艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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番外編ばっかで申し訳ありません

その内本編も更新します



横須賀からの要請で、試作機のテストフライトを頼まれたスティングレイ

だが、補給ミスがあり、途中民間の補給基地に着陸する事になる

そこで、彼に憧れる女性と出会う


番外編 試作機と雷鳥(1)

《燃料が残り少ないです》

 

「おい‼︎」

 

 

 

今日は横須賀で試作の新型戦闘機のテストフライトがあり、俺がパイロットに選ばれた

 

「とあるゲームの機体をモデルに造った機体です。可変前進翼が目玉で、空母に艦載もできます」

 

試作段階の為、地上からの離陸

 

そして、高機動の無人UAV二機との戦闘

 

横須賀から離れた場所で行われ、いざいざ帰投しようとした時にこのアラートだ

 

「参ったな…」

 

横須賀に文句の一つ言ってやろうと思った時、別の通信が入った

 

《近くに民間の簡易空港があるよ》

 

それは、近場の空域で哨戒に当たっているフィリップからの通信だった

 

「距離は」

 

《進路そのまま。20km前進》

 

「それ位なら持つ」

 

《僕も行くよ‼︎》

 

「待ってるぞ」

 

最小限のエンジンを吹かし、言われた場所を目指す

 

「あれか」

 

眼下に滑走路が見えた

 

「こちら、横須賀基地飛行部隊。燃料不足の為、緊急着陸を求む」

 

所属が分からないので、適当に基地の名前を言った

 

《了解です‼︎滑走路はガラ空きですよ‼︎》

 

間の抜けたと言うか、気が締まって無いと言うか…

 

とにかく元気な女性の声が聞こえた

 

「あぁ…くそっ…うるさいアラートだな‼︎」

 

着陸寸前にけたたましく鳴るアラート

 

それを無視し、何とか着陸する

 

「え〜ぇ…着陸に難ありだな」

 

《スティングレイ‼︎あんた何してんのよ‼︎》

 

着陸した途端に横須賀から無線が入った

 

「こっちのセリフだクソ野郎‼︎何で燃料半分しか入ってねぇんだよ‼︎俺は特攻隊か‼︎」

 

《…》

 

ちょっと言い過ぎたか⁇

 

《今確認したわ…ごめんなさい…リッターを間違えてた》

 

「このド低脳が‼︎」

 

「すみませ〜ん‼︎」

 

キャノピーをコンコンと叩く、眼鏡を掛けた女性が一人

 

キャノピーを開け、事情を話す

 

「すまん。試験飛行中に燃料がからっケツになった」

 

「補給しますね」

 

《スティングレイ。燃料は”ハイオク満タン”って頼むのよ》

 

「砂糖水でも入れてやろうか‼︎」

 

《殺すわよ‼︎高いのよその機体‼︎あんたが一生かか…》

 

うるさいので無線を切った

 

「ハイオク満タンで。後もう一機、護衛機が来る」

 

「畏まりました。中で待ってて下さい‼︎」

 

言われた通り、建物の中に入った

 

中には自販機が一個あり、何故かランプが点灯している

 

外を見ると、あの女性と妖精が数人、機体をハンガーに運んでいる

 

視線を自販機に戻し、コーラのボタンを押してみた

 

「おっ」

 

コップが出てきて、中にコーラが注がれた

 

《スティングレイ》

 

耳に掛けた無線に通信が入った

 

「フィリップか⁉︎今着陸してコーラ飲んでる」

 

《美味しい⁇》

 

「炭酸が強いが、まぁまぁいけるな」

 

《僕も着陸するね》

 

数分後、フィリップも着陸した

 

フィリップのコックピットを見た妖精が、何人か滑り落ちている

 

あ、そうか。今日はあいつ無人か‼︎

 

…もう少しビビらせるか

 

妖精が数人、ビクビクしながら再びフィリップのコックピットを開けた

 

「わっ‼︎」

 

ボトボトと妖精が地べたに落ちて行く

 

「ははは‼︎」

 

《スティングレイ‼︎》

 

「ははは‼︎すまんすまん‼︎」

 

椅子に座り、コーラを喉に流していると、受付の様な場所の壁に数枚、ポスターが貼ってあるのに気が付いた

 

「おぉ〜」

 

俺は、傭兵時代に広告塔になった

 

その時、数枚のポスターが印刷され、色んな場所に貼られた

 

その内の数枚が壁に貼られていた

 

「今補給してますから、もう少しお待ち下さいね」

 

「すまんね」

 

コーラを飲みながら、視線をポスターから彼女に移す

 

モジャモジャの黒髪に眼鏡

 

