艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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31話 旅行鳩は雷鳥に恋をする(5)

次の日…

 

機体に乗り込む寸前、グラーフが言い放った

 

「昨夜は…お楽しみ…」

 

「グラーフ‼︎」

 

渋々機体を上げ、2日目の試合が開始される

 

相変わらず隊長とグラーフは良い腕だ

 

ここまで来たら、俺は後手で充分だ

 

数試合が終わり、次で最終試合となった時、隊長が横須賀と何か話し、グラーフは誰かに呼ばれて居ない

 

戻って来た隊長は、何故か機体を乗り換えた

 

それも、フルチューンのSu-37だ

 

「おっ。隊長もいよいよ本気か⁇」

 

「横須賀が乗れだと。向こうもジェットエンジンの機体らしい」

 

「ほ〜う。楽しみだな」

 

「最終試合‼︎サンダーバード隊VSアグレッサー機の試合を開始します」

 

「行くぞ」

 

三機が上がるが、相手の機体が見当たらない

 

「アグレッサー隊だと⁇どこだ⁇」

 

《レーダーに反応…一機のみだ》

 

「舐められたものだな…」

 

《うふふっ…》

 

「鹿島⁉︎」

 

《二人共、ごめん‼︎》

 

「グラーフ機の反応が違う‼︎グラーフ機も相手の機体だ‼︎」

 

《ちっ…しゃあない‼︎隊長、鹿島を頼む‼︎グラーフは俺に任せろ‼︎》

 

「了解した」

 

無線を切った後、私はふと気付いた

 

「あいつ、鹿島って呼び捨てにしてたな…」

 

 

 

隊長が鹿島を相手している最中、スティングレイとグラーフも激戦を繰り広げていた

 

《スティングレイ、覚悟なさい‼︎》

 

「ったく…」

 

背後に付かれては付き返す

 

スピードを上げれば同じく上げる

 

そして、何度目かの時にグラーフが口を開いた

 

《昨日鹿島と何をしたの⁉︎》

 

「寝たよ‼︎一緒に‼︎」

 

《ちょっとは隠しなさい、よっ‼︎》

 

グラーフが背後に付いた

 

「隠したら何か変わるか⁇何にも変わんねぇだろっ‼︎えぇい‼︎」

 

機銃をかわしつつ、再びグラーフの背後に付く

 

《あんたは私のもの‼︎私の掌からこぼれちゃいけないの‼︎》

 

「お前はいっつもそうだ‼︎俺はものじゃねぇ‼︎鹿島はそれを教えてくれた‼︎」

 

《私の事はもう嫌い⁇》

 

「嫌いじゃねぇさ‼︎嫌いじゃねぇけど、お前の口から”好き”って言葉を聞いた事がない‼︎」

 

《好きに決まってるでしょう‼︎この鈍感野郎‼︎》

 

「うわっ‼︎」

 

ギリギリで機銃を回避し、再度背後に付く

 

《あっ…》

 

「最後に聞くが、鹿島に何か言われたか⁇」

 

《私がスティングレイを落としたら、私は諦めるって…》

 

「ちっ…だがな、俺は負けねぇ‼︎恋も‼︎試合も‼︎ここで負けたら、何にも護れねぇんだよ‼︎」

 

グラーフの機体に、ペイント弾が付いた

 

《やっぱり強いな…スティングレイは…》

 

「ったりめぇだ‼︎俺はこのまま隊長の援護に向かう」

 

《駄目だ。鹿島さんから、終わったら帰投の命令を受けた。帰ろう》

 

ふと、隊長と鹿島が交戦している区域を見た

 

「…分かった。隊長なら大丈夫だろう」

 

《えぇ》

 

 

 

二機が着陸し、ちょっとした歓声に包まれた後、俺達含めたギャラリーが空を見上げた

 

そこでは隊長と鹿島が、俺達より数倍激しい空戦を繰り広げていた

 

「な…何だあの機動⁉︎」

 

「隊長…珍しく本気」

 

隊長と鹿島の機体は、ほぼほぼでんぐり返りの様な反転を繰り返していた

 

背後に付かれたら、数秒後には反転

 

時には一旦離脱し、上空から再度仕掛ける…

 

と、おおよそ人間とはかけ離れた技の出し合いをしている

 

「俺達が敵わないはずだ…」

 

「凄い…」


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