艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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前回のお話に引き続き、白露とフミーのお話です

バックバク食べる白露とは正反対で、ほとんど物を食べないフミー

フミーが食べない原因とは…


318話 フミーの栄養補給日誌

あれから数週間後…

 

「お勉強の時間ダズルな‼︎」

 

単冠湾に配属になった二人は、榛名達とお勉強の時間

 

リシュリューの膝の上には白露が

 

ニムの膝の上にはフミーがいる

 

「世界最強超絶美人艦娘は誰ダズル⁇」

 

「初っ端から難しいわね…」

 

「フミーちゃんは誰だと思うニム⁇」

 

フミーは真顔でニムの顔を見た後、榛名を指差す

 

「そう‼︎偉いダズル‼︎」

 

「白露は誰だと思…ンフッ‼︎」

 

リシュリューが笑う

 

白露は満面の笑みで自分を指差していた‼︎

 

「ゼッテー白露ツエー子になるダズルな…」

 

続いて榛名は、空き缶を二人の前に置く

 

「元気の出るジュースはどっちダズル⁇」

 

空き缶はジュースとどう見てもビールの空き缶

 

「榛名さん、見られてるわ⁇」

 

「榛名の元気の出るジュースニム‼︎」

 

二人が瞬時に指差したのはビールの空き缶

 

「こいつはマズイダズルな…あ‼︎榛名の好きなのはどっちダズル‼︎」

 

榛名が二人の前に置いたのは、くまのぬいぐるみとタバコの空箱

 

白露は満面の笑みで

 

フミーは真顔で

 

瞬時にタバコの空箱を指差す

 

「榛名、ヤバいニム‼︎見られてるニム‼︎」

 

「二人の好きな物〜、なのに、榛名の好きな物ね⁇」

 

「い、いやぁ〜…本日より行動を改めにゃならんダズルな‼︎」

 

ビールは夜に二人が寝た時に何度か飲んだが、タバコだけは吸っていないはずの榛名

 

だが、二人には何故か筒抜け

 

「ご飯できましたよ〜」

 

HAGYが朝ご飯を持って来てくれた

 

白露はリシュリューに抱っこされ、ご飯の席に

 

フミーはニムに抱っこされ、同じ様なご飯の席に座る

 

HAGY特製の離乳食が置かれ、白露の目線は早速それに行く

 

「あ〜んっ‼︎」

 

リシュリューにスプーンを口に入れて貰い、バクバク食べる白露

 

しかし…

 

「美味しいニムよ⁇」

 

フミーは口を一文字にし、全く食べようとしない

 

「美味しいダズル‼︎」

 

榛名が食べて見せるが、一瞬榛名を見るだけでやっぱり食べない

 

「まだここに慣れてないのかな…」

 

ワンコも心配になる

 

フミーは中々ご飯を食べない

 

白露は心配は無い

 

「リシュリューの指はご飯じゃ無いわ‼︎」

 

離乳食が無くなったら、満面の笑みでリシュリューの指を齧っている

 

問題はフミーだ…

 

その日の昼…

 

「マーカスおじさん、ありがと」

 

今日はアトランタを連れてパースピザに来た

 

「ママと来たら、ママすっごい食べるの」

 

「貴子さんは良く食べて良く動いてるからな…その分栄養が必要なんだ」

 

「ぼっちゃん‼︎アトランタちゃん‼︎パースピザパース‼︎」

 

「「ありがとう」」

 

俺はSのピザを一枚

 

アトランタはLのピザを二枚

 

「これはサービスのリンゴのシュワシュワパース‼︎」

 

「ありがと」

 

「パースのシュワシュワは美味しいんだぞ⁇」

 

アトランタは早速リンゴのシュワシュワを飲む

 

「ホントだ。美味しい」

 

「あ、マーカスさん‼︎」

 

「おぉワンコ‼︎悪いな、デート中だ‼︎」

 

「ダメだよ。ワンコさん用事」

 

ピザをモゴモゴしつつ、アトランタは俺をワンコの方に向ける

 

「ならちょっとだけ…」

 

アトランタが見える範囲の席に移動し、ワンコと話す事になる

 

「すみません、デート中に…」

 

「どうしたんだ⁇」

 

「実は、フミーが全然ご飯を食べなくて…」

 

それを聞いて、真面目な顔に切り替える

 

「そいつは話が別だな。いつから食べてない」

 

「ずっとです。三人が何とか口に入れているのですが…」

 

