艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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4話 海鷲からの救難信号(3)

「心配するな…私は…味方だ…」

 

《ハナセ、ケガラワシイ︎》

 

私の腕を払おうとした瞬間、首の手が緩み、手を振り払った

 

そして、深海凄艦を思い切り抱き締めた

 

《ウッ…》

 

「心配するな…何もしないさ」

 

《ハナセ…》

 

「ドックに入ってくれ…頼む…」

 

《…シンジテイイノカ》

 

「信じてくれ、今だけでも…」

 

《…ワカッタ》

 

「良かった…」

 

手を離すと、深海凄艦はちゃんと入渠ドックに入った

 

《ナオッタラ、キサマヲヤツザキニシテウミニ…》

 

「はいはい、ちゃんと治せ。話はそれからだ」

 

《デテイケ︎コノヘンタイ︎》

 

歯を剥き出しにしながら、此方にお湯をかけてきた

 

「分かった分かった︎」

 

入渠ドックを出た後すぐに気付いた

 

あいつ、裸だったな…

 

ま、どちらにせよ、入渠が終わるまで落ち着いていてくれそうだ…

 

ようやく一服つけそうだ…

 

 

 

「パパ、あのひとだいじょうぶ⁇」

 

部屋に戻ると、たいほうが駆け寄って来た

 

「大丈夫だよ。ちょっと怪我してただけだ」

 

「よかった」

 

本来敵である深海凄艦に対し、心配をしている彼女を見て、私も少し落ち着いた

 

「もう夜か…もう寝なさい」

 

「うん…」

 

心配そうに私の顔を見た後、部屋の隅に敷かれた布団に入った

 

「パパ、どこにもいかない⁇」

 

「行かないよ。ここにいる」

 

「よかった…」

 

目を閉じた彼女の頭を撫で、椅子に座って煙草に火を点けた

 

「長かったな…」

 

流石に今日は疲れた…

 

深海凄艦…か…

 

フィリップみたいに、話が通じれば、何か見つかるかも知れない…

 

ダメだ…ちょっと眠ろう…

 

煙草の火を消し、椅子に座ったまま目を閉じた

 

 

 

 

 

「…はっ︎」

 

朝日が直で顔面に当たり、目が覚めた

 

「…フィリップ」

 

太陽の下、フィリップが元気そうに基地の上空を飛んでいる

 

「どれ…」

 

窓の外を見ると、たいほうがフィリップを目で追っていた

 

「…」

 

残る心配は…

 

緑茶を飲み、入渠ドックに向かった

 

「おはよう。あれ⁇」

 

ドックにいたはずの奴がいない

 

海に帰ったのか…よかっ

 

「いて︎」

 

振り向いた瞬間、柔らかい物に当たった

 

「もう大丈夫か⁇」

 

そこにいたのは、タオルを頭に置いた昨日の深海凄艦だった

 

《…ダイジョウブ》

 

「海に帰ってもいいんだぞ⁇」

 

《カエッタラ、ニンゲンニタスケテモラッタウラギリモノダトイワレル》

 

不安そうにしているのが、一目で分かった

 

「嫌じゃなきゃここにいろ。戦いもなけりゃ、裏切り者と言われる心配も無い」

 

《イイノカ⁇ワタシハシンカイセイカン…オマエタチノテキダ。コノキチヲハカイシタリ、ホカノレンチュウ二バショヲオシエルカモ…》

 

「したいならすればいい。その時は何度でも止めてやるさ」

 

《…イイダロウ︎キサマニカリヲツクルノモシャクダ、ココニイスワッテヤロウ︎》

 

「ようこそ、私の基地へ。それと、私の名前は…」

 

《シッテル、パパダ》

 

「君は⁇」

 

《ナイ︎パパガツケテクレ》

 

名前か…

 

そう言えば、顔立ちが結構美人なためか、頭に置いたタオルのせいで教会のシスターに見えなくもない

 

「なら”マリア”だ」

 

《マリアカ…イイダロウ》

 

「あ…そうだ。マリアの武装なんだけど、見つけた時には何も無かったんだ…」

 

《ゼンブステタカラナ》

 

「そっか…」

 

《デハ、ワタシハパパノカンムスノメンドウデモミヨウ》

 

「頼んだよ」

 

そう言った私に対して、マリアは笑った

 

《ホントウニイイノカ⁇アノコヲクッテシマウカモシレナイゾ⁇》

 

「その時はマリアが毎日私の布団の中で湯たんぽ代わりになって貰う」

 

《ソレハコマッタナ…デハクワナイデオコウ》

 

顎に手を置いて、再びこちらに笑みを見せた

 

「そうやってちょっとずつ笑え」

 

《ソウスル。デハパパ、イッテクルゾ》

 

「敬礼は無しだ。行って来るぞだけでいい」

 

《フッ…》

 

 

 

 

深海凄艦タ級”マリア”が艦隊の指揮下に入ります!!




戦艦タ級”マリア”…食いしん坊のグラマラスガール

パパが保護した深海凄艦

よく食べるわ、パパの手は噛むわで気性の荒い女の子だが、たいほうの面倒をよく見てくれたり、意外な所で気遣いが上手

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