艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

1081 / 1086
お久し振りです、苺乙女です

大変お待たせしました

20話分を書き直していましたが、そのほとんどが1から書き直しになってしまい、とんでもなく待たせてしまう事になってしまいました

ここに作者本人からお詫びを申し上げます


このお話は、特別編で登場したとある戦車部隊が合流するお話になります

リチャード曰く、とんでもない連中との噂…

果たして横須賀の連中は勝てるのか!!


323話 脳筋戦車部隊

「何!?アイツが本国から!?」

 

朝方、リチャードが新聞を読んでいると、ヴィンセントから同期が横須賀基地に配属されると聞いた

 

「らしいぞ??随分前に海から転属して、今じゃ戦車乗りだ」

 

「うぬぬぬぬ…!!誰か戦車乗りはいないのか!!開幕ぶっ潰してやるぁ!!」

 

「行っちゃったわよ??」

 

キッチンカウンターからイントレピッドが顔を出す

 

二人の目線の先には、チャンピオンポーズで戦車乗りを探しに行ったリチャードがいる

 

「放っておいた方がいい。奴とは仲が悪いわけじゃない。知ってるだろ??」

 

「ふふっ!!まぁね!!」

 

 

 

 

「う〜む…しかし、戦車乗りがそう簡単に見つかるか??」

 

リチャードがタバコを吸いながら考えていると、足にラジコンが当たった

 

「申し訳無いであります」

 

「君は…アキ…」

 

「神州丸であります」

 

「神州丸か。どれ、いい戦車を操縦してるな??」

 

タバコを咥えたまま、リチャードは屈んで足元にあるラジコン戦車を掴み上げる

 

「これはシャーマンであります。爺様が操縦していたであります」

 

「なに!?」

 

リチャードはすぐにタバコを消し、再び神州丸に目線を合わせる

 

「爺さんがシャーマンを操縦してたのか??」

 

「そうであります」

 

「これは良い事を聞いたお礼だ。取っておきなさい」

 

リチャードは神州丸のポケットに一万円を捩じ込み、すぐに立ち上がり、パイロット寮の執務室に走る

 

神州丸はシャーマン戦車のラジコンを胸に抱いて、リチャードを眺めていた…

 

 

 

「何!?今横須賀にいる!?どこだ!!分かった!!すぐに行く!!」

 

ガチャン!!と受話器を置き、コートを直す

 

「戦車乗りは見つかったか??」

 

「それがよ!!一人ヤバいのがいんだよ!!シャーマン乗りだ!!」

 

「ははは!!そいつは良かったな!!」

 

「よーし、行ってくる!!」

 

ヴィンセントはリチャードの子供の様にはしゃぐ姿を見て、微笑みながらタバコに火を点けようとした

 

「びんせんとさ」

 

「ワシントン!!」

 

入れ違いでワシントンが執務室に来た

 

あの日からヴィンセントは、ワシントンが来ると執務の手を止め、厳重に保管した後、ワシントンと遊ぶ

 

「今日は何するんだ??」

 

「これつくった。おいすぃよ」

 

ワシントンはリュックからクッキーを取り出し、ヴィンセントの所に持って来た

 

二人は執務室にあるソファーに座り、二人でクッキーを頬張り始めた…

 

 

 

 

「中将、どうなされました??」

 

繁華街では、森嶋と買い物をしていたトラックさんが居た

 

彼は元々戦車乗り

 

神州丸曰く、シャーマンに乗っていたらしい

 

「お願いだぁ〜!!本国からヤバい戦車乗りが来るんだ〜…頼むから護衛してくれぇ〜!!」

 

リチャードはトラックさんの足にしがみつく

 

「りょりょ、了解です!!そんなにヤバい人なのですか??」

 

「ヤバい!!スッゴイヤバい!!」

 

リチャードは足にしがみつくのを止め、トラックさんの前の椅子に座り、事を説明する

 

「奴はエイブラムスの戦車長だ」

 

「あれを相手にしろと…」

 

「中将。私も相手をします」

 

久方振りのトラックさんと共闘出来ると聞いて、森嶋が身を乗り出す

 

「ダメダメダメ!!ソイツはダスターで周りを固めてやがる!!」

 

「自走高射砲で固めてるとなれば、本当に手練ですね…」

 

「いいか森嶋。私達お空の鳥さんはお休みだ」

 

「了解です。しかし、何故その彼は自走高射砲を??」

 

