艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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38話 気付かない求愛(2)

「んじゃ、行くか」

 

「横須賀の自信作とやらを見に行きますか‼︎ごちそうさん‼︎」

 

「またお越し下さい‼︎」

 

間宮を出ると、霞が手を出して来た

 

「て、手を繋ぎなさい…」

 

「ほい」

 

スティングレイが手を取る

 

「あんたじゃないわよ‼︎」

 

「はいは〜い、レッツゴー‼︎」

 

文句言いながらも、満更でも無い霞

 

スティングレイは楽しそうだ

 

工廠に着くと、新型の戦闘機が格納庫に鎮座していた

 

「か〜っ‼︎相変わらず横須賀の軍事力は凄ぇな〜‼︎」

 

「おい、ラプターがあるぞ‼︎」

 

「おぉ〜‼︎」

 

霞ほったらかしで興奮する二人

 

「何よ…結局一人じゃない…」

 

霞は口が悪い為か、一人になる事が多い

 

だが本人はかなりの寂しがり屋だ

 

現に間宮の時だって、私の服の裾を掴んで離さない様にしていた

 

「よいしょ…霞、見えるか⁇」

 

「へっ⁉︎ちょ、高い‼︎」

 

考え事をしていたら、いつの間にかスティングレイにハシゴ車に乗せられていた

 

「コックピットが見えるか⁇」

 

「見えるわ。戦闘機は複雑な操作よね…」

 

「そこが俺達の仕事場だ」

 

「パイロットなの⁇」

 

「そうさ。俺は提督じゃない」

 

「ふ〜ん…」

 

スティングレイは霞の頭を撫でながら言った

 

「お前達を守る為に、パイロットになった」

 

「ふ〜ん…」

 

「ま、現実は護られっぱなしだがな‼︎はっはっは‼︎」

 

「…バカ」

 

霞は顔を真っ赤にして俯いた

 

そんなドストレートな事、言われた事が無かったからだ

 

「あ〜‼︎またバカって言った〜‼︎そろそろ泣くよ⁉︎泣いちゃうよ⁉︎」

 

「泣きなさいよ。ほら…ほら‼︎」

 

霞にはSの気があるのか、スティングレイが泣くぞと言うと、嬉しそうな顔をした

 

「隊長‼︎霞がいじめる‼︎」

 

「はっはっは‼︎遊戯場に行こうか」

 

「うん…」

 

次は私が手を繋ぐ

 

段々霞が大人しくなって来た

 

本当はこの子、こうして誰かと居たいだけなんじゃないのか⁇

 

遊戯場でスマートボールをしたり、射撃をしていても案外楽しそうにしているし、スティングレイとも打ち解けて来た様に見える

 

「楽しかった〜‼︎霞、ほらこれ」

 

スティングレイが出したのは、クマのキーホルダー

 

「…くれるの⁇」

 

「あぁ。お守代わりだ。お前が別の場所に行っても、上手くやって行けるお守だ」

 

「ありがと…」

 

「私からはこれだ」

 

私が出したのは、ウサギのキーホルダー

 

「何かあったら、いつでも助けに行ってやる。約束だ」

 

「本当に助けてくれるんでしょうね…」

 

「あったり前だ‼︎俺達を誰と思ってるんだよ‼︎」

 

「私、頑張ってみる…‼︎」

 

ようやく笑顔を見せてくれた

 

「いい笑顔だ。その調子だ」

 

「さ、横須賀の所に行こう」

 

執務室に戻り、多少はマシになった霞を横須賀に返した

 

「じゃな〜」

 

「また来る」

 

「ありがとう、お二人さん」

 

 

 

 

 

 

 

事件が起きたのは、それから一週間後だった


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