艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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このお話で特別編はおしまいです




特別編 魔女の手先と後始末

「そっ、良かった。空爆は中止するわ」

 

《そっちに何人か連れ帰るかもしれない》

 

「裏切ったりしないなら雇ったげるわ??」

 

《お前が怖いらしいぞ??》

 

「魔女って呼ばれてんでしょ??アタシ」

 

《まぁな…俺はっ、死神だしな…》

 

数時間前に通信をしたはずなのに、随分懐かしい気がするレイの声…

 

落ち着いたのか、後ろが随分うるさそうだ

 

「今何やってんの??」

 

《今か??俺は診察に当たってる。他の連中は…》

 

《ど〜だぁ!!美味いかぁ!!》

 

《美味い…これがワショク…》

 

《温まる…はぁっ…》

 

《がーはっはっはっは!!いっぱい食えよぉ!!》

 

《んまぁ飯中だ》

 

「アンタが帰って来ないと淋しいわ…」

 

《すぐ帰るさっ!!あっ!!ジェミニちゃん!!やっほ〜!!》

 

「大淀!!助かったわ!!レイ、大淀と代わって頂戴!!今何処にいるの??」

 

《今はヴィスビューだよ!!ここ良いね!!》

 

「レイは大丈夫そう??」

 

《今の所はね。診察したり治療したりでてんてこ舞いだけど、やっぱり嬉しそうだね!!》

 

「そう…根付いたらどうしようかと思ったわ??」

 

《大丈夫そうだよ??ちゃんと帰る計画も練ってるみたいだし、引き継ぎもしてるし、うんっ!!タナちゃんも迎えに行かないとね??》

 

「そろそろゴネてるかしら…」

 

《んな事でゴネないでち。こっちのご飯も美味しいでちよ!!》

 

急にタナトスとの通信が入る

 

タナトスは目と鼻の先にあるレストランにケータリングを頼み、ずっと艦内で食事をしている

 

「タナトス??帰ったら一緒にご飯行きましょうね??」

 

《帰ったら創造主におもちゃ買って貰うんでち!!》

 

時たま忘れそうになる

 

この子達はまだまだ子供

 

お金や美味しい食事より、おもちゃの方が喜ぶ

 

「そう言えば、タナトスはそこから動かないの??」

 

《ここなら最悪、創造主やらウクライナを全域守り切れるれち。また連絡するでち》

 

何かを食べているのか、シャクシャク音を立てながらタナトスは私の質問に答え、通信を切る

 

《タナちゃんも元気そうだね》

 

「そうね…早く戻って来て、いつもの生活に戻って欲しいわ…」

 

《すぐに帰るよ。心配しないで!!じゃ、また通信するね!!》

 

大淀との通信も終わる

 

通信機を置き、キッチンに向かう

 

「まみ〜きた」

 

「始めましょう!!」

 

「よしっ!!今日はちゃんと作るわ!!」

 

 

 

 

 

その日の夜…

 

ヴィスビューの港でタバコを吸う…

 

「ここはパースの生まれ故郷なんだ」

 

タバコを吸っていたら横に親父が来た

 

「ここも一度戦火に巻き込まれたんだな」

 

「そっ。だがまぁ…新婚旅行にはピッタリな街さっ!!」

 

「ドクター…」

 

最後に手を貸してくれた反ロシア兵が来た

 

恐らく彼は隊長か何かだ、貫禄が違う

 

「礼を言う。ありがとう、救ってくれて」

 

「帰る場所を奪ってしまった…」

 

「気にするな。どの道終わっていたんだ。遅かれ早かれな…」

 

「部下の怪我はどうだ??」

 

「二人共安定している。それでだドクター…ここまでして貰って何だが…一つ頼み事があるんだ」

 

「国を返せ以外だぞ??」

 

彼は一枚の写真を取り出す

 

「おっ、これは…」

 

親父が先に反応する

 

「部下に一人大ファンがいてな…隊長であるドクターに許可を貰いに来た」

 

「喜んでやってくれるハズだぞ!?」

 

「行ってみても構わないか??」

 

「勿論さ!!」

 

「ありがとう、すぐに行って来る!!」

 

彼は走って行ってしまった…

 

「良い隊長だな…」

 

「あぁいう奴が生き残ってくれて良かったよ…」

 

 

 

 

私の名前はイリッチ

 

