艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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お久し振りです

苺乙女です。

毎日寒い日が続き、作者は寝込む一方です

続きが書けず、本当に申し訳ありません

せめてもの償いで、一話だけ番外編を書いて置きます

たいほうがちょくちょく言っていた、鹿島とスティングレイの夜のお話しです


番外編 夜に鳴く二羽の鳥

「ん〜…」

 

子供部屋で一人、たいほうが目を覚ます

 

横では、れーべとまっくすが眠っているが、気付く気配は無い

 

時間は深夜の一時

 

こんな時は、いつも決まって台所に行く

 

大体武蔵かローマが起きているので、どちらかにもう一度眠らせて貰う

 

「ん‼︎…ぐ…い‼︎…っと‼︎」

 

スティングレイの部屋から、何やら物音がする

 

たいほうはそ〜っと、ドアを開けた

 

「スティングレイ、鹿島でもっと練習して下さいねっ‼︎」

 

「あ…あぁ…」

 

スティングレイの上に鹿島が乗って、上下している

 

「あ…」

 

目の前でとんでもない事が行われているのに目もくれず、たいほうは近くにあった苺のマークが書いてある入れ物が気になった

 

二人は入って来たたいほうに気付かない

 

入れ物を手に取り、床に座って蓋を開けた

 

「わぁ」

 

苺のいい匂いが、たいほうの鼻を突く

 

たいほうは中に入っていた液体を、とりあえず手に出した

 

「ぬるぬる」

 

「うわぁ‼︎たいほう⁉︎いつからいた⁉︎」

 

ようやくスティングレイがたいほうの存在に気付く

 

「ぬるぬる」

 

手に付いたローションをスティングレイに見せる

 

「飲むならこっちにしましょう⁇ねっ⁇」

 

鹿島は冷蔵庫から、オレンジジュースの瓶を出し、たいほうに渡した

 

「ありがとう」

 

床に座ったまま、たいほうはオレンジジュースを飲む

 

「美味いか⁇」

 

「おいしい‼︎」

 

「こっちにおいで‼︎」

 

鹿島の言うがまま、たいほうは彼女の膝の上に座った

 

「私達に娘が居たら、これ位ですかね⁇」

 

「娘ねぇ…」

 

スティングレイは、一人の女の子の事を思い出す

 

「かしま」

 

「ん⁇」

 

「なんでかしまは、すてぃんぐれいのうえでうごいてたの⁇」

 

「え⁉︎いや⁉︎その…」

 

「すてぃんぐれいきらい⁇」

 

たいほうから見ると、鹿島はスティングレイをいじめている様に見えた

 

「嫌いじゃないですよ。大好きです。好きだからするんです」

 

「たいほうもする」

 

好奇心旺盛なたいほうの言葉を聞いて、二人が焦る

 

「たいほうにはまだ早いな‼︎」

 

「そ、そうですよ‼︎さっ、たいほうちゃん。飲んだらお布団に…」

 

たいほうの手の瓶の中身は既に空

 

やっぱり眠たかったのか、鹿島の膝の上で眠ってしまっていた

 

「ちょっと寝かせて来ますね」

 

「すまんな…」

 

とは言え、部屋は隣の隣なので、鹿島はすぐに帰って来た

 

「うふふっ…バレちゃいましたね」

 

「いいんじゃないか⁇隊長も知ってるし…」

 

「…スティングレイは、子供…欲しくないですか⁇」

 

「…」

 

それを聞かれると、スティングレイはやはり黙り込む

 

「まさか、隠し子でも居るんじゃないですか⁇うふふっ‼︎」

 

「いいいい居る訳ななないだろ‼︎」

 

余りにも焦るスティングレイを、鹿島はジト目で見る

 

「本当⁇」

 

「…」

 

「答えて下さい‼︎鹿島も怒りますよ⁉︎」

 

「分かった分かった‼︎…仕方ない」

 

問い詰められ、致し方無くスティングレイは口を開いた

 

「隠し子っていうか、俺が造ったんだよ。一人」

 

「ほぉ…」

 