「私に対抗意識を燃やしてるらしいんだ…いいか、今から真似をする!!」

 

リチャードは咳払いをした後、身振り手振り付きでモノマネをする

 

「ヌワッハッハッハ!!むぁーだ生きていたかぁ!!リチャードぉ!!きょー!!こそ貴様をぶっ潰してやるぁ!!」

 

「分かりやすいキャラクターのようで…」

 

「それに筋肉モリモリだからすぐ分かる。良い奴なんだか、脳味噌も筋肉で出来てるような奴だ。マジで見たらすぐ分かる!!」

 

「了解しましたっ!!しかし、戦車の方は…」

 

「持って来たシャーマンが一両だけある。そいつを使ってくれ。私はからっきしなんだ…」

 

「今見れますか??久々に見たいです」

 

「森嶋、お前も来い。後で埋め合わせるから」

 

「自分もですか??」

 

「じゃないとさっきみたいに足につくぞ!!」

 

「いいい行きます!!」

 

トラックさんも森嶋も、今のリチャードを見て

 

"やはり親子なんだな…"と、痛感していた…

 

 

 

 

「こいつだ」

 

リチャードが布を取ると戦車が現れた

 

「はぁ〜…」

 

トラックさんは久方振りの戦車に、ため息を漏らす

 

来たのはジープの発着場

 

ジープが大量に停めてある奥に、隠れるように一両の戦車があった

 

「これパットンですね」

 

「パ、パットンか…」

 

そこにいたのはシャーマンではなく、パットン

 

「大丈夫です、操縦した事ありますよ!!乗っても大丈夫ですか??」

 

「勿論だ!!」

 

「よっ、と…」

 

軽々とパットンに登り、ハッチを開けて中に入る

 

「あぁ…」

 

トラックさんは操縦席に座り、深呼吸をする

 

「"パトリシア"の乗り心地はどうだ??」

 

「懐かしいです。中将、後もう一人欲しいのですが…」

 

「も一人か…あ、マーカスが何か言ってたな…」

 

「マックさんですか??」

 

「そう!!その人はどうだ??」

 

「是非お願いします!!」

 

 

 

 

後日…

 

マックを招集し、砂浜で待つ

 

「来ましたよ!!到着まで30分!!」

 

様子見で行っていた神通が戻って来た

 

「来るぞ…」

 

「有村っ、今の内に外の風を浴びておこう」

 

「はっ!!」

 

「パトリシアってのは、いい戦車なのか??」

 

マックとリチャードが戦車のハッチ付近で話す

 

「いい戦車ですよ、中将さん。貴方で言えばF-14です」

 

「あらぁ!?どーしてそれを!?」

 

「あの日我々は、貴方にも救われたのですよ」

 

「よいしょっ!!森嶋の援護が来た後に、中将の機体が見えたんです!!」

 

「んなぁ、いいのいいの。仲間内だろ??」

 

「ヌワッハッハッハ!!むぁーだ生きていたかぁ!!リチャードぉ!!きょー!!こそ貴様をぶっ潰してやるぅ!!」

 

海の上からメガホンで声が聞こえた

 

「「来た…」」

 

リチャードは手元にあったメガホンを取り出し、海の上にいるであろう彼に向ける

 

「うるせぇ!!この筋肉ダルマ!!俺には最強の戦車がいるんだよ〜んだ‼ヴァーカ!!」

 

「ちょーっと待てぇ!!リチャードぉ!!貴様戦闘機を降りたのかぁ!?」

 

「お前は人の話聞かねーから未だに脳筋なんだよ!!」

 

「貴様だけには言われたくねぇ!!野郎共!!じゅーんびの時間だぁ!!」

 

リチャードはメガホンを置いた

 

「…本気っぽい」

 

「そんな夕立さんみたいな…」

 

「思考も筋肉、戦術も筋肉、見てろ…」

 

「どりゃー!!」

 

奴は揚陸艇で乗り上げて来た!!