最後に彼等の味方をした、元ロシア兵の隊長だ

 

半分捕虜としての扱いを受けているが、ドクターマーカス達のお陰で半ば自由に動けている

 

部下二人と前線に放り投げられ、部下は大怪我もしたが、彼等は救ってくれた

 

今はとある人物の所へ向かっている

 

「よしよし…食えるか??」

 

「あぁ…ありがとう、もう自分で食べられるよ」

 

「消毒しますよ!!」

 

「よし…頼、イデェ!!」

 

彼の部下二人が、病室を行ったり来たりしている

 

「ふぅ…よし、涼平。バトンタッチしようぜ!!」

 

「そうですね!!ふぅ…」

 

丁度休憩に入る二人が目に入る

 

とりあえず"白鳥"に礼を言わねば…

 

「白鳥。ありがとう」

 

「イリッチさん、もう怪我は大丈夫ですか??」

 

「大丈夫だ。君達がいなければ我々は死んでいた。必ずこの恩は返す」

 

「気にしないで下さい」

 

「彼は白鳥の友人か??」

 

「俺は園崎。よろしくな!!」

 

「イリッチだ。部下共々、感謝する」

 

握手を交わす

 

この男だ、気迫も握力も違う

 

手を離し、彼に一つのお願いをする

 

「ここまでして貰って何だが…折り入ってソノザキに頼みがある」

 

「俺に出来る事なら…」

 

私は彼の前に一枚の写真を出す

 

「実は部下がソノザキの大ファンで…ここにサインを頂けないものかと…」

 

私が探していたのはこの、ソノザキと言う男

 

あの時写真を預かったのは、部下の一人の夢でもあった

 

いつの日か、ソノザキにあってここにサインを貰うのだと…

 

「どっちだ??」

 

「手前の方だ。いいのか??」

 

ソノザキは既に部下の方に足を進めている

 

「ファンサービスは大事だからな!!」

 

「感謝する、ソノザキ!!」

 

「よっ!!」

 

ソノザキが部下の前の椅子に座ると、私の部下は顔を向ける

 

「ソノザキ…ありがとう、救ってくれて」

 

「ファンだったら先に言ってくれよ…どれっ…」

 

写真の片隅に、ソノザキはサインを入れてくれた

 

「嘘だろソノザキ…いいのか!?」

 

「ほらっ!!」

 

「はは…ありがとう!!わぁ…!!」

 

まるで子供の様に喜ぶ私の部下

 

彼が随分前に宿舎で同期と共にソノザキの試合を食い入る様に見ていたのを昨日のように覚えている

 

「貰えたか??」

 

「ドクター、ありがとう」

 

「隊長!!自分のファンがいました!!」

 

「良かったじゃないか!!どうだ??生きてみるもんだろ??」

 

「あぁ、ドクター!!言う通りだ!!」

 

ドクターマーカスも来た

 

彼の部下の扱いは、二人を見ていてよく分かる

 

優秀な部下が自分の意思で着いて行っている…

 

「でざ〜とで〜す!!」

 

「おいちかったれすか??」

 

「久々に美味い物を食べたよ。ありがとう女神のお二人さん??」

 

「せあろ??」

 

「あいっ!!ちゃいち〜ぷいん!!」

 

ドクターの娘かが、デザートを持って来てくれた

 

二人の前にもプリンが置かれる

 

「ちゃんと治ったら、美人があ〜んしてくれるぞ??」

 

「本当か!?」

 

「本当に生きてみるもんだな!!」

 

生きる活力を見出すのも、ドクターは上手い

 

「さっ、食ったらもう休め」

 

「おやすみ、ドクター。おやすみなさい、隊長…」

 

「おやすみなさい…」

 

「おやすみ。ゆっくり休むんだぞ」

 

二人共すぐに眠りについた…

 

私達は病棟を出て、タバコに火を点ける

 

「イリッチ。俺からも頼みがある」

 

「何でも言ってくれドクター」

 

ドクターは革ジャンの内ポケットから小さなケースを取り出す

 

「ロシアに知り合いがいてな…随分昔の事だが、俺にお菓子をくれた奴がいた」

 

ドクターは話しながらケースを開ける

 

中には葉巻が3本入っている

 

「吸うかどうかは分からないが、今それしか持っていない。そいつに渡して欲しい」

 

「どんな奴だ??」

 

「頭にアザがある爺さんだ。すぐ分かる」

 