「こんな所で話すのも何だが、ちゃんと食ったら出てるか⁇」

 

「はい。それは三人が確認しています。でも、一食でスプーン三杯食べたら、もう食べないんです…」

 

「分かった。半日程待ってくれ」

 

すぐに席を立ち、アトランタの所に行こうとした

 

「あの‼︎自分が言うのも何ですが、デートは⁉︎」

 

「子供の事だ。アトランタも納得してくれ…」

 

「そう。あたしより他の女を優先するんだ」

 

全てを聞いていたアトランタ

 

「い、いや〜…その〜、アトランタさん…」

 

アトランタは少し笑って返す

 

「いいよ。でも、また近い内に連れて来てね」

 

「アトランタはこれからどうするんだ⁇」

 

「時間まで駄菓子屋にでもいる。ママには言っておくから。頑張ってね」

 

一気に大人らしくなったアトランタ

 

おちょくり方も貴子さんに似て来ている

 

「…これでアトランタにシバかれたらお前の所為だからな」

 

「じ、自分が受けますぅ…」

 

アトランタはご存知の通り、貴子さんの血を色濃く受け継いでいる

 

気迫もそろそろ同じ様になってきた…

 

ワンコは横須賀で買い物を済ませ、一旦単冠湾に戻った

 

俺は横須賀の工廠と研究室を行き来する

 

「おや。飲み物の開発かい⁇」

 

本棚の資料を見ていると、ヒョッコリ顔を見せてくれた大淀博士

 

俺が見ているたった一ページで何を作ろうとしているか把握した

 

「そっ。赤ちゃんでも飲めて、栄養取れる奴をな…俺の作った経口摂取型の修復剤じゃちょっとキツ過ぎてな…」

 

経口摂取型の修復剤なら、既に完成している

 

あれは赤ちゃんでも栄養を補給出来るが、赤ちゃんが摂取し過ぎると栄養過多になり易い

 

どうにかして、もう少し栄養価を下げれれば良いが…

 

「赤ちゃんねぇ…あ、そうだ‼︎」

 

大淀博士は一旦別の本棚に行き、別の資料を持って来た

 

「これ、大淀博士が経口摂取用に作った資料なんだけど、レイ君が作ったのが高性能だからオジャンになったんだ」

 

大淀博士から資料を受け取り、中を見る

 

「手伝ってくれないか⁇」

 

「勿論‼︎」

 

大淀博士と原材料を集めに向かう…

 

原材料とは言え、普通にスーぴゃ〜マーケットで手に入る

 

「よしっ‼︎とりあえずこれでオッケー‼︎」

 

カートに置かれたカゴには、野菜やら普通は料理に入れるスパイスが入っている

 

「後は一つだな」

 

「ここが問題だね…」

 

スーぴゃ〜マーケットで買った原材料から成分を抽出するのは大淀博士がやってくれる

 

問題は“その母体になる水分”が市販製品では合わない事

 

理由は簡単。何らかの添加物が入っているからだ

 

「大淀さんは成分の抽出をしてるから、レイ君は水分を探してくれるかい⁇」

 

「分かった。ありがとな⁇」

 

「レイ君の為ならいつだって‼︎」

 

大淀博士と別れ、母体である水分を探し始める…

 

添加物が入っていない水分か…

 

横須賀には確かに飲み物が多いが、それら全てが市販製品か、フミーの口には合いそうに無い物

 

コーヒーなんて飲ませたら成分的に危ない

 

炭酸系は赤ちゃんには少々キツイ

 

となると…

 

「ぼっちゃん⁇」

 

必然的に足が向かっていたのはパースの所

 

「パース。炭酸の無いジュースあるか⁇」

 

「いっぱいあるパース‼︎」

 

パースの背後にある大型冷蔵庫から、ジュースが入った容器が幾つも出て来た

 

「ブドウのジュース、オレンジのジュース、リンゴのジュース、後はぼっちゃんが望むなら“生搾り”するパース‼︎」

 

そう、パースの作るジュースは無添加

 

不純物も無く、果肉が入っていたりとかなり評判が良いのに安い

 

「リンゴのジュース、リッターでくれるか‼︎」

 

「あ、ならこれがあるパース‼︎」

 

パースは冷蔵庫からもう一個容器を出してくれた

 

その中にはリンゴのジュースが一リットル程入っている

 

「幾らだ⁇」

 

「ぼっちゃんにプレゼントするパース‼︎」

 

「…今度、みんなを連れて食べに来る」

 