 

それも六艇もある

 

「どーだぁ!!リチャードぉ!!観念したかぁ!!」

 

「じゃ!!後は頼んだ!!とうっ!!ここにいるパトリシアが貴様の相手だ筋肉ダルマぁ!!」

 

「行きましょう」

 

「はっ!!」

 

二人は準備に入る

 

リチャードは木陰に隠れながらメガホンで威嚇する

 

「どーこに行ったぁ!!まーぁいい!!パットンを倒してぇ!!貴様をぶっ潰してやるぁ!!野郎共!!攻撃ーっ!!」

 

「よし…頼んだぞ…」

 

リチャードの横にいた少女は小さく頷いた…

 

 

 

「相手はパットン一両だぁ!!野郎共、かる~く追い返してやれぃ!!」

 

「「「了解、アニキ!!」」」

 

砂浜と言う、互いにキャタピラが進み辛い中、パットンは上手く敵のエイブラムスの死角に入る 

 

どちらかに模擬弾が3発当たれば、模擬戦は終わる

 

「撃て!!」

 

パットンの模擬弾が放たれる

 

「ヌワッハッハッハ!!あいたぁ!!」

 

「命中だ!!マック、旋回して再度攻撃を仕掛ける!!」

 

「装填完了!!有村、奴の背後だ!!」

 

「甘いわ!!」

 

ドンッ!!と、エイブラムスの鈍い砲撃音と共にパットンに模擬弾が当たる

 

《はいはーい!!終わり終わり!!》

 

急にリチャードからの無線が、互いの戦車に入る

 

「な、何故!?」

 

「なーぜだリチャードぉ!!勝負はこれからだろーがぁ!!」

 

《外出てみろよーだ》

 

互いの戦車から、乗組員が顔を見せる

 

「あっ!?あっはっはっは!!」

 

「なるほどっ…これは…ふふっ…」

 

「ふふっ!!」

 

外にはリチャード

 

そして、リチャードに肩車して貰いながら、ラジコンを操縦している神州丸

 

神州丸はシャーマン戦車のラジコンを使い、パチン!!ポチン!!とBB弾をエイブラムスに当てていた

 

「あっはっはっは!!こいつは一本取られたぁ!!正面からでなく、この"マキシモ"の意表を突くとはぁ!!はっはっは!!」

 

「勝ったでありますか」

 

「神州丸の勝ちだ!!やったな!!」

 

「やったぁであります」

 

「思い知ったかこの筋肉ダルマ!!」

 

「良ーいだろうリチャードォ!!しかしこのマキシモ!!貴様にはいつか勝ーつ!!あっ、模擬戦、ありがとうございましたっ!!野郎共!!敬礼ー!!」

 

筋骨隆々の集団が、律儀に、それも綺麗に敬礼をする

 

マックもトラックさんも、そんな彼等に敬礼を返す

 

「おっとぉ!!貴様にはしてやらんぞぉー!!リチャードォ!!」

 

「俺は敬礼はしないスタンスでね。今日から配属だろ??案内してやるよ。致し方無くな!!」

 

「それは素直に受け取ろう!!」

 

「あらよっと!!あいっ!!」

 

リチャードはパットンの側面に掴まり、トラックさんに神州丸を渡す

 

「ありがとうございます、中将。よいしょっ…」

 

「神州丸の作戦だったんだ。私はこっそり、神州丸をカバーするしか出来なかった。神州丸、協力に感謝するよ」

 

「神州丸もいつか戦車に乗るであります」

 

リチャードは何かに気付いていた

 

今この砂浜に、何かが紛れ込んでいるのを…

 

「車庫に戻ってろ。ちょっとっ…一服してから帰るよっ!!」

 

「案内してくれぃ!!」

 

「はっ!!」

 

マキシモを引き連れ、トラックさん達は横須賀基地内へと戻る…

 

「さてっ…」

 

 

 

リチャードは足元の砂を見る

 

キャタピラの跡がある

 

自分の足跡がある

 

特に変わった所は無い

 

サクッ…

 

「誰だ…」

 

何処からか足音がする…

 

それも、リチャードの方に向かっている様子…

 

サクッ…ザッ、ザッ…

 

「な…何だ…」

 

この日、リチャードは珍しく後退りをする

 

足音だけが近付いてくるのだ

 

「とっても美味くはないぞ…」

 

リチャードがそう言った瞬間だった

 

サクッサクッサクッサクッ!

 

砂浜に足跡が出た!!

 

しかし、音と足跡のみで本体がいない!!

 

「ヤバいっ!!」

 

足を取られた!!

 

しまった!!2体いたのか!!