私もその人物に覚えがあった

 

だが、その人物は既に…

 

「ドクター…その…彼はもう…」

 

薄々は察していたのか、ドクターはすぐに頷く

 

「なら、墓に置いてやって欲しい。長年お返しが滞って、すまなかったと…」

 

「了解した」

 

 

 

 

数日後、ドクター達は帰路に着く

 

部下二人は完治とまでは行かないが、後は安静にしていれば十二分に治る

 

本当は着いて行きたかったのだが…

 

私にはやる事が出来た

 

今度は私が自身の国をもう一度救う番だ…

 

 

 

 

 

 

「ボリス!!」

 

「マーカス!!無事だったか!!」

 

帰りにセバストポリにもう一度寄る

 

「もう一度ウクライナは再建だ!!さぁ!!忙しくなるぞ!!」

 

「…ありがとうボリス。世話になった」

 

「こっちのセリフだマーカス…必ずまた会おう!!」

 

ボリスと握手し、最後に全員でレストランに寄る

 

…タナトスが散々運ばせて食っていたツケを払いに来た

 

「タナトスが世話になった」

 

「此方こそ!!守護神がいる生活も中々良かったですよ??」

 

「幾らだ??」

 

財布を出そうとした時、まさかの答えが返って来た

 

「もう頂いておりますが…」

 

「…誰にだ??」

 

「ワシじゃマーカス!!」

 

レストランの席に座っていたのは一人の婆さん

 

「ウクライナを救ってくれた礼じゃ!!」

 

「いいのか??」

 

「やっすいもんじゃ!!わっはっは!!」

 

婆さんの割には若くて可愛い声をしている

 

「…アンタ、無線で聞こえて来た」

 

「んにゃにゃ!?んな訳なかろう…ワシは一般ピーポーじゃぞ…全く、これだからリチャードの息子は…」

 

「親父の知り合いか??」

 

「んんっ!!何でもない!!何でもないぞマーカス!!」

 

「何で俺の名前を知ってる」

 

「にゃっ!?そ、それはじゃな…んんっ!!女は秘密の多い方が良かろう!!ではな!!」

 

「うわ!!何すんだ!!ゲホゲホ!!」

 

謎の老婆はいきなり煙幕を投げて逃げ去った

 

…何だったんだ、全く

 

「とりあえずボルシチを」

 

「畏まりました!!」

 

「ったく…うっ!!」

 

座った途端に後ろから誰かに抱き着かれた

 

「よく頑張ったなマーカス!!お姉ちゃんが褒めてやろうな!!」

 

音も無かったぞ…

 

余程の手練れか??

 

「ん〜!!勇敢な弟は…お姉ちゃん大好きだ!!」

 

力強さの中に甘い声が混じっている…

 

何処かで感じた感覚だ…

 

あれか、ジェミニの声質と似てるのか…

 

考えろ…ジェミニは滅多に自分の事をお姉ちゃんとは言わない

 

俺の事を弟とも言わない

 

…しかし良い匂いだ

 

「私の元に来ないかマーカス…お姉ちゃんの所に…」

 

「やめろ…俺は落ちんぞ…」

 

とは言うものの耳元で囁かれ、身震いする

 

「見ろ。他の弟はお姉ちゃんに落ちたぞ」

 

「なっ!?涼平!!園崎!!」

 

涼平と園崎が既にヨダレを垂らして意識不明になっている!!

 

「さぁマーカス??お姉ちゃんの弟になろうな??」

 

「そこまでです」

 

俺と謎の女性の間に刀が置かれる

 

「マーカスは私の大切な友人でしてね。みすみす渡す訳には行きません」

 

エドガーが助けに入ってくれた

 

「ふっふっふ…粗暴な弟もお姉ちゃんは大好きだ!!」

 

謎の女性はエドガーに矛先を向ける

 

「うわ来るなやめうわぁぁぁぁあ!!マーカス助けて死ぬ!!」

 

「ほ〜らエドガー!!お姉ちゃんに好きって言ってみろ!!そしたら離してやるぞ??」

 

「吐く!!死ぬ!!オェ!!イヤぁぁぁあ!!」

 

普通はエッチな本で聞く声をエドガーが情けなく出す

 

普段の執行人の面影は一切ない

 

謎の女性はエドガーに抱き着き、離そうとせず、それどころかほっぺたをスリスリしている

 

