艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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38話 気付かない求愛(4)

一瞬スティングレイが怯む

 

凄い臭いだ

 

鼻を塞ぎ、執務室の奥を見ると何人かが固まって座っていた

 

「隊長、こりゃあ”アヘン”だ」

 

「麻薬かよ‼︎」

 

「早くしないとこっちがまずい‼︎とにかく換気だ‼︎」

 

窓に向かい、開けようとするが、鍵が掛かっているのか中々開かない

 

「構わん‼︎撃て‼︎」

 

窓ガラスに向かって、スティングレイが数発銃弾を放った

 

確か、赤が散弾だったな

 

ライフルに赤い弾を入れ、少し距離を置いて窓に放った

 

「ま、こんなモンだろ」

 

「おい、大丈夫か⁉︎」

 

固まっていた数人の内1人の頬を叩く

 

「隊長…」

 

別の人の首に手を置いたスティングレイが、首を横に降る

 

「ここの提督を叩く…手伝ってくれるか⁇」

 

「分かった…今俺も同じ事考えてた所だ…」

 

二人の呼吸が荒くなる

 

アヘンの影響ではなく、心の底から湧き上がる怒りの所為だ

 

「あの…」

 

一人が目を覚ました

 

「大丈夫か⁉︎」

 

「ここの地下に…何人か閉じ込められ…助け…」

 

「分かった。君の名前は⁇」

 

「飛鷹…です」

 

そう言い残し、彼女は息を引き取った

 

彼女の目を伏せ、二人して手を合わせた後、地下を目指した

 

「スティングレイ、ナイフあるか⁇」

 

「無い‼︎」

 

「ここから拝借しよう」

 

調理室で使えそうな近接武器を探す

 

「お前、何でアヘンと分かった⁇」

 

「麻薬の実験をした事があるんだ。その時に…おっ、こいつがいい‼︎」

 

スティングレイが手にしたのは、鉈の様な包丁

 

「隊長、もう一本あるからここに置いとくぜ」

 

「分かった。俺もそれにする」

 

「行こう。もう少しだ」

 

調理室を出て階段を下ると、風景が一風変わり、軍事っぽくなった

 

「ま、あれだ。アヘンやら麻薬はやるもんじゃねぇ。あんなもんやる位なら、俺は焼肉の方が良い」

 

「今度奢ってやる」

 

「やったぜ‼︎」

 

アホ丸出しで会話しているが、これも作戦

 

「やきにく…⁇」

 

二人が狙っていたのはコレだ

 

二人の会話に反応した人物を探し出し、救出

 

生存の可能性が高い奴から救出するには、これが手っ取り早かった

 

出来るなら全員救いたいが、牢の鍵が硬く、ピストルで開けるにも弾に限りがあり、中々開けられない

 

「おい、大丈夫か⁉︎今開けてやる‼︎」

 

ピストルで鍵を撃ち抜き、中の人を牢の外に出した

 

「名前は⁇」

 

「ふみちゅき…」

 

「ちょっくら失礼…」

 

スティングレイはふみちゅきの腕を見た

 

「最近、駆逐の女の子が来なかったか⁉︎」

 

「きたよ。いま、おくにいるの」

 

「隊長…」

 

スティングレイは首を横に振った

 

首を横に振ったという事は、生存の確率が低い


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