 

「しぇんしゃきた!!」

 

「ぼが〜!!どご〜!!いってた!!」

 

「はっ!!はぁ!!お、お前達か…!!」

 

リチャードの足を掴んでいたのは、恐らくステルスを使っていたひとみといよ

 

舌っ足らずな声、そして足に来てる重さ、十中八九そうだ

 

「いつからいたんだ??」

 

「ここじゅっといた!!」

 

「とりぁ〜!!ってしぇんしゃきた!!」

 

「その二人には適応変化機能が付いてるんだ」

 

ひとみといよを迎えに来た俺が来た

 

「ひとみ??いよ??もう切っても大丈夫だぞ??」

 

ひとみといよがステルスを切った

 

「う〜む…一本取られたな…足跡さえなかったぞ??」

 

「あちあとけす!!」

 

「こ〜あってけす!!」

 

いよはその場で足跡の消し方をやってみせた

 

ゆっくり一歩進み、足を横にスライドさせながら足跡を消し、少しずつ前に進む

 

「そういやぁ、二人は何してたんだ??」

 

「こえ!!」

 

ひとみが背中に挿していたのは金属探知機

 

「びび〜ってなう!!」

 

「随分前に作ったんだ。それ使って、親潮達が繁華街で小銭集めしてる」

 

「ちょっと貸してくれないか??」

 

「あいっ!!」

 

金属探知機を借りつつ、ひとみを肩に乗せる

 

いよは俺の肩に乗る

 

「こえおちて、おとちたら、あんかありあす!!」

 

「どれどれ…」

 

リチャードが金属探知機のスイッチを押すと、独特の音が出始めた

 

「これしながら帰ろう」

 

「あにあうかあ??」

 

「小銭あったらあげるからな!!」

 

リチャードはそのまま基地の方へと戻る

 

すると、途中で金属探知機の音が変わる

 

「おっ??」

 

「こじぇに!!」

 

落ちていたのは100円玉

 

「よっ!!ほらっ!!」

 

リチャードはそれを拾い、ひとみに渡す

 

「あいあと!!」

 

「えいしゃん、こえみて!!」

 

いよの手には、何か指輪が握られている

 

「砂浜で見付けたのか??」

 

「うん!!こえ、よこしゅかしゃんに、おとちもおですお〜ってすう!!」

 

「ありがとな??後でお小遣いあげような??」

 

「んっふっふ〜!!」

 

基地に戻って来ると、ひとみといよは二人の肩から降りた

 

「よこしゅかしゃんに、おとちもおとろけてきあす!!」

 

「こんだけでてきあした!!」

 

「「うおっ!?」」

 

いつの間にか、ひとみといよの手にはビニール袋が握られており、その中に落とし物であろう物が詰まっていた

 

「金属探知機は何処に直しておけばいいんだ??」

 

「あ〜しゃんにあたす!!」

 

「こえもおねがいちあす!!」

 

いよも背中から金属探知機を取り出し、横須賀の所に向かった

 

 

 

「後で返すとして、少しこれで遊ぼう!!」

 

「細かい金属にも反応するからな??」

 

そう言いつつ、パイロット寮の前に来た

 

「どれ、ちょっと試してやろう…」

 

「おかえりなさい!!レーゾーコにお茶があるわ!!」

 

親父はパイロット寮の前を掃いている女性の背中に金属探知機を近付けた

 

「…」

 

「リチャード??」

 

「イントレの背中から金属の反応がない…」

 

「そんなはずないだろ??貸してみろ!!」

 

俺もイントレの背中に金属探知機を近付ける

 

「おかしい…バグったのか??」

 

「さっきヒトミが肩に乗ってた時は100円玉に反応してたから、ぶっ壊れたって事はないな…」

 

「つまりイントレさんはノーブラって事か!?」

 

「いつもの事だ。ん!!次ぃ!!あだっ!!」

 

「イッテェ!!」

 

俺も親父も、イントレの手にあった箒の柄で小突かれる

 

「親子揃って人のブラジャー探知してるのね!?」

 

「ブラジャー着けてない方が悪い…ぞ…」

 

「ブラジャーどうしたん…だ…」

 

口を開くと柄を向けられる

 

「ははは…親父、どうすんだよ!!」

 

「こういう時は言う事は一つよ…」

 

「チャンスは一回よリチャード??」

 

イントレの笑顔がとっても怖い!!