「そいつは無人の潜水艦でな。艦載機も載せる事が出来た。水中ならともかく、万が一に備えて、水上での戦闘も考慮した、最強の潜水艦だった。ましてや、犠牲者も出ない」

 

「あぁ‼︎そう言えばスティングレイはスパ…」

 

咄嗟に鹿島の口を塞いだ

 

「次の”イ”の文字を言ったら叩くぞ」

 

「あはは…それで⁉︎」

 

「敵に鹵獲されて、自分の手で撃沈した…」

 

「…」

 

「んで、深海棲艦になって帰って来た」

 

「ごめんなさい私、辛い話を…」

 

「じゃあ、俺からの問題だ。今の話を聞いて、一人、心当たりのある艦娘がいないか⁇」

 

「潜水艦…艦載機…しおいちゃんですか⁇」

 

「そう。俺の無人潜水艦は、形を変えて、俺の元に帰って来た」

 

「なるほど…それで”子供”って単語に反応したんですね…」

 

「そう言う事。俺にとっちゃ、あいつが娘さ」

 

「もっと、しおいちゃんも可愛がらないと、ですね」

 

「たいほうも他の奴等も同じ様にな」

 

「えぇ‼︎」

 

その後、しばらくして二人は目を閉じた

 

 

 

 

次の日の朝…

 

「パパ〜」

 

執務室で煙草を吸っていた隊長の膝の上に、たいほうがいた

 

「どうした⁇」

 

「きのうね、かしまがすきなひとにすることおしえてくれたよ‼︎」

 

「どんな事だ⁇」

 

「よこになって⁇」

 

隊長は、言われるがまま椅子を倒して横になった

 

たいほうは隊長の下腹部辺りに座っている

 

「いくよ」

 

「お、おぅ…」

 

たいほうは隊長の上で上下運動を始めた‼︎

 

「待て待て待て‼︎」

 

「いや⁇」

 

「嫌じゃない‼︎まだ早い‼︎」

 

「かしまはすてぃんぐれいにしてたよ⁇すきだからするんだって」

 

「もう少し、大きくなってからだな」

 

「あかつきみたいに、れでぃになってから⁇」

 

「そうだ。そうしたらもっと沢山、人の愛し方も分かってくる」

 

「あ‼︎てんとうむし‼︎」

 

窓にくっ付いていたてんとう虫を見つけ、たいほうは窓越しに突き始めた

 

窓の外では、スティングレイと鹿島が歩いている

 

何故かとても嬉しそうだ

 

二人とも、互いの間に出来た空間に首を下げて話している

 

「あ…」

 

真ん中に居たのはしおいだ

 

二人に挟まれ、しおいも嬉しそうだ

 

「すてぃんぐれい、おとうさんみたいだね」

 

「鹿島はお母さんか⁇」

 

「うん」

 

たいほうは、足らない身長で必死に窓の外を眺めている

 

「たいほうは、お母さんが欲しいか⁇」

 

「むさしがいるよ‼︎」

 

「あぁ…はっはっは‼︎そうか、そうだったな‼︎」

 

「提督よ。失礼するぞ」

 

「どうぞ〜」

 

入って来たのは武蔵だ

 

「ぷりんを作ったのだが、たいほうが見当たらなくてな」

 

「たいほういるよ」

 

「ふふふ。ここだと思った。さっ、食べろ‼︎」

 

「ぷりん」

 

私と武蔵とたいほう、三人でプリンを突く

 

もしかしたら、これが私の目指してる”家族”なのだろうか⁇

 

妻がいて

 

娘がいて

 

私がいる

 

武蔵と再び出逢って、しばらくした時にふと言ったあの言葉

 

”私は提督やたいほうの傍にいる時、とても優しい気持ちになれる”

 

「パパたべないの⁇」

 

「美味くないか…⁇」

 

「パパ⁇」

 

「ん⁉︎あ、あぁ‼︎美味いよ‼︎」

 

「全く…」

 

私には幸せになる権利など、もう無いのかも知れない

 

だけどもう一度、もう一度だけチャンスをくれるなら…

 

結末はこんな形が理想的だな…

 

二人を見て、私はそんな事を考えていた

 

 

 

おしまい


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