「んふふ‼︎いつでも待ってるパース‼︎」

 

ここはパースに甘えよう

 

有り難くパースからリンゴジュースを頂戴し、店を後にする

 

「坊ちゃん。このパースは、坊ちゃんがお困りの際いつでもお手を貸しますよ」

 

「この成分配合はこうして…あ、ビタミンを補う為にこれを…」

 

研究室では、大淀博士が成分調整を始めていた

 

「良いのが手に入った‼︎」

 

「なるほど‼︎パースちゃんのジュースならピッタシだ‼︎」

 

小一時間もすれば、試作品が完成

 

ちょっと俺達で飲んでみることにした

 

「美味い‼︎」

 

「これなら行けそうだ‼︎」

 

早速哺乳瓶に入れ、夕方にまた横須賀に来るワンコを待つ…

 

夕方…

 

「大淀さん、今日は第三居住区で夜ご飯を食べるんだ‼︎」

 

「ありがとな、忙しいのに」

 

「ん〜ん。平和の為に動いてるレイ君見てる方が、大淀さん好きなんだ‼︎じゃね〜‼︎」

 

大淀博士は高速艇に乗り、第三居住区へと向かう

 

大淀博士を見送った後、ワンコとの待ち合わせ場所である間宮に来た

 

ワンコはまだ来ていない

 

「おい‼︎」

 

「は、はい‼︎」

 

「アイスミルクとアイスココアを寄越すんダズル‼︎」

 

「はい‼︎直ちに‼︎」

 

カウンター席に榛名とニムがいた

 

「白露は元気か⁇」

 

「おーマーカス‼︎白露はバクバク食うんダズル‼︎」

 

「フミーが食べないニム…」

 

フミーのお付きは大体ニムがしているのか、ニムはちょっと落ち込み気味

 

「んなぁに気にする事はねぇダズル‼︎」

 

「ニムゥ…」

 

榛名がニムの頭を撫でたり、背中を摩る

 

「マーカスさん‼︎お待たせしました‼︎」

 

ニムに何か言おうとした時、フミーを抱いたワンコが到着したので、俺達は席をテーブルに移す

 

「俺はアイスコーヒーにするけど、ワンコはどうする⁇」

 

「自分も同じので‼︎」

 

伊良湖にアイスコーヒー二つを頼み、本題に入る

 

「もしかしたら、フミーはまだ離乳食を食べれないかも知れないんだ」

 

「横井の雑炊は食ってたダズル」

 

「普段もちょっとは食べるニム」

 

「そこでだ。とりあえずはこれを準備した」

 

クーラーボックスから、大淀博士と作った経口摂取用の栄養剤が入った哺乳瓶を出し、ワンコに渡す

 

「ほらフミー、ご飯だよ〜」

 

ワンコがフミーの口元に哺乳瓶を近付ける…

 

「あは‼︎」

 

「やったニム‼︎」

 

フミーはチゥチゥと音を立てながら、哺乳瓶の中に入った栄養剤を飲む

 

「やっぱり…フミーは本来”母乳”で育ってる段か…」

 

何故今の今まで気付かなかった…

 

しまった、盲点だった…

 

「どうしたんダズル⁇」

 

「母乳だ…何で今まで気付かなかった‼︎母乳だ‼︎母乳が答えか‼︎」

 

「た、大尉…店内であまり母乳母乳叫ばれますと…」

 

「す、すまん…ありがとう」

 

間宮がそれぞれの飲み物を持って来てくれたタイミングで、母乳母乳と連呼したらしい

 

「おい‼︎」

 

「わ、私は出ません‼︎未婚です‼︎」

 

榛名の「おい‼︎」で気付く間宮も大概だな…

 

「しかし、母乳…ですか」

 

「ここに来てレアアイテムニム‼︎」

 

母乳が“出そうな”艦娘はいるが、実際出せるとなると手の平もいるのかどうか…

 

「とりあえず出そうな奴を当たろう」

 

その問題は、案外簡単に終わる事になる…

 

「横須賀」

 

「なぁに⁇」

 

「母乳出るか⁇へぶっ‼︎」

 

執務室で吹っ飛ぶ俺

 

横須賀は顔を真っ赤にして、俺にこれでもかと渾身のビンタを机の向こうから当てた

 

「さんめーとる」

 

「な、何聞いてんのよ‼︎アンタそんな性癖あった⁉︎」

 

「違う‼︎俺の聞き方が悪かった‼︎」

 