「はぁ…ライコビッチ」

 

「マーカス!!ようやく気付いてくれたか!!」

 

謎の女性はライコビッチ

 

過去にアラスカの基地で世話になっている女性だ

 

「離せこのモノノケ!!」

 

「お姉ちゃんにその口答えはなんだエドガー!!罰としてチューしてやる!!」

 

「うわぁぁぁぁあ!!あっ…」

 

エドガーは急性ストレスの為、意識不明になってしまった…

 

「ぴ〜ぽぴ〜ぽ〜!!」

 

「きんきぅはんしぉ〜!!」

 

ひとみといよの担架でエドガーは運ばれて行く…

 

「あの可愛い妹はなんだマーカス!!」

 

「あの子はひとみといよさ。久々だな??」

 

「うむっ!!」

 

「お知り合いですか隊長??」

 

「あっぶねぇ…落ちかけた…」

 

「ライコビッチは良い奴だ。れっきとした横須賀の友達だよ。もしかして、道を開けてくれたのはライコビッチか??」

 

「うむ。アラスカの基地はアメリカとの共同運営だったのだがな…今回の件でロシアが弾かれたんだ…ま、最後の仕事さ!!」

 

「横須賀に来いよ。ガングートも待ってる」

 

「さっきジェミニから連絡があってな。私はリョーボになる!!お姉ちゃんではなく!!一気に母だ!!」

 

「そ、そっか…」

 

「緊急時には副司令官も任されるそうだ!!弟と妹の面倒を見れる!!ふへっ!!」

 

別の意味でヤバそうな奴だ…

 

ジェミニと良く似てるのか…

 

敵に回る心配はないが、なーんかやばい気がする…

 

「して…マーカス。エドガーをありがとう」

 

「心配か??」

 

「この世で唯一血の繋がった家族だ」

 

「それでか…」

 

何故かは分からないが、薄々は分かっていた

 

殺されたと思っていたエドガーの姉はライコビッチ

 

今の言葉で確信に変わった

 

「お待たせしました〜」

 

「ありがとう」

 

ボルシチが目の前に置かれる

 

「頂きますっ」

 

ライコビッチに見つめられながら、俺達3人はボルシチを頬張る…

 

「あ…あのぉ〜…」

 

「何だ??」

 

「今すっごい幸せな気分なんですけど〜…」

 

「そうだろう??」

 

いつの間にかライコビッチは後ろから涼平に抱き着いている

 

「ルカを救ってくれた礼だ…」

 

「は、はひっ…」

 

「次は貴様だなソノザキ!!」

 

「ちょっ、待っ、はぐっ!!」

 

ロシア兵の攻撃をひらりひらりと避けられる反射神経の持ち主の園崎が、先読みされてライコビッチの胸に置かれる

 

「貴様もルカを救ってくれたな…ありがとう…」

 

「…」

 

園崎のまぶたが落ちて行く…

 

疲れがここに来て一気に出たのか、ライコビッチの胸に頭を置いたまま、スプーンを落とした

 

「よしよし…良い子だ…」

 

「ぴ〜ぽぴ〜ぽすう??」

 

「つ〜じぉ〜はんしぉ〜!!」

 

今度は園崎が搬送されて行く…

 

「座っても良いか??」

 

「園崎のボルシチ食べてやってくれ」

 

「ん、頂きます!!」

 

今しがた弟!!妹!!と言っていたライコビッチは、意外にも上品にボルシチを食べている

 

「そう言えばライコビッチ。タシュケントはライコビッチが寄越したのか??」

 

「うむ。あの子も国に従事するのが常だと思ったのだがな…こうなる事を先読みして、安全な場所に置かせて貰ったんだ」

 

「そうだったんですか…」

 

「涼平が大切にしてくれてる。俺から見てもな??」

 

「そうか!!タシュケントの旦那か!!」

 

「はいっ、自分がそうです!!」

 

「やはり任せて正解だったか…リョーへーだったな??正式に私がお姉ちゃんになったぞ!!」

 

「まさか…」

 

「あぁいや違う。私は産んでいない。タシュケントはロシアで教師をしていたんだがな、適性が出て艦娘になった」

 

一言も産んだと言っていないのに、ライコビッチは産んでいないと答えた

 

俺が聞きたかったのは、エドガーと血が繋がっているのかどうかだったんだが…

 

「エドガーと血が繋がっているのは私だ」

 