 

「今日の色は何色だ!!」

 

「確かめてさせてあげるわ!!」

 

「いやーーーっ!!あーーーっ!!」

 

イントレは親父を軽々と持ち上げ、肩に担ぐ

 

「罰が重すぎると思います!!イントレさん!!ねぇ!!」

 

「昼間からするのもいいじゃない!!ねっ!?」

 

「ギャーーーッ!!」

 

無情にもパイロット寮の玄関は締められた…

 

 

 

「すみません!!そこの男性!!」

 

横須賀の所に行こうとすると、一人の女性に呼び止められ、周りを見渡しても、男は俺しかいないので反応した

 

「どうした??」

 

「あの…ここに戦車部隊が来ませんでしたか??」

 

俺を呼び止めたのは、金髪で眼鏡の女性

 

パッと見は鳥海にも似ている

 

「あぁ、さっきここに。知り合いか??」

 

「はい…心配でここまで来たのですが…」

 

「そっか…」

 

そういえば、戦車部隊の連中は報告書を見る限り男ばかり…それもザ・漢!!みたいな連中ばかりだ

 

筋肉を擬人化したような連中ばかりなので、案外モテるのかも知れない…

 

「もう…何処行ったのよあの人は…」

 

「模擬戦が終わって、発着場に行ってるんだと思うんだが…」

 

「あの…不躾ですが、発着場まで案内して頂けませんか??」

 

「行こう」

 

金髪の眼鏡の女性を連れ、発着場へと向かう

 

「貴方はここのパイロットですか??」

 

「そっ。それと案内人っ」

 

「ふふっ!!リチャードみたいな事言うのですね!!」

 

「親父の知り合いか??」

 

「息子さんですか!?これは失礼を!!自己紹介もまだでした!!私"ノーザンプトン"と申します!!え、えと…アメリカでは海軍兵学校の教官をしていまして!!」

 

眼鏡を直しながら、ノーザンプトンは慌てた口調で自己紹介を始める

 

「マーカスだ。ここのパイロットをしてる」

 

「やっぱり、血は受け継がれるのですね…」

 

「息子もパイロットだってか??」

 

「えぇ…あ、そうですマーカス!!貴方からもお願いして頂けませんか!!そろそろ船に乗れと!!」

 

「もう乗ってるみたいなモンだろ??」

 

丁度、親父が向こうから来た

 

「リチャード!!ここにいましたか!!」

 

「何度言っても俺は船には乗らん!!戦闘機のが性に合ってるんだよ〜だ!!」

 

「貴方のカリスマ性は海軍の船で活かすべきですっ!!」

 

「はいはい。あっちにいんぞ〜」

 

「いいですか!!今度申請書を送りますからね!!」

 

「着払いで送り返してやらぁ!!」

 

ノーザンプトンは発着場に入って行った

 

「あ〜もううるせぇネーチャンだ!!」

 

「知り合いか??」

 

「まぁなっ。レンジャーが海軍航空学校の教官なら、ノーザンは海軍兵学校の教官さ」

 

「海の向こうの教官は美人揃いか…」

 

ヒューストン、ノーザンプトン…

 

皆揃って美人だらけだ

 

「大尉??」

 

「うっ…」

 

ソーセージを両手に持った香取が来た

 

「今の言い方ですと、私は美人ではないと??」

 

香取も眼鏡を直しながら言う

 

「くっ…」

 

「アンタはアンタで別の意味での美人さ。小柄で??面倒見が良くて??それに、若い奴に慕われてる…十年早けりゃ、マーカスを婿に迎え入れれたかもな??」

 

「彼が十代の時に面倒を見たのですが??」

 

「…」

 

「…」

 

俺と親父の時間が止まる

 

この言い方だと、香取は俺を恋人にしてもおかしくなかったと取れる

 

「中将??その辺りはどうお考えで??」

 

「え"っ!?そ、そこはだな!?ほ、ほら!!と、当人同士でだな‼」

 

「大尉は年上の女性にモテますかは…はむっ…」

 

こう見ると童顔で可愛いんだがなぁ…

 

普段の言動と行動が怖すぎるんだよな…

 

「大尉??あまりわたひをおちょくると…はむっ…」

 

香取は俺と親父の目の前でソーセージに齧り付いた

 

そして、ソーセージを一気に噛み千切る

 

「こーなりまふ」

 

「「ひうっ!!」」

 

俺も親父も股間を抑える

 

「こ、今度ヴィンセントにデートの申請を要請しよう!!」

 

「そ、そうだな!!それが一番手っ取り早い!!」

 

「だめれふ。大尉とれふ」

 

「わ、分かった分かった!!ほ、ほら!!バー連れて行くから!!」

 

「楽ひみにっ…んっ…してますよ、大尉??」

 

俺は無言で頷くしか出来なかった…

 

香取はそのままソーセージを両手に持ったまま、教室がある棟に入って行った

 

「な、なんだ??ちょっと、可愛いな…」

 

「昔から抜けてる所あんだよ…そんな感じだから、未だに俺もアレンも慕ってる」

 

「そういやマーカスはちょっと抜けてる子が好みか??」

 

「どうだろう??抜けてる方が暇しなくて良いからかもな??」

 

言われてふと考える…

 

 

 

ジェミニはどうだ??

