艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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34話 三羽の凶鳥(3)

巨大な扉の前にジープを止め、中に入った

 

「おぉ…」

 

「なんだ…これは…」

 

部屋の中には雲龍が入っていたカプセルが幾つもあったが、中は空っぽだ

 

「キャプテン、こっちです」

 

「あった…」

 

中身のあるカプセルが三つ

 

”ゴタア”

 

”トマヤ”

 

”キツカア”

 

キツカアと書かれたカプセルに至っては、年端の行かない女の子が入っている

 

「バッカス、ギュゲス。カプセルを解放出来るか⁉︎」

 

「や、やってみます」

 

二人が必死でカプセルを開けている間、私と隊長は武装した警備員や研究員の相手をしていた

 

「解放‼︎」

 

べチャッと音がし、床に三人が落ちた

 

「よし‼︎撤退だ‼︎一人ずつ担げ‼︎」

 

「よいしょ…」

 

「うんしょ〜‼︎重い…‼︎」

 

トマヤを持っているのは”ギュゲス”と呼ばれている部下の方だ

 

「しっかり‼︎」

 

「す…すみません…」

 

ギュゲスと二人掛かりでトマヤを持ち、ジープに乗せる

 

隊長はキツカアを乗せ、バッカスがゴタアを乗せたのを確認した後、全速力でジープを走らせた

 

「スティングレイ‼︎聞こえるかスティングレイ‼︎」

 

《聞こえる‼︎どうした⁉︎》

 

「上空から、この施設を空爆出来るか⁉︎」

 

《任せな‼︎フィリップ、炸裂弾装填‼︎》

 

《炸裂弾、装填良し‼︎》

 

《前方、あ〜…研究所‼︎ロック‼︎発射‼︎》

 

《発射‼︎》

 

《隊長、炸裂弾は地上に対して攻撃した時、着弾してから10秒だけ猶予がある‼︎脱出してくれ‼︎》

 

「了解した‼︎」

 

《着弾を確認‼︎カウントダウン、8…7…》

 

「いけいけいけ‼︎」

 

「掴まれー‼︎」

 

正門を出た瞬間、研究所で大爆発が起きた

 

「間に合った…」

 

「ふぅ…」

 

《間に合ったな‼︎横須賀で待ってるぜ‼︎》

 

「すまん、助かった‼︎」

 

《ストーカーの連中‼︎今回は貸しにしといてやる‼︎》

 

「すまないな、スティングレイ」

 

隊長は上空を見上げ、素直に礼をした

 

《けっ‼︎おいバッカス‼︎お前も生きてっか⁉︎》

 

「生きてるよ‼︎」

 

《…巻き込むべきだったな》

 

「恐ろしい事言うな‼︎」

 

《はっはっは‼︎ま、横須賀に着いたら、一杯やろうや‼︎》

 

「致し方なく、だぞ‼︎」

 

《けっ‼︎》

 

どうやら、バッカスとスティングレイは仲が良いみたいだ

 

「レイ…あ、スティングレイとは、昔からの腐れ縁なんです。スティングレイは貴方に。私は隊長に着いたんです」

 

「口は悪いが、根は良い奴だ。これからもよろしく頼む‼︎」

 

「こちらこそ‼︎大佐‼︎」

 

揺れるジープの上で、バッカスとギュゲスは敬礼をした

 

横須賀に着くと、三人はすぐさま入渠ドックに入れられ、SS隊の三人と私は横須賀の所に呼ばれた

 

「まずはありがとうございます。あそこは国が稼働させている、違法な研究所でした」

 

「やっぱり…」

 

「それで…貴方達、行き場所は⁇」

 

「ありません。先程失業しました」

 

「ふふっ…では、我々の傘下に入りませんか⁇」

 

「宜しいので⁇」

 

「えぇ。実は、新しい基地が建設予定です。そこに数機の機体と共に、赴任して頂こうかと」

 

「…よろしく頼みます‼︎」

 

隊長の背後で、バッカスとギュゲスが抱き合って喜んでいる

 

