艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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32話のちょっとした追加ストーリーです

砂浜でビー玉探しをしていたたいほうが見付けた物のお話です


32話 鷹の宝石+1

「運河〜‼︎」

 

「うんが〜‼︎」

 

朝からたいほうとしおいが騒いでいる

 

「大佐、おはようございます」

 

「おはよう」

 

横須賀の定時報告を聞いている最中、スティングレイがれーべとまっくすを腕にぶら下がらせ、外に出た

 

「大佐、伊401を少し貸して頂けませんか⁇」

 

「あはは、悪いな。しおいは俺の艦隊の所属じゃ無いんだ」

 

「まさか…スティングレイの娘ですか⁉︎」

 

「そう。強いて言うなら鹿島も」

 

「ぐぬぬ…スティングレイは貸してくれそうにない…」

 

「ま、聞いてみるこったな」

 

外に出ると、楽しそうに遊んでいるチビ達の中に、スティングレイと伊401はいた

 

「スティングレイ」

 

「あ⁇」

 

「伊401を貸して欲しい」

 

「ったく…絶対傷付けんなよ⁉︎しおい〜‼︎」

 

「は〜い‼︎」

 

すぐにしおいが来て、横須賀にしばらく着く様に言う

 

「あら、素直ね」

 

「こう見えても信用してんだよ」

 

「三時間程で返すわ。無傷で」

 

「一時間1000円な」

 

「…分かったわ」

 

冗談で言ったつもりが、嫌に素直だった為、背筋に悪寒が走る

 

「うわっ、ジェミニが素直だ…」

 

「ジェミニ⁇」

 

「スティングレイ⁇」

 

「はひ…」

 

「次言ったらブッ殺すわよ⁉︎」

 

「わ、わぁったわぁった‼︎早く行け‼︎」

 

「フン‼︎」

 

「いいか、お前達。将来あんな堅物な女になってはいけんぞ⁇女の子はお淑やかで、あだっ‼︎」

 

小石を投げられ、眉間に直撃する

 

「黙ってられないの⁉︎」

 

「ジェミニ怖い‼︎」

 

「ジェミニ怖い」

 

「子供を怖がらせるな‼︎」

 

「…じゃあね‼︎」

 

ようやく横須賀が行った後、残されたチビ達は、とある場所に行きたいと言った

 

「引き潮になったら、砂浜の向こうに何かある、だと⁇」

 

それを言い出したのは、たいほうだった

 

この前しおいとビー玉を探していた最中、それを見つけたらしい

 

しおいとたいほうでは重たくて持ち上がらないが、スティングレイなら持てるかもしれない…との事

 

「行ってみるか」

 

鹿島を呼び、砂浜で三人を見てもらい、俺はたいほうに言われた場所に行ってみた

 

砂浜では四人、ビー玉探しが始まっている

 

「これか…」

 

引き潮になり、砂浜が広がった先に、だだっ広い新しい砂浜が生まれ、そこの丁度中央に何か埋まっている

 

足で掘ったり、手で砂を掻き分けると、その全貌が明らかになって来た

 

「箱…か⁇」

 

出て来たのは、長方形の箱

 

かなりどころか、持ち上がらない程重い

 

「たいほう‼︎」

 

「は〜い‼︎」

 

「武蔵とローマを呼んでくれ‼︎」

 

「むさし〜‼︎」

 

しばらくすると、戦艦二人がやって来た

 

「どうした、すてぃんぐれいよ」

 

「これ、何だと思う⁇」

 

足元では、まだ少し埋まった箱がある

 

「どれ…」

 

武蔵が引っ張るが、少し動いただけで、中々出て来ない

 

「ちょっと離れて」

 

「嘘だろ⁉︎」

 

「よいしょ」

 

武蔵に抱えられた後、彼女はローマに背を向けた

 

万が一の備えで持って来ていたのか、ローマは副砲を構え、足元に向けて一発放った

 

「出たわ」

 

「ほぅ…これは…」

 

出て来たのは、時代劇とかで時折見かける頑丈な箱だ

 

「よし、工廠で調べて貰おう」

 

流石は戦艦

 

俺ではビクともしなかった箱を、二人掛かりで持ち上げ、工廠に運んだ

 

「では頼んだぞ」

 

”まかしとき‼︎すぐ開けたるわ‼︎”

 

箱が開くまで、俺はチビ達の所に戻りビー玉探しをし始めた

 

数十分後…

 

工廠に、基地内の全員が集められた

 

”えらいもん入っとったわ”

 

「まぁ、何にせよ開けてみようぜ」

 

スティングレイが重たい箱を開けた

 

「お…おぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

「ぴかぴかいっぱい‼︎」

 

中に入っていたのは、金塊やら大判小判

 

文字通り、千両箱だ

 

「た、隊長‼︎新しい装備買おうぜ‼︎」

 

「びすけっともかえるね‼︎」

 

珍しくたいほうが喜んでいる

 

「ま、何にせよ、今しばらくは金の工面には困らなそうだな…な、隊長‼︎」

 

「見つけたのはお前達だ。お前達で使え」

 

「はい‼︎」

 

たいほうは数枚の小判を持ち、私の手に握らせた

 

「いいのか⁇」

 

「いいに決まってんだろ‼︎」

 

「たいほうはね、これでおかしかうの」

 

「もっと美味しいの食べられるぞ⁇スパゲッティとか、から揚げも」

 

「ほんと⁉︎すぱげっちたべたい‼︎」

 

そんな二人のやりとりを見ていて、スティングレイがふと呟いた

 

「段々隊長に似て来たな…」

 

「まるで親子みたいですね」

 

「じゃあ、今度みんなで横須賀でお買い物しような⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

おそらくたいほうの頭の中には”みんなとご飯が食べられる”事しか頭にない

 

「ただいま〜‼︎スティングレイさ〜ん‼︎」

 

「おかえり。ほら」

 

帰って来たしおいにも金塊と小判を渡す

 

「わぁ‼︎何ですか、これ⁉︎」

 

「昨日の箱の中身だ」

 

「い、いいんですか⁉︎」

 

「山分けだからいいんだよ」

 

「ありがとうございます‼︎あ、そうだ‼︎新しい装備を貰いましたよ⁉︎」

 

「ほぅ。どんなだ⁇」

 

「えっと、何か、ドカーンってなる爆弾です‼︎」

 

しおいはジェスチャーも混じえて一生懸命説明するが、中々伝わらない

 

「爆弾は全部ドカーンだろ‼︎」

 

「えとえと、ビューン‼︎って飛んでって、バラバラー‼︎ってなって、ドカーン‼︎って爆発するやつです‼︎」

 

「ダメだ‼︎全く分からん‼︎」

 

「散弾ミサイルですよ。威力と精度は段違いですけどね」

 

「げっ‼︎横須賀‼︎」

 

「げっ‼︎とは何よ‼︎」

 

お互いに歯を見せ合いながら、睨み合いをする二人

 

「凄かったですよ‼︎島が一つ無くなりました‼︎」

 

「なんと…」

 

「心配しなくても、安全の確保された無人島ですよ」

 

しかし、誰も知る由もなかっただろう

 

しおいが一撃で破壊した、無人島と言い張る場所は、実は深海棲艦の基地だったとは…


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