 

親潮に最初の教育した時、アメリカンドッグの最後のカリカリの所の食い方とか教えてたな…

 

大淀はどうだ??

 

たまに急に頭のネジ全部吹っ飛ぶな…

 

言われてみればそうなのか…

 

 

 

「マキシモ!!ここにいましたか!!」

 

「の、ノーザン!!」

 

ノーザンプトンの声がし、俺も親父も振り返る

 

「もう!!また貴方は先に行く!!」

 

「ち、違うんだノーザン!!先にノーザンの危険がないか見たんだぁ!!」

 

「ふふっ!!振り返り方一緒ね??」

 

もう一度振り返ると、両手にサイダーを持ったイクがいた

 

「はいっ、どうぞ??」

 

イクは俺達に手に持っていたサイダーを渡してくれた

 

「ありがとう!!」

 

「ありがとな??…今はどっちだ??」

 

「どっちか当てて??お父様??」

 

顔を傾けて、したり顔でこっちを見るあたりヒュプノスだ

 

「ヒュプノスはお散歩中か??」

 

「御名答っ!!発着場が騒がしくて、ちょっと様子を見に来たの。心配しなくて良かったみたいね??」

 

「新しい戦車部隊の連中さ。バカだがっ…良い奴ばかりさっ!!」

 

「見物に行こうぜ!!」

 

「行ってらっしゃい。あ、そうそうお父様」

 

「どうした??」

 

「そのサイダー、どっちか私が口を付けたわ??」

 

「よし。後で舐め回しておこうな」

 

「孫に言うか…」

 

「あら、舐め回してくれないの??」

 

「くっ…」

 

ヒュプノスと親父の目線が痛い…

 

「冗談よ!!お母様がそう言いなさいって!!じゃあ、また遊んで頂戴ね??」

 

「今度ご飯に行こうな!!」

 

ヒュプノスは別れ際にイクの笑顔を見せた

 

色気はあるが、あの笑顔を見るとまだまだ幼い

 

そろそろ本当にヒュプノスと時間を取らねばな…

 

 

 

マキシモとノーザンの所に行くと、マキシモはノーザンと話をしていた

 

「はい、ダーリン!!」

 

「おぉ!!ありがとうノーザン!!」

 

「何貰ってんだ…」

 

「袋みたいだな…」

 

ノーザンがマキシモに渡したのは何かの小袋

 

「あれだ。ヤバいブツの取引だ…」

 

「何入ってるか予想しようぜ…」

 

「親子で集まって何してるんだ??」

 

「さっき戦車がいっぱいいましたよ!!」

 

そこに隊長と涼平が来た

 

この二人の組み合わせも結構レアかも知れない…

 

「見ろ…あそこに筋肉ダルマがいるだろ…アイツの手に持っているのは何だと思ってな…」

 

俺達四人は建物の陰から様子を伺う

 

「種モミじゃないか…??」

 

「今日より明日、ですか??」

 

「よし、涼平。俺と聞きに行くぞ」

 

「了解ですっ」

 

 

 

 

「や、やぁ…」

 

「こんにちは…」

 

俺も涼平も、近寄っただけで筋肉の圧に負ける

 

何だこの筋肉は…スゲェな…

 

「むっ!!貴様はリチャードの息子では!!」

 

「そ、そうです…」

 

「こっちの坊主は…」

 

「わっ!!」

 

マキシモは涼平の体を触る

 

「ふむ…まだまだ筋肉が付きそうだ!!どうだろう!!このマキシモの部下になって筋肉を鍛えんか!!」

 

「すみません、ウチの旦那が…私はノーザンプトン。マーカスには済んでるから…後は君ね、坊や??」

 

「「奥さん!?」」

 

どう考えても釣り合わない

 

絵に書いたような美女と野獣…もとい筋肉

 

「あ…えと!!自分は横須賀所属サンダース隊の綾辻涼平ですっ!!」

 