「ただし‼︎エスケープキラーなんて真似、私の元では許しません‼︎」

 

「勿論‼︎」

 

「では、明日から三人にはカリキュラムを受けて貰います。何、簡易ですよ」

 

「はっ‼︎」

 

三人が横須賀に敬礼をする

 

「良かったな」

 

「ありがとう、大佐。最初から貴方に着いておけば良かった…」

 

「お〜い、バッカス君‼︎君の好きな”メチルアルコール”を手に入れたぜ〜‼︎」

 

酒を大量に抱えたスティングレイが、豪快に入って来た

 

「バカ‼︎んなもん飲ますな‼︎」

 

「よし、今日は飲んで下さい‼︎」

 

その夜、私の基地の連中も横須賀に呼び、深夜まで宴会を開いた

 

 

 

 

 

それから数週間後…

 

SS隊の隊長は、黒のトレンチコートを脱ぎ、提督達が着る白い軍服に着替えていた

 

横須賀と私が見守る中、SS隊の三人の赴任先が決まった

 

「貴方がたを”ラバウル基地”に赴任します」

 

「はっ‼︎」

 

「あ、月に何度かは本土に来て良いですからね。”ラバウルさん”」

 

SS隊の隊長は、名前を変えた

 

幾ら艦娘を助けたとしても、やはり過去は消えない

 

彼は名前を変えて生まれ変わるにした

 

「結構自由なんですね」

 

「あまり肩肘張ってると、大佐に怒られますからね…あ、そうそう。貴方がたの強力な味方が…」

 

「隊長〜‼︎」

 

ラバウルさんにくっ付いたのは、キツカアだ

 

「戦艦”大和”入ります‼︎」

 

「ぱんぱ〜か‼︎”愛宕”です‼︎」

 

「あたご…やまと…」

 

「大佐…また読み間違えましたね⁇」

 

「あ‼︎いや⁉︎俺がそんな間違いする訳ないだろ‼︎」

 

「じゃ〜あ、この子‼︎なんて言います⁉︎」

 

「じゃ〜ん‼︎」

 

キツカアと思われる女の子が両手を挙げてニコニコしている

 

「…」

 

「早く」

 

横須賀に急かされ、半ば諦めた状態で口を開いた

 

「キツカ…」

 

「暁です。言うと思いました」

 

全部言う前に答えを言われた

 

「では、我々はこれで」

 

「お願いしますね」

 

外に出ると、スティングレイが仁王立ちしていた

 

「行くのか」

 

「あぁ」

 

「これ、お前にやる」

 

スティングレイは、バッカスに何かの箱を渡した

 

「なんだよ…ありがと」

 

「開けてみろよ」

 

「うん…うわ‼︎」

 

スティングレイが渡したのは、ビックリ箱だった

 

「はっはっはっは‼︎あ〜おもろ。じゃな〜‼︎」

 

「このクソ野郎が‼︎」

 

若い頃に戻った様な二人を、しばらくラバウルさんと眺めていた

 

 

 

 

ラバウル基地に、新しい仲間が赴任しました‼︎

 

緊急時、ラバウル基地から援護機を送る事が可能になりました‼︎




ラバウルさん…エスケープキラーをする程の腕を持つエースパイロット

黒いトレンチコートを常に着ており、国から要請があれば何でもする

パパとは昔からの知り合いで、そんなに仲も悪くはないし、案外年も近い

現在、三人の艦娘と二人の部下と共にラバウルに赴任

暁によく懐かれている



バッカス…SS隊の部下その1

スティングレイと同じ出身国であり、互いに唯一の知り合い

何だかんだで冗談が通じるタイプ

愛宕みたいな、包容力のある女性がタイプらしい



ギュゲス…SS隊の部下その2

ラバウルさんの横に常にいる、寡黙な男性

過去にラバウルさんに助けられた経歴があり、以降ずっと傍にいる

時々、バッカスととんでも無くはしゃぐ時がある

大和の様な、お淑やかで芯の強い大和撫子がタイプ

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