艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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31話 旅行鳩は雷鳥に恋をする(6)

上空では激しい機動の中、二人が無線で会話する

 

「やるな。元とは言え、流石は教官だ」

 

《貴方も強くなりましたねぇ。香取ねぇが惚れるハズです‼︎》

 

「先生は、自分の道を選んだ‼︎鹿島はどうだ‼︎」

 

《私も自分で選んでるつもりです‼︎中々、振り向いてくれませんがね‼︎》

 

この短い会話の最中、2、3回は反転を繰り返している

 

「スティングレイか⁉︎」

 

《…》

 

「教官時代からアプローチかけてたんだ。上手くいくさ。もし落とせたら、俺の基地に来い。面倒を見て欲しい奴らが沢山いる‼︎」

 

《それを聞いて安心しました‼︎はっ‼︎》

 

隊長の機体が急ブレーキをかけ、鹿島の機体が前方に出た

 

「貰った‼︎」

 

《あうっ‼︎》

 

 

 

 

「流石は隊長だ…癖が無い」

 

「鹿島も中々…」

 

ギャラリーで大歓声が起きる

 

ま、そりゃそうだ

 

映画さながらの空戦を目の当たりにし、勉強にも目の保養にもなっただろうに

 

仲良く二機が着陸し、隊長も鹿島も機体から降りて来た

 

「ただいま」

 

「おかえり。流石は隊長だな‼︎」

 

「久し振りにハラハラしたよ」

 

「ただいま〜‼︎ダーリンっ‼︎」

 

スティングレイを見つけるや否や、彼に抱き着く鹿島

 

「うっ‼︎」

 

「私もやる…だーりん…」

 

「ううっ…」

 

グラーフまで抱き着き、スティングレイは圧死寸前だ

 

「結果発表を行います‼︎」

 

「あわわわ‼︎横須賀がキレてる‼︎行くぞ‼︎」

 

慌てて四人は会場に向かい、結果発表を待つ

 

「結果発表‼︎第一位‼︎サンダーバード隊隊長‼︎」

 

ギャラリーが歓声を送る

 

「隊長さんには、こちら‼︎新型機の設計図を差し上げます‼︎では、第二位‼︎サンダーバード隊、スティングレイ」

 

「へっ」

 

「スティングレイには、練習巡洋艦”鹿島”と1日デート券が授与されます‼︎」

 

「待て待て待てーい‼︎」

 

スティングレイが壇上に上がり、横須賀に噛み付いている

 

「何よ」

 

「1日デート券って何だ‼︎新型の何かじゃねぇのか‼︎」

 

「あんたみたいな男、鹿島とデートするだけでも感謝しなさい‼︎」

 

「デート券じゃなくて、鹿島をくれ‼︎」

 

「え」

 

「え」

 

「え」

 

「あらっ」

 

ギャラリーが静まり返った

 

「あんた、鹿島が好きなの⁇」

 

「好きだ‼︎だから傍に置きてぇ‼︎いいな⁉︎」

 

再びギャラリーで大歓声が起き、何人かが帽子を投げている

 

「ご、ゴホン‼︎け、結構‼︎では、スティングレイ、貴方には練習巡洋艦”鹿島”を授与します‼︎」

 

「オッケー‼︎満足満足‼︎」

 

スティングレイが帰って来た

 

「これが俺の答えだ」

 

「大満足ですっ‼︎ありがとっ‼︎」

 

「まっ、取り越し苦労で良かったな、グラ…あれ⁇」

 

グラーフが居ない‼︎

 

まさか、スティングレイが向こうに行ったから⁉︎

 

「久し振り…ワンコ」

 

「ぐ、ぐらぐら、グラーフさん‼︎」

 

「次はこっちかよ…」

 

「ワンコ…偉いさんになった⁇」

 

「は、はいっ‼︎おかげさまで‼︎」

 

「いい子いい子…」

 

「は、はひっ…」

 

何気無しにワンコの頭を撫でるグラーフだが、ワンコは元からグラーフが好きだ

 

香取とケッコンしたのも、彼女が死亡したと明確に言われてからだ

 

そこに、言い方は悪いが香取が現れ、彼を慰めた彼女が傍に付いた…って訳だ

 

「ワンコ…ケッコンしてる」

 

「はい。香取さんと、です」

 

「香取さん、いい人」

 

「あ…グラーフさんは⁇」

 

「私はまだ。そのうち見つけるか…取り返す」

 

グラーフはスティングレイの方を睨んだ

 

「あ、あはは…」

 

「隊長は武蔵。スティングレイは鹿島。ワンコは香取…ぐぬぬ」

 

「大佐、おめでとう‼︎」

 

ミハイルが現れ、いつも通りに握手を交わす

 

「ミハイル‼︎ありがとう‼︎」

 

「お…」

 

グラーフの体に電撃が走る‼︎

 

「隊長、彼の名前は⁇」

 

「あぁ、逢った事無かったな。彼はミハイル。ドイツの提督さんさ」

 

「グラーフです…」

 

「ミハイルだ。宜しくね」

 

「はっ‼︎」

 

いつも通りにミハイルが手を差し伸べ、グラーフと握手を交わす

 

「ふっ…」

 

惚れたな、グラーフ

 

「二人共元気ですよ。ちょっと太ったかな⁇」

 

「はっはっは‼︎良く食べてる証拠です‼︎」

 

「もう少し預からせて欲しい」

 

「貴方さえ良ければ」

 

「ミハイルさんは…何が好き⁇」

 

「そうだな…君みたいな、お淑やかな子かな⁇」

 

「はっ‼︎」

 

顔が真っ赤だぞ、グラーフ

 

「では、また御礼を持って伺います‼︎では‼︎」

 

「あぁ。ありがとう」

 

「ミハイルさん…いい…」

 

「モールス信号で愛を囁くか⁇」

 

「隊長、私頑張る」

 

「応援してるよ」

 

「パパ〜‼︎」

 

「たいほう‼︎」

 

「パパすごかった‼︎ぐるんぐるんしてた‼︎」

 

たいほうの目がキラキラしている

 

背中に背負ったリュックの中には、お菓子が沢山入っている

 

「おかしもらった」

 

「たいほうが一番だもんな」

 

「れーべとまっくすといっしょにたべるの」

 

「いい子だ」

 

「提督よ‼︎私は満足した‼︎帰ろう‼︎」

 

「⁇そうか」

 

「べーだ‼︎アホアホ眼鏡巨人‼︎」

 

だいぶ後ろの方でプリンツが舌を出している

 

近付くと武蔵にやられるからだろう

 

「ほっとけ。奴は治らん」

 

「ははは」

 

各々、乗って来た戦闘機に乗り、たいほうと武蔵、それに鹿島は高速艇で基地まで帰って来た

 

「ただいま〜っと」

 

「パパ〜‼︎」

 

「パパ」

 

相変わらずチビ達が最初に迎えてくれる

 

私は彼女達を抱き上げ、基地の中に入った

 

 

 

練習巡洋艦”鹿島”が、スティングレイの傘下に入りました‼︎


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