「マーカス・スティングレイだ。医者をやってる」

 

「「リチャードの息子が医者!?」」

 

今度は二人が驚く

 

「あのっ、リチャードのかぁ!?」

 

「お嫁さんに似たのでは…」

 

「酷い言われようだぜ筋肉ダルマぁ!!」

 

「やーっと本人がきよったぁ!!」

 

親父とヴィンセントが到着し、すぐに喧嘩が始まる

 

「はんっ!!嫁さんは美人だが!!相変わらず脳味噌は筋肉で詰まってんな!!」

 

「素晴らしい事ではないかぁ!!脳味噌も筋肉!!つまり貴様より強い!!」

 

「それと!!マーカスはこの!!俺様に似たんだ!!博識で、勤勉で、何より人に手を差し伸べる!!違うか!!」

 

するとマキシモは急に考える

 

「…確かに最後のは貴様譲りかぁ」

 

「…だろ??」

 

「…うむ」

 

「お前が単純だが良い奴と言われるのはそこなんだよ、マキシモ。久々だな??」

 

「うむっ!!また貴様のケツを守ってやる!!」

 

口論はするが仲は良いみたいだ

 

「…昔、大喧嘩してからお互いに手を出さないと誓ってるのよ」

 

「…私ともそうだ」

 

「そ、そっか…」

 

「マーカス、涼平、二人は放っておこう。しばらく無理だ。ノーザン先生、我々と昼食でも」

 

「そうですね!!そうしましょう!!」

 

四人で間宮に入る…

 

二人からのマキシモの話で盛り上がる

 

マキシモの武勇伝は聞けば凄い物だった

 

数多の戦場を駆け抜け、勝利を掴んで来た

 

そして取り残された兵士に手を差し伸べ、必ず本国に返す

 

それがマキシモのやり方だ

 

手を差し伸べられた兵士の何人かは戦車部隊に鞍替えをし、未だにマキシモの部下として在籍している

 

ヴィンセント曰く"世界一ガラの悪い、世界一ピュアな戦車部隊"

 

ノーザン曰く"世界一バカで、世界一カッコいい戦車部隊"

 

「そう言えば、さっき何を渡してたんですか??」

 

涼平の言葉で、三人の視線がノーザンに向く

 

「あれはパンジーです」

 

「あぁ…そう言えば奴はガーデニングが趣味だったな??」

 

「私が彼と結婚した理由も、彼がタンクトップ1丁でお花に水やりをしていた姿を見たからなんです」

 

タンクトップ1丁と聞き、涼平が一瞬こっちを見た

 

「マーカスもタンクトップ1丁で治療してくれますよ??」

 

「隊長もタンクトップ1丁で色々します」

 

「見ましたでしょう!?あの筋肉!!清潔感が無いと言って頭部は永久脱毛!!暇があれば筋トレ!!そんな彼がジョウロを持ってガーデニングですよ!?意外過ぎて最初は別人を疑いました…」

 

「「「確かに…」」」

 

ノーザンの熱弁を聞き、三人共たじろぐ

 

「マーカスはほら、想像が出来ます。タンクトップ1丁でモルヒネを打ち、患者を安心させる言葉を吐く姿が。きっと革ジャンは誰かに被せたのでしょう」

 

「隊長がそれするのはすぐ想像出来ます…」

 

「現に私達は見てきましたからね」

 

「"アレ"がガーデニングするの想像出来ます??」

 

「「「アレ…」」」

 

言われてみれば想像出来ない…

 

頭の中でムッキムキのパンジーが咲いている花壇の前で高笑いしてるのが出て来た位想像出来ない

 

「戦車で荒らしてしまった土地を、いつかお花でいっぱいにする。そして自分がいつか廃業して、フラワーショップをするのが自分の目標と聞いて…ハートを打ち抜かれてしまって…」

 

「カッコいい…」

 

「フラワーショップか…」

 

「あの性格だ。客は付くだろうな…」

 

その数日後、マキシモの性格を知る事になる…

 

 

 

 

 

数日後の朝…

 

まだ朝霧が立ち込める中、マキシモはジョウロ片手に花壇の花に水をやる

 

「おはよございます」

 

「うむっ!!おはよう!!私はマキシモ!!君の名前は何だぁ!?」

 

「わしんとん」

 

ワシントンは早く起きたので一人で双眼鏡片手にその辺を散歩していた

 

その道中でマキシモを見かけた

 