「先読みされたか…」

 

「弟の考えは手に取る様に分かる」

 

ライコビッチがボルシチを口に運びながら何気なく言った言葉が、得体の知れない恐怖の様な感覚が俺の背筋を走った…

 

「よしっ…帰ろうか!!」

 

「はいっ。ごちそうさまでした!!」

 

「あの…また来てくれますよね??」

 

「勿論さ!!ここには友達も出来たしな!!」

 

俺達はウクライナを後にする…

 

 

 

 

物凄く長い間、ここに居た気がする…

 

一ヶ月程の期間だったが、本来の目的も忘れそうになる時もあった

 

また来よう…

 

今度は友人に会いに…

 

 

 

 

 

横須賀に着いてしばらくしたある日…

 

「そう…分かったわ。次は手の平返しちゃやぁよ??レイ??そこにいるわ、代わったげる!!」

 

子供達と遊んでいた最中、横須賀から電話を受け取る

 

《やぁ、ドクター!!》

 

「イリッチか!!怪我はどうだ??」

 

《すこぶる良くなったよ!!ドクターのお陰だ。今日は報告があって連絡を入れさせて貰ったんだ!!》

 

「聞かせて貰おうか」

 

《最初に伝えなきゃならないのは、言われていた物はモスクワにある墓前に供えて来た》

 

「ありがとう…手間、掛けさせた」

 

《それでだな!!》

 

イリッチの嬉しそうな声を聞き、話は続く…

 

 

 

 

 

同時刻、ウクライナ

 

「申し訳ない、サイクロップス。この様な場所で…」

 

「構いませんよ。この様な場所の方が私も肩肘張らずにいれますので」

 

「ん…ありがとう、サイクロップス」

 

「祖国の危機に駆け付けるのは普通の事ですよ、大統領」

 

エドガーとウクライナの大統領は病院の食堂で、少しだけ豪華な食事を取りながら話している

 

エドガーが帰還すると聞き、急いで来てくれたのだ

 

「…何故入院していた??被弾したのか??」

 

「軽い蕁麻疹です。後は急性ストレス性障害、嘔吐、痙攣、その他諸々」

 

「大変だったな…」

 

「えぇ。ロシア兵より女の方が敵です」

 

エドガーはあれから緊急入院措置になり、本日付でようやく退院出来た

 

「そうだサイクロップス。勲章を渡しに来た!!」

 

「丁重にお受けします。ありがとうございます」

 

大統領に勲章を付けて貰い、ようやくエドガーは"終わった"と実感する

 

「何か望みは??」

 

「ふふ…帰って妻のご飯を食べたいですね」

 

「結婚しているのか!?」

 

「私は生粋のロリコンだとアレンかマーカスからお聞きしましたか??」

 

「い、いや…ジェミニから…」

 

「そうですか…ジェミニなら仕方がありません…彼女は私の事を理解してくれますからね」

 

「彼女は復興の手配もしてくれた。ロシアは途轍もない女性を敵に回したんじゃないのか??」

 

「ふふっ…いつか彼女に会えば分かりますよ。ごちそうさまでした」

 

「サイクロップス、君の故郷はここだ。忘れないでくれ」

 

「えぇ、勿論です。では大統領、またいつの日か」

 

エドガーが敬礼をしないのを知っているのか、大統領は右手を出し、エドガーはしっかりと握り返した

 

 

 

 

次の日、エドガーは横須賀へと戻る

 

「淋しくなるな…」

 

飛び立つ少し前、ボリスが見送りに来てくれた

 

「その内また皆で来ますよ。今度は遊びに」

 

「ん…元気でな!!」

 

「ではっ!!」

 

キャノピーを閉め、赤黒いSu-57がウクライナを去り、魔女の元へと帰る…

 

 

 

 

横須賀の人員が全員引き上げた所で、俺達が介入出来る事は終わりを迎える

 

後は上手い連中がやればいい

 

俺達が出来るのは、ここまでだ…

 

この件で俺達はもう少し波乱があるのだが、それはまた別のお話…




ここまで読んで頂き、ありがとうございます

多種多様な意見は勿論あると思います

ただもう一度言うなら"作中の中での戦い"のお話になります

逃げていると捉えられても構いません。そうとしか私には言い様がありません



次回からはまた彼等の日常のお話になります

重ね重ね言わせて頂きます。ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました

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