艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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特別編 ドイツの魔女(3)

「見返す…私に出来るかな⁇」

 

「お前なら出来る‼︎俺が鍛えてやる‼︎」

 

「…うん‼︎分かった‼︎やってみるよ‼︎」

 

それから数日、俺とプリンツの特訓が始まった

 

鹿島としおいも特訓に加わり、プリンツはみるみる内に成長して行った

 

「ぷはぁ‼︎鹿島上手いね‼︎」

 

水中からしおいが出て来た

 

「レイの造ったソナーと爆雷、とっても高性能なの‼︎」

 

「ナマコとかウニ取れたよ」

 

岸にペチャペチャと音を立てて、海産物が投げられていく

 

「ファイヤァ‼︎」

 

しおいの後ろから聞こえて来た砲撃音が、二人の耳を突く

 

「どれどれ…」

 

鹿島が双眼鏡を覗くと、的を四つ同時に撃ち抜くプリンツの姿があった

 

「見せて〜‼︎ね〜‼︎」

 

いつの間にか海から上がり、鹿島の服を引っ張るしおい

 

「はいっ」

 

鹿島から双眼鏡を受け取り、二人を見る

 

「プリンツも凄いけど、パ…スティングレイも凄いね‼︎」

 

「パ⁇」

 

「何でもないよぅ‼︎はい、ありがと‼︎」

 

双眼鏡を返したしおいは、先ほど上げた海産物をネットに入れ、そのまま基地に帰って行った

 

「でもまぁ…」

 

再び二人を見る

 

「あの二人なら、どうにかなるのかしら…ね⁇」

 

 

 

数日後…横須賀で演習が開かれた

 

ワンコ、ラバウル、そして、柱島基地が残った

 

俺達が当たるのは、柱島基地だ

 

「あの…」

 

「あいつだな」

 

プリンツが元いたのは、柱島基地

 

「やるだけの事はやって来い。武蔵としおい、たいほうやローマだっている。フォローは万全だ」

 

「ん…分かった‼︎頑張るよ、私‼︎」

 

意気揚々とプリンツが海原に出た

 

「ふっ…捨て駒に何が出来る」

 

俺の横に居たのは、柱島の提督だ

 

「ま、せいぜい足掻いて…」

 

柱島の提督が何か言おうとした瞬間、砲撃音が四回連続で響いた

 

プリンツの連撃だ

 

プリンツは性能のバランスが良く、クセの少ない重巡洋艦だ

 

そんな彼女に、あえて魚雷を装備させず”連撃”と呼ばれる二回攻撃を短期間で叩き込んだ

 

当たり所が良ければ、戦艦や正規空母も撃沈する事が可能だ

 

「戦艦比叡、撃沈判定‼︎」

 

「捨て犬が何を…」

 

柱島の提督は歯を食い縛っていた

 

柱島の艦隊が、みるみる内に少なくなる

 

6隻居たのに、もう一隻しかいない

 

武蔵が二隻

 

たいほうも二隻

 

そして、プリンツが一隻

 

しおいとローマは敵の足止めをし、それぞれが花道の準備を施していた

 

残っているのは、敵の旗艦”加古改二”のみ

 

「ふっふっふ、プリンツ、強くなったねぇ…」

 

「良いアドミラルさんに当たったの。私は生まれ変わった‼︎」

 

「これ、何だか分かる⁇」

 

加古の体には、Fumoレーダーが装備されている

 

「いらない。私のアドミラルさんは、もっと良いのを造ってくれる」

 

「その減らず口がいつまで続くか…なぁ‼︎」

 

加古が砲弾を放つ

 

プリンツはギリギリまで引きつけ、着弾寸前に後退、砲撃を回避した

 

「ファイヤァ‼︎」

 

彼女は一瞬の隙を見逃さなかった

 

プリンツの連撃が唸り、火柱が上がった

 

「そこまで‼︎勝者、旗艦武蔵隊‼︎」

 

「やった…やったよ‼︎」

 

 

 

「よしっ‼︎」

 

観戦していた手に力がこもる

 

援護はあれど、同等戦力に対し、この戦果は十二分だ

 

「何故だ…何故負けた…」

 

柱島の提督が膝から落ちた

 

「プリンツの力を見極められなかったのが、お前の敗因だ」

 

「スティングレイさんっ‼︎」

 

横からプリンツが抱き着いて来た

 

余程嬉しかったみたいだ

 

「よしよし‼︎よく頑張ったな‼︎間宮でケーキ食べような‼︎」

 

「やった‼︎」

 

プリンツとしおいは決勝には出ない

 

代わりに、雲龍とはまかぜが出る事になっている

 

俺達はこれで充分だった

 

「パ…スティングレイ‼︎私も活躍した⁉︎」

 

相変わらず何か言いたそうなしおいが、俺の服の裾を軽く握っていた

 

「当たり前だ‼︎お前も来い。ケーキ食べよう」

 

「やったね‼︎」

 

「スティングレイ、後は任せろ。二人共、よく頑張ったな‼︎」

 

「ケーキ食べるんです‼︎」

 

「私、栗のケーキ食べてみたい‼︎」

 

「ゆっくりしておいで‼︎」

 

二人を連れ、間宮に向かう

 

「パ…」

 

「ん⁇」

 

「な、何でもない…」

 

最近、しおいが”パ”と言う事が多い

 

「スティングレイさんは、しおいのパパ⁇」

 

「そうだ。俺が造っ…そう言う事かよ‼︎」

 

あれ程鹿島に言われていたのに、プリンツに言われてようやく気付いた

 

「あ〜…でも、パパが二人居たら、どっちか迷うね」


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