「そうかぁ!!お花は好きかぁ??」

 

「おはなちゃ」

 

ワシントンは花壇を見る

 

花壇の花はまだ芽も出ていない

 

ワシントンはここにお花が咲く事をまだ分かっていない

 

「ふみふみだめ??」

 

「そうだなぁ…お花さんが泣いちゃうかも知れないなぁ!!」

 

「わかった」

 

「お花さんはなぁ、お水がご飯なんだぞぉ!!」

 

「おみず??」

 

「そうだぁ。やってみるかぁ??」

 

「うん」

 

マキシモに持ってもらいつつ、ワシントンはジョウロで水をやる

 

「満腹になっちゃうとおデブになって出て来なくなっちゃうんだぞぉ??」

 

「どれくらい??」

 

「土の色が変わる位だなぁ!!」

 

「ちょろちょろおみず。はよおっきくなれよ」

 

「よ~し!!朝はこの位にしてやろう!!」

 

「おはなちゃ、ごはんおわり」

 

「ワシントンちゃんもご飯かぁ??」

 

「わしんとんもごは」

 

「いっぱい食べて、いっぱい強くなるんだぞぉ!!」

 

「うん」

 

ワシントンは家族の元へと戻って行く…

 

「今の娘…いやっ!!そんな事はないっ!!」

 

「性が出るなマキシモ」

 

「ヴィンセントかぁ!!」

 

入れ替わりの様にヴィンセントが来る

 

「ヴィンセントぉ…そのだな…」

 

「…」

 

何かを隠す様に、ヴィンセントは帽子を深く被る…

 

「そうだ…お前の察してる通りだ…」

 

「やはりかぁ…」

 

「内緒にしてくれないか」

 

「ヴィンセントがロリコンだとは…」

 

「それでも良い」

 

マキシモのガーデニングの手が止まり、ヴィンセントの目を見る

 

帽子で隠れていない左目だけでマキシモを見返している

 

「まっ!!まぁあれだぁ!!人の恋路を邪魔する奴ぁロクな死に方しないからなぁ!!このマキシモ、応援させて貰うぞぉ!!」

 

「すまない…恩に着る…」

 

「うひぃ…貴様等から礼を言われると寒気がすらぁ!!邪魔するこたぁねぇから向こう行け!!」

 

「分かった。邪魔をした」

 

「いや…一つ聞かせろぉ、ヴィンセント」

 

「何だ」

 

帰ろうとしていたヴィンセントは、少しだけマキシモの方を向く

 

「やはりその…似ているから、か??」

 

「…本人だ」

 

「そ、そうだったかぁ!!よしっ!!男の約束だぁ!!墓まで持って行かぁ!!」

 

「ふ…お前に限っては世界で一番信用出来る言葉だ。ありがとう、マキシモ…」

 

「だぁ〜っ!!貴様等が礼を言うなぁ!!悪態をつけぃ!!寒気がすらぁ!!」

 

「分かった分かった…"デート"があるから、これで失礼する。待たせてるんだ」

 

「それは良くないなぁ!!とっとと行けぃ!!」

 

ヴィンセントが去り、今度はランニングしている連中が来た

 

「おはようございます!!」

 

「おはようございます!!」

 

ランニングしていたのは涼平と園崎

 

「おぉ〜!!おはよう!!朝から性が出るなぁ!!どうだぁ!!このマキシモの戦車部隊に入隊しないかぁ!!」

 

「いざマキシモさんの戦車部隊に入隊になった時の為に体力作りをしています!!」

 

「その内戦車の操縦も勉強します!!」

 

「素晴らしい心掛けだぁ!!よ〜し、行って来い!!」

 

二人は数日でマキシモの回避の仕方を覚えていた

 

頭まで筋肉で出来ているが、人の良さ故に大概の連中に声を掛けられている

 

 

 

 

人一倍仲間思いであるマキシモは、若い二人が"大規模な戦争"に参加せざるを得なくなってしまったのがどうしても許せなかった…

 

しかし、戦車ではどうする事も出来ずにいた

 

せめて出来るのは時期を待ち、向こうまで行って彼等を無事ここに送り届ける事

 

そしてその思いは二人に伝わり、ちゃんと戦車に乗って安全な場所まで帰って来た

 

 

 

 

と、ヴィンセントやリチャードは語ってくれているが、その実はどうにかしてこの若い二人を戦車部隊に引き入れるかしか考えていなかったのが事実である


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。