タンクトップの様なブラジャー一枚…しかも巨乳

 

下はGパン

 

「なぁ、このポスター…」

 

「これですか⁉︎」

 

ポスターの話をした途端、彼女の目が輝いた

 

「凄い人なんですよ‼︎世界を股にかけたパイロットなんですよ‼︎」

 

「名前はなんて言うんだ⁇」

 

「マーカス・スティングレイです‼︎一度会ってみたいな〜‼︎」

 

「そんなに凄いのか⁇」

 

「えぇ‼︎敵をバッサバッサと落として、基地に戻って来る‼︎それにイケメンですしね‼︎」

 

「へ〜…凄い奴もいるもんだな…」

 

知らないフリをし、彼女の様子を伺う

 

《スティングレイ‼︎》

 

「どうした」

 

《敵機だ‼︎大分遠いけど、高速でこっちに向かってる‼︎》

 

「数は」

 

《3‼︎》

 

「了解した。補給が終わり次第離陸する」

 

”終わったで〜”

 

「終わった直後で悪いが、妖精はフィリップ、あんたは俺の機体に乗れ‼︎」

 

「い、いきなりなんですか⁉︎」

 

「話は後だ‼︎」

 

「ちょ、ちょっと‼︎」

 

彼女の手を引き、機体に向かう

 

「妖精は何匹いる⁇」

 

「えと…五人です‼︎」

 

「フィリップ、五人乗せたか⁉︎」

 

《オッケー‼︎五人乗ってる‼︎》

 

「離陸だ‼︎急げ‼︎」

 

フィリップが緊急発進する

 

「よし、俺達も出るぞ‼︎」

 

「あ…ポスターが…」

 

「諦めろ‼︎」

 

「嫌です‼︎あの人は…恩人なんです‼︎」

 

「んなもん後でくれてやる‼︎」

 

無理矢理機体を発進させる

 

「生きたきゃ…しっかり掴まってろ‼︎」

 

「わっ‼︎」

 

初期加速に難ありと言おうとしたが、コンセプトは艦載機だったな

 

「敵機確認、迎撃に移行」

 

「あれは⁉︎」

 

「深海側の艦載機だ」

 

《遅れて爆撃機が来るよ‼︎》

 

「ったく…フィリップ、爆撃機を頼んだ‼︎」

 

《オッケー‼︎》

 

フィリップが掠めて行く

 

微かに見える爆撃機に向かって、エンジンを吹かす

 

「死にたくなけりゃ、しっかり掴まってろ‼︎」

 

「は、はいっ‼︎」

 

《おい‼︎横須賀‼︎こいつの武装はどう使う‼︎》

 

《最大4機まで多重ロックが可能な高性能近接信管の…》

 

「三行で言え‼︎」

 

《ロックオン‼︎撃つ‼︎当たる‼︎分かった⁉︎》

 

「大体な‼︎ロックオン‼︎」

 

「わ〜…」

 

無線越しに喧嘩しながら武装の解説をする、女性のオペレーター

 

そして、適当な説明で理解する適応力を持つ彼

 

後部座席に乗った彼女は、ますます彼に興味を持った

 

「よっしゃ‼︎敵戦闘機全滅‼︎」

 

《こっちもオッケーだよ‼︎》

 

「よし…」

 

《こちら、ラバウル航空戦隊。横須賀の航空機、護衛につく》

 

タイミング良く、ラバウルさん達の部隊が迎えに来た

 

《補給基地は放棄せよとのお達しを貰った。あそこは一般人には危険過ぎる》

 

一度ため息を吐き、後部座席に通信を繋げた

 

「モジャモジャ。すまんが、基地は諦めてくれ」

 

「モジャモジャって、私ですか⁉︎」

 

「そうだ。あそこは放棄せよとのお達しだ」

 

「…ポスター」

 

「約束は守るさ」

 

「約束ですからね‼︎」

 

「あぁ」

 

重い雰囲気の彼女を乗せたまま、俺達は横須賀に着いた

 

「隊長に宜しくな」

 

「ありがとう」

 

ラバウルさん達の部隊は、その足で自身の基地に帰って行った

 

「わ〜、色んな設備がある…」

 

「とにかく、司令を一発殴りに行こう」

 

横須賀のいる部屋のドアを破壊する勢いで蹴り飛ばす

 

「どういうつもりかな〜⁉︎」

 

「すまない…謝るしかない」

 

「けっ‼︎乳もデカけりゃ、態度もデカイな‼︎」

 

「す、好きにすればいい‼︎こんな私の体で良ければ好きにすればいい‼︎」

 

「うわ…」

 

床に寝転がって大の字になる横須賀を見て、悪寒が走った

 