俺の吹っ飛んだ距離を図っているワシントンを撫でながら、事の事情を説明する

 

「なるほどね…最初からそう言いなさいよ」

 

「まぁ俺が飲みたいのもあるからな」

 

「あーそう‼︎ならレイは赤ちゃんな訳ね‼︎ママでちゅよ〜‼︎ん〜、よちよち‼︎」

 

横須賀が背伸びして頭を撫でて来た

 

「…ちょっといいな。じゃない‼︎とにかく、フミーを連れて来る‼︎」

 

執務室を出てすぐの所でワンコに抱っこされていたフミーはすぐに横須賀の胸元に行く

 

「榛名、ニム、来なさい。男衆は出る‼︎」

 

執務室を追い出され、フミーが母乳を飲み終わるまで待つ

 

「母乳とは気付かなかったな…いやぁ参った参った…」

 

「中々出る方いませんものね…」

 

「こう、なんだ。景気良くドバーッ‼︎と出る子はいないもんかな…」

 

「それこそおっぱいソムリエみたいな方が居ないと…」

 

「…いる」

 

そう、俺達には最強のおっぱいソムリエがいる

 

その人なら、誰が母乳が出るか把握しているかも知れない

 

「とりあえず、今日は横須賀に泊まれ。俺はちょっとおっぱいソムリエに享受して貰いに行く」

 

「い、いるんですか⁉︎」

 

「まぁ見てな‼︎」

 

ワンコを横須賀に置き、そのままグリフォンで飛び立つ…

 

「ただいま‼︎」

 

「おかえりなさい、マーカス君‼︎もうすぐお夕飯よ⁇」

 

貴子さんに迎えて貰い、そのおっぱいソムリエに会いに行く

 

そのおっぱいソムリエはテレビの前にいた

 

「たいほう‼︎」

 

「おかえりすてぃんぐれい‼︎」

 

そう、たいほう

 

たいほうは大人顔負けのおっぱいソムリエ

 

たいほうなら誰が母乳が出るか分かるかも知れない

 

「たいほう。頼みがあるんだ」

 

「たいほうに⁇」

 

たいほうにも事の事情を説明する…

 

「あら、マーカス君。たいほうとおっぱいのお話⁇」

 

ご飯の準備をしながら、貴子さんが俺達の話を聞いていた

 

「そうなんだ。一人赤ちゃんを保護して、その子がまだ母乳を飲んでて…」

 

「なら私も出るから、何かあったら言ってね⁇」

 

「ありがとう‼︎」

 

「おっぱいがでるひとはね、らばうるのあたごさん、ねるそんさん、がんびーさん」

 

たいほうはすぐに答えを出した

 

「くれのぽーらさんとじゅんよーさんはだめだよ。おさけのんでるから」

 

それを一人一人書き留めて行く…

 

「とらっくのまなちゃん、おおみなとのかしまさんと、ぼす」

 

「まだいそうか⁇」

 

「すぱいとさんとママとよこすかさん」

 

「横須賀にはいそうか⁇」

 

「たいげーさん、ひゅうがさん、りっとりおさん」

 

「結構いるもんだな…」

 

「さらとがさんと、いんとれさんはでないよ。でそうだけどね」

 

たいほうはずっと真顔

 

真剣に考えてくれてる

 

「ありがとな、たいほう‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

ワンコが行きやすい範疇を考えると、やはり横須賀で探すべきなのか…

 

いや、それとも今後の事を考えて皆に頭を下げるべきなのか…

 

夕食を終え、タバコを咥えて自室で一人で考える

 

「マーカス、私よ」

 

「開いてるよ」

 

母さんが来たのでタバコの火を消す

 

「母乳で悩んでるみたいね⁇」

 

「まぁな…果たして皆が聞いてくれるかどうかだ…」

 

「ふふっ‼︎」

 

急に母さんが笑い出す

 

「母乳の事を考えるなんて変態だってか⁇」

 

「オーヨドンが言ってたわ⁇マーカスが真剣に悩む横顔、世界で一番好きなんだって‼︎」

 

「真剣に悩んでるからな…」

 

「私も好きよ‼︎マーカスの真剣な横顔‼︎」

 

「ありがとう」

 

「それに、こうも言ってたわ⁇その顔をしたマーカスに、絶対間違いは無いって」

 

「大淀と話すのか⁇」

 

「えぇ‼︎ジェミニもオーヨドンも、マーカスが好きだって良く分かるわ‼︎」

 

意外だな…

 

