艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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今回のお話で、とある艦娘がパパの艦隊に着任します

誰なのかは、見てからのお楽しみで


5話 籠の中の雛鳥(4)

「はい」

 

縛られていた縄を解き、彼を自由にした

 

「申し訳ありません…この恩は必ず」

 

「そこでしばらく捕まったフリしててくれ。もう一人助けてから戻ってくる」

 

「分かりました」

 

「あぁ、あの時の混線は貴方か」

 

「えぇ…いきなり拿捕されて、気が付いたらここにいました」

 

「仇は討ってやる」

 

彼は申し訳なさそうに一礼した

 

「さて…」

 

ライフルに弾を装填しながら、甲板に上がった

 

「誰だ︎」

 

答える前に、銃声が響いた

 

続け様に、一発、二発

 

目の前にいたタンカーの乗組員が一瞬でその場に倒れた

 

「大丈夫か⁇」

 

マリアの口紐と手に巻かれた縄を解き、手を差し出した

 

《ドウして来タ…ホウってオケバヨカったノニ》

 

「マリアは私の”艦娘”だ。見捨てたりしない」

 

《…コワかった》

 

私の顔を見て安堵したのか、マリアは大粒の涙を流し始めた

 

「帰ろう、たいほうが待ってる」

 

《…うんっ》

 

マリアを立ち上がらせた時、ふと顔にヒビがあるのに気が付いた

 

「美人が台無しだ。帰って入渠だな」

 

《パパは優しいナ…ウッ︎》

 

ヒビがある場所をおさえ、マリアはよろめいた

 

「ほら、もう少しだ」

 

《コレが…愛、か》

 

「知らないなら、教えてやる」

 

《なら…ナガい付き合イになるな…》

 

「ふっ…グッ︎」

 

背中に激痛が走る

 

投げナイフか…

 

「逃がすかよ…せっかくの大金掴むチャンスだ」

 

仕留めが甘かったか…

 

《ウソだ…シヌな︎》

 

「来い︎一人ぐらい逃げる時間を稼いでやる︎」

 

《あ…》

 

マリアの目から、涙が流れる

 

今度は辛い涙ではなく

 

嬉しい涙だった

 

顔のヒビが割れ、中から本来の顔が見えた

 

「しねぇぇぇぇぇえぇぇえぇ︎」

 

彼は撃たれた足を庇いながら、此方にライフルを構え、引き金を引いた

 

ここまでか…

 

まぁいいさ…

 

今まで山ほど人を殺して来た

 

因果応報か…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ…??」

 

当たるハズの銃弾が無い

 

痛くもない

 

「提督よ…死なれては困る」

 

「あ…」

 

褐色の肌にサラシを巻いた女性が、腕で銃弾を防いでいた

 

「少し眠って貰うぞ︎」

 

彼女は一瞬で黒いボディースーツの男に近付き、一撃で気絶させた

 

「マリア…なのか⁇」

 

「”元”マリアだな。私は戦艦武蔵。提督の愛、確かに受け取った」

 

彼女はとても勇ましく見えた

 

先程まで、飼い主の手を噛むと自分で言っていたが、今度は噛まれたらオシャカになりそうだな…

 

「横須賀さんが来たな。私達は基地に帰ろう」

 

「あ…武蔵…」

 

「何だ⁇長居は無用だ」

 

「抱えてくれたら…嬉しい」

 

「おっと、そうだったな。よいしょ。提督は軽いな︎ちゃんと食ってるのか︎」

 

「ちゃんと食べるから…助けて」

 

武蔵の抱え方は少し変だ

 

私の顔を胸に寄せ、斜めに持ったまま海に飛び込もうとしていた

 

「目を閉じろ。ほんの少し海に潜るかもしれん」

 

「…いいぞ」

 

彼女に言われるがまま、目を閉じた

 

「では…」

 

「⁇」

 

唇に柔らかい物が当たったと気付いた時には、冷たい海の中だった

 

「ぷは…大丈夫か、提督よ︎」

 

「大丈夫…」

 

「今のは御礼だ」

 

「御礼⁇」

 

「そうだ。分け隔てなく愛してくれて、ありがとうの御礼だ」

 

「ふっ…」

 

意識が遠のく…

 

海に入った時に、血が出過ぎたのか…

 

「提督︎!!提督よ︎!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

「へ〜、彼奴ら犯罪集団だったのか〜」

 

「お手柄ですよ、大佐」

 

見舞いに来た横須賀君が、新聞やら勲章やら、色々持って来た

 

「それに何より…」

 

「何だ」

 

横須賀君が武蔵を見ると、鋭い眼光で睨み返す

 

「愛…ですか」

 

「愛はいいぞ⁇」

 

「実は私、ケッコンを致しまして…」

 

武蔵と同じタイミングでお茶を吹いた

 

「「はぁ︎!?」」

 

確かに横須賀君の薬指には指環が煌めいていた

 

「それはその…艦娘と、なのか⁇」

 

「えぇ、明石とです」

 

「私も頑張れば、提督と出来るのか︎!?」

 

「凄く時間はかかるけど、絶対不可能じゃありません」

 

「毎日遠征に行って、お手伝いをしたらなれるか︎!?」

 

「そ…そうだね」

 

「よし、こうしてはおられん︎!!たいほうと花嫁修行だ︎!!」

 

「はいはい、行ってらっしゃい」

 

武蔵はキラキラしたまま、部屋を出て行った

 

思い立ったが吉日を絵に描いたようだな、武蔵は…

 

「島風は元気か⁇」

 

「えぇ、勿論。これからは遠征に行かせるようにしています」

 

「良かった…」

 

「では、しっかりと療養して下さい」

 

「すまないな、忙しいのに」

 

「貴方のためですから」

 

横須賀君は微笑みながら部屋を後にした

 

 

 

 

深海凄艦タ級”マリア”が艦隊の指揮から抜けました

 

戦艦”武蔵”が艦隊の指揮下に入ります︎!!




武蔵…面倒見の良いみんなの母親役

マリアの本当の姿

たいほうをよく抱っこしていたり、提督の精神的なケアも上手

提督の傍にいるため、花嫁修業真っ最中




予想どうりでしたか??

それとも、少し違いましたか??

ではでは、次のお話へ

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