「ま、まぁ、今日は突く位で勘弁してやる」

 

横須賀の頬を人差し指で突く

 

「いだだだだだだだ‼︎」

 

か、噛まれただと⁉︎

 

「調子に乗ってんじゃないわよ‼︎」

 

「噛むこたぁねぇだろ‼︎」

 

「ゴメンなさいね、こんなアホパイロットのお供で」

 

「あ…助けて頂いて、ありがとうございます」

 

「ま、とにかくあんたも彼女も検査に回って。話はそれから」

 

「じゃあね〜」

 

逃げようとする俺に対し、横須賀は無言で銃を撃った

 

「あ°っ‼︎」

 

「心配しないで、麻酔銃よ。これでちょっとは静かになるわ」

 

「何か最近、撃たれる回数ふえ…て…」

 

一瞬で眠気が来る

 

「ゴメンなさいね。彼、いつもこうなの」

 

「タフなんですね…あはは」

 

「後は私に任せて、検査を受けて下さい。その後食事にしましょう」

 

「はい」

 

彼女が出た後、横須賀は床に転がっているスティングレイの服を脱がせた

 

やましい事をする訳ではない

 

れっきとした検査だ

 

「ん〜…」

 

 

 

 

「んが…はっ‼︎」

 

「起きた⁇」

 

目が覚めると、横須賀の膝の上だった

 

「て、テメェ‼︎また麻酔銃撃ったろ‼︎」

 

「今日はありがと」

 

「え⁉︎あ…おぅ…」

 

時々見せる、横須賀のデレ顔

 

ホント、いつもこうだったら楽なのになぁ…

 

「あの子、艦娘だったわ」

 

「あ、そう」

 

「驚かないの⁇」

 

「そんな事より、俺のポスター残ってるか⁇」

 

「えぇ、あるわ」

 

「ワンセットくれ。今日はそれでチャラだ」

 

「分かったわ」

 

膝枕から立ち上がり、横須賀の元に寄る

 

「ねぇ、レイ」

 

「んあ⁇」

 

「私、隊長が好き」

 

「知ってるよ、んな事」

 

「でも何だろ…あんたといたら、素直になれる」

 

「あっそ」

 

「レイは…ホントに鹿島が好き⁇」

 

「うん」

 

素っ気ない態度で返す

 

こういった場合、大体後に来るのはパンチだ

 

「もっと…早く素直になれば良かったなぁ…」

 

「お前は今のままでいい。ビシッと締まった、カッコイイ提督でいろ」

 

「何か、あんたに正論言われると腹立つわね…」

 

「俺は元々正論しか言わん」

 

「もぅ…はい、これ」

 

手渡された3つの巻物

 

あの基地に飾ってあったポスターだ

 

「あ、そうだ。あの娘、あんたの部隊に配属したからね」

 

「隊長には言ったか⁇」

 

「えぇ、二つ返事だったわ」

 

「ならいい。じゃあな」

 

「うん」

 

スティングレイが部屋から出た

 

急に素っ気無くなる

 

この高鳴りは何⁇

 

鹿島が彼に着いてから、二人を見るといつもこう

 

「はぁ…」

 

 

 

「いた‼︎おい、モジャモ…」

 

「提督‼︎探したんですよ⁉︎」

 

「お…おぅ…」

 

モジャモジャの髪は綺麗に整えられ、巫女服に着替えていた

 

「戦艦”霧島”です。隠しててゴメンなさい…」

 

「いいさ。ほら、これ」

 

彼女にポスターを手渡した

 

「わぁ‼︎本当に残ってたんですね‼︎」

 

「そんなにそいつが好きか⁇」

 

「えぇ‼︎住んでた街を解放してくれたパイロットさんなんですよ‼︎」

 

「そっか…立派だな、そいつは」

 

「いた〜‼︎」

 

鹿島の声だ

 

「もう、途中でロストするから心配しましたよ」

 

「横須賀に言ってくれ」

 

「あ、聞きましたよ‼︎新しい子が配属されるって」

 

「この子だ。戦艦霧島」

 

「私は練習巡洋艦の鹿島です」

 

「霧島です。あ、そう言えば、貴方の名前をまだ…」

 

「そこに書いてあるだろ⁇」

 

俺はポスターを指差した

 

「え⁉︎も、もしかして‼︎」

 

「マーカス・スティングレイだ。宜しく、霧島」

 

「嘘…凄いわ‼︎」

 

 

 

 

 

「てな訳で、艦隊に新しい子が加わりました」

 

「きーしま」

 

「そうだ。たいほうは物覚えが早いな。偉いぞ」

 

「むさし、ろーま、きーしま。みんなめがね」


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