艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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40話 鷹のおさんぽ(3)

「物凄く高いお香になりますよ‼︎」

 

「あかしできる⁇」

 

「出来ますよ‼︎出来上がり次第、お届けしますよ⁇」

 

「おねがいします‼︎」

 

「分かりました‼︎」

 

明石は竜涎香を持ち、そのままどこかに行った

 

「ザラと話しましたか⁇」

 

「いや、まだだ。話せるのか⁇」

 

「今、各所を回っているはずですよ」

 

「ん〜…」

 

「どうした、たいほうよ」

 

武蔵の肩の上で、たいほうがムズムズしている

 

「ざらこわい」

 

「怖くないさ‼︎ザラはいい子だぞ⁇」

 

「たいほう、ろーまがいい」

 

「でもたいほう。挨拶はしないとな⁇」

 

「うん…」

 

どうもたいほうはザラを怖がっている

 

理由は何故かは分からないが、武蔵からくっついて離れない

 

そんなたいほうを尻目に、ザラに近付く

 

間近で見ると、良い所育ちのお嬢様っぽく見え、小柄な割に気品が漂う

 

「御機嫌よう‼︎大佐‼︎」

 

「おっと…」

 

何故か私の事を知っているザラ

 

「向こうで貴方の話を聞きました‼︎ヴェネチアを護って頂き、ありがとうございました‼︎」

 

ザラは金髪を揺らし、私に頭を下げた

 

「いや…俺は…」

 

イタリアの地名を言われると、やはり気が引ける

 

自身の産まれた国だと言う事もあるし、ローマの一件もある

 

…目元とかリットリオにソックリだ…

 

「この子は大佐の子ですか⁇」

 

「そう。たいほう⁇こんにちはは⁇」

 

「…こんにちは」

 

ザラと目を合わすが、すぐに武蔵に抱き着く

 

「さっきからずっとこんな調子なんだ…」

 

「けずられる」

 

「けずられ…あぁ‼︎たいほうちゃん、私の髪の毛、触ってみて⁇」

 

再びザラの方を向いたたいほうは、彼女の髪に触れた

 

「わぁ‼︎さらさら‼︎」

 

たいほうに笑顔が戻った

 

「でしょう⁉︎大丈夫よ‼︎」

 

「…皆目分からぬ」

 

「私、名前が名前で、子供達によく言われるんです”触り心地もザラザラなのか”って」

 

「ちょっと分かった」

 

つまりはこう言う事

 

子供達はザラと名前を聞き、触り心地もザラザラだと思い、近寄らないし、触りもしない

 

その誤解を無くすため、彼女は髪を触らせた

 

たいほうが”けずられる”と言ったのも、その為だ

 

「ざらのかみ、いいにおいするね」

 

「そう⁇」

 

「隊長、そろそろ帰りの船が…」

 

「もうそんな時間か…」

 

横須賀から言われ、時計を見るともうすぐ日暮れになる時間だった

 

「大佐。私は横須賀に配属になりました。いつでもお声掛けを‼︎」

 

「分かった。ありがとう、ザラ」

 

「こちらこそ‼︎」

 

ザラと別れ、船に乗る

 

船の中では、相変わらずたいほうは蟹のぬいぐるみで遊んでいた

 

「楽しかったか⁇」

 

「たのしかった‼︎またいこうね‼︎」

 

三人、船に揺られ、基地に戻る

 


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