艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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34話 三羽の凶鳥(2)

「いいのか⁇俺を自由にして」

 

「ほら」

 

船に備え付けられた防水ライフルを彼に渡した

 

「これで俺を殺すチャンスが出来た。拘束も出来るぞ⁇」

 

「しないさ」

 

「ふっ…」

 

私の隣にいる奴は、過去に督戦隊だった人間だ

 

だが、戦場では互いに世話になった

 

彼の部隊は、自他共に認めるエース部隊”SS隊”通称”スカイストーカー”だ

 

エスケープキラーの分際で、何処かに優しさがあるのか、脱走兵を匿ったりしていた

 

人相の割には、人情に溢れている

 

「着いた。降りるぞ」

 

「全員降りろ」

 

「ちょっと待て」

 

拘束していた二人の紐を解いた

 

「いいのか⁇本当に」

 

「これで貸し一つな」

 

SS隊の連中は不思議そうな顔をしている

 

隊長からの命令も無く、ただただ大佐の前を歩いて、首相官邸に案内するだけ

 

彼等が不思議に思っているのも束の間、首相の前に着いた

 

「首相が何の用だ」

 

「君か。大臣の乗ったヘリを落としたのは」

 

「あんたらは市民を見殺しにした。だから俺もそれ相応の対応を取らせて貰った…それだけだ」

 

「君を拘束する」

 

「断る」

 

「SS隊。彼を連行しろ。犬どもが…」

 

「…いいな⁇」

 

「イエス、キャプテン」

 

「イエス、キャプテン」

 

SS隊の隊長が二人に指示をし、ドックタグとIDカードを首相に投げ返した

 

「な、なんだ⁉︎」

 

「申し訳ありません、首相。我々は、貴方の犬ではありません」

 

「お前ら…」

 

「大佐。私達は、スティングレイと口喧嘩してる日常の方が気に入ってるんですよ」

 

SS隊の二人が銃を構えた

 

「首相を拘束しろ」

 

「はっ」

 

あっと言う間に首相は拘束され、四人の足元に跪いた

 

「なんの真似だ‼︎」

 

「首相…”艦隊計画”はご存知で⁇」

 

「…」

 

沈黙を貫く首相に対し、足元に一発銃弾が飛んだ

 

「脅しではありません。未来の為の犠牲になりたいですか⁇」

 

「艦隊計画か…確かにあった。人間に艤装を装着し、戦力強化を図る…そんな計画だな」

 

「結果、どうなりました⁇」

 

「…」

 

今度はつま先を貫いた

 

「ぐわぁぁあ‼︎な、何をする‼︎」

 

「頭を貫かれる前に答えたらどうです」

 

「計画は失敗した‼︎多くがお前達の知る”深海棲艦”と呼ばれる者になった‼︎」

 

「何…⁉︎」

 

「大佐、これで分かったでしょう。国が‼︎老人達が‼︎我々を変えてしまった‼︎」

 

「…」

 

開いた口が塞がらなかった

 

「しかも艤装は何故か女性にしか反応しなかった‼︎何人かは男にも適応したが、そいつらも行方不明だ‼︎」

 

「その一人が私か…」

 

「そうだ‼︎あんたの恋人は残念だったなぁ‼︎国の犠牲になって‼︎」

 

その場にいた全員が呆れかえっていた

 

「…バッカス」

 

SS隊の隊長は、部下の一人の肩を叩いた

 

彼は頷いた後、首相の頭を撃ち抜いた

 

「大佐。もう一仕事、お付き合い願えませんか⁇」

 

「なんだ⁇」

 

「まずはここから出ましょう」

 

首相官邸から出ると、SPの連中に囲まれた

 

「止まれ‼︎」

 

四人全員が両手を挙げた

 

万事休すか…⁉︎

 

潔く目を閉じた後、爆発音が数回響いた

 

《イィ〜ヤッハァァァア‼︎‼︎‼︎ざまぁねぇぜ‼︎》

 

耳に付けたイヤホンから、聞きなれた軽口が聞こえる

 

目を開けると、SPが大勢横たわっていた

 

「はっ‼︎」

 

《大丈夫か⁉︎》

 

上空を見上げると、黒い機体が飛んでいる

 

「スティングレイ‼︎」

 

《間に合って良かったぜ》

 

「スティングレイ」

 

SS隊の隊長が上空を見上げた

 

《話は聞いた。致し方なく援護してやる》

 

「すまない…私達はこれから、軍の研究所に向かう。上空から支援を頼む」

 

《了解した。100m先にジープが一台ある。それで向かってくれ》

 

「いい部下だな」

 

「お互い様だろ。行くぞ‼︎」

 

四人はジープに乗り、研究所を目指す

 

「大佐。研究所では、計画が未だに続いています」

 

「破壊しなくては」

 

「その前に、中にいる”レディ”を助けたい」

 

「はっ‼︎本当に変わってねぇな‼︎いいだろう‼︎スティングレイ、正門をぶっ飛ばしてくれ‼︎」

 

《よっしゃ‼︎任せろ‼︎フィリップ、貫通弾装填‼︎》

 

《貫通弾、装填良し‼︎》

 

《前方の装甲扉、ロック‼︎発射‼︎》

 

《発射‼︎》

 

フィリップからミサイルが発射され

、正門は見事破壊された

 

「ナイスキル‼︎」

 

《後は任せた‼︎俺ぁ上空で待機している。中は任せた‼︎》

 

 

破壊された扉をそのままジープで突っ切り、何度か扉を体当たりで破って行く

 

「大佐、ここだ‼︎」

 

「よし」


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