オハナハタベラレル。リンゴノカワダカラナ」

 

「だとしたら相当手の込んだ作業だな…凄いよ」

 

「スティングレイハ、オセジガウマイナ…」

 

「俺は本当の事しか言わん‼︎」

 

「今度までに、パラオちゃんも頑張って覚えますって‼︎」

 

「楽しみにしてるからな‼︎」

 

「頑張りますって‼︎」

 

スティングレイの横で、美味しそうにノンアルコールカクテルを飲んだ後、リンゴのハイビスカスを食べ、席を立った

 

「では皆さん‼︎お楽しみ下さいって‼︎」

 

「「「は〜い‼︎」」」

 

パラオちゃんが一礼すると、その場にいた全員が返事をし、笑顔を見せた後、奥に行った

 

「いいなぁ…パラオちゃん…」

 

「パラオチャンハ、フリーダ」

 

「フッフッフ…何とこのスティングレイ、ケッコンしているのだぁ〜‼︎」

 

立ち上がって自慢気に指輪を見せるスティングレイ

 

「シッテル」

 

「…マジ⁇」

 

「マジ」

 

「そんな〜‼︎」

 

ル級に鼻で笑われ、渋々席に座る

 

「スティングレイハヤサシイカラ、イテモオカシクナイヨ」

 

「へへっ、サンキュー‼︎」

 

「スティングレイ、そろそろ帰ろうか」

 

「おっ、そうだな。もう晩飯だ」

 

「ホントウニソンケイスルヨ…ゴハンハカゾクトタベルノダナ」

 

「今度、みんなを連れて来ていいか⁇”家族とご飯”を食べたい」

 

「ア…アァ‼︎モチロンダ‼︎タノシミニシテイル‼︎」

 

「なら、私達もみんなで来ましょうか⁇」

 

「では、この私も‼︎」

 

三提督の意見が合う

 

トラックさんはあぁ見えて、案外物分かりの良い人だと分かった

 

「じゃあ、ごちそうさま‼︎」

 

「キヲツケテナ‼︎」

 

「バッカス‼︎浮気は此処だけにしろよ‼︎」

 

「分かってらぁ‼︎」

 

最後の最後まで、バッカスに突っ込む

 

「じゃあな、ル級さん‼︎ありがとう‼︎」

 

「マタコイヨ〜‼︎」




トラックさん…軍人気質なメタボ提督

当初は好戦派の提督だったが、偶然自身の船の補給の為に立ち寄ったスカイラグーンで平和の意味を知り、パパ達の傘下に入る

艦娘からは意外にも人気があり、実はチョコがけポテトを提案したのは彼だったりする



パラオちゃん…スカイラグーンの提督

元パラオ泊地の提督で、違う提督にパラオ泊地を乗っ取られ、島流しにされた所を横須賀が偶然保護

神経衰弱や軽い栄養失調が見られたが、命に別状は無く、ほとぼりが冷めるまで横須賀の離れで生活していた

元々そんなに明るく無く、賢明な女性だったが、ここに来るまでの生活で、何処かネジが一本抜けた性格になった

どこかの国の潜水艦の女の子がデカくなった訳ではないが、容姿は似ている

常にパレオを着ているが、別にパラオだけに〜という訳では無く、着心地が良いだけ

現在、彼女の提督時代の艦娘達は、戦争の無い場所で普通の女の子として生活している

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。