母さんは大淀博士とあまり接点が無いと思っていたからだ

 

「大丈夫よマーカス。オーヨドンの言った通りになるわ⁇」

 

「レイ、ちょっといいか⁇」

 

「開いてる」

 

次に入って来たのは隊長

 

「おっとすまん。家族の時間か…」

 

「気にしないでくれ。相談に乗って貰ってたんだ」

 

「手短に言う。さっきたいほうから聞いて、今リットリオに連絡を取ってみたんだが、協力してくれるそうだ」

 

「ホントか‼︎」

 

「兄さんが祖国に反旗を翻さないなら、だと…」

 

「ナポリタンは封印だな⁇」

 

「私が作るわ‼︎Thank you、ウィリアム‼︎」

 

「普段こう言った事はマーカスに任せっきりだ…すまんな、動かしてばかりで」

 

「こっちの方が好きなんだ‼︎好きでやってるから気にしないでくれ‼︎よしっ、後は明日、横須賀でも一応聞いてみるか‼︎」

 

次の日…

 

「兄さんから聞きました。私で良ければいつでも‼︎兄さんが反旗を翻さない内は‼︎」

 

「そうか。てっきり大尉が飲むのかと。そういう事なら喜んで協力しよう」

 

「それは大変ですね…分かりました‼︎大鯨で良ければいつでもお声掛け下さい‼︎」

 

横須賀の母親達はスッと理解してくれた

 

後はワンコの所と頻繁に関係があるとすれば大湊とラバウルだ

 

まずはラバウルに連絡を取った

 

本来なら自分の足を運んで頭を下げるべきなのだが、いかんせん今日は忙し過ぎる

 

その旨を伝えた上で、ラバウルの母親達に頼む

 

《いいわよ〜‼︎いつでも言ってね‼︎》

 

《赤子か‼︎うむっ‼︎なら協力せねばならん、んなっ‼︎》

 

《私も頑張るね‼︎》

 

ラバウルの母親達にも許可が取れた

 

思っていたよりスムーズに行けている

 

やはり普段の行いが良いからだな

 

後は大湊…

 

大湊はワンコの所に物資やら資源を搬入する為、関わりが深い

 

俺は大湊へと飛ぶ…

 

「レイ‼︎いらっしゃい‼︎」

 

「いらっしゃいマーカス‼︎ゆっくりして行って下さい‼︎」

 

執務室には棚町と鹿島がいた

 

横須賀の時の失態を繰り返さないよう、まずは事の説明に入る

 

「実は単冠湾に赤ちゃんがいるんだが…その、まだ母乳で育つ過程なんだ」

 

「それは協力せねば。鹿島」

 

「はいっ‼︎レイ、どうしましょうか‼︎」

 

「時々でいい。その…真空パックか何かを横須賀から送る。それに入れて大湊に配達して欲しいんだ。勿論謝礼はする‼︎」

 

「タンカーで輸送して大丈夫ですかね…」

 

「こっちが頼んでるんだ。配達位はやらせてくれ」

 

「分かりました‼︎しかしマーカス。貴方も大変な人ですね…」

 

「戦争よりは遥かに楽さっ」

 

「いつでもここに来て下さい。お待ちしていますから」

 

「ありがとう」

 

後はボスの所に行って終わりだ

 

執務室を出ると、今日は鹿島が来ないのに気が付く

 

鹿島はこう言った時に絶対邪魔をしない

 

俺がまだ行く所があると察してくれたのだろう…

 

ボスの居場所はすぐに分かった

 

「おやマーカス」

 

「忙しいか⁇」

 

ボスは厨房で運良く一息つけている最中

 

「とりあえず一日はこれで持つかい⁇」

 

ボスの手には、真空パックに保存された母乳があった

 

「もう聞いてたか…」

 

「来て貰ったのに悪いねぇ‼︎昨日横須賀に物資の輸送をした時にジェミニから聞いてね‼︎しっかしマーカスも大変だ、赤ちゃんの為に戦闘機で飛び回るとは…」

 

「俺に出来るのはこれ位しか無い。病気やら怪我ならすぐに治してやれるんだが…」

 

「アンタみたいな父親が、もっと世にはびこる事を願うねぇ」

 

「ふふっ…俺は父親じゃないさ。とにかく、ありがたく頂戴するよ」

 

真空パックを貰い、いざ厨房から離れようとした

 

「アンタは立派な父親だよ、マーカス‼︎赤ちゃんの母乳の為に、どんな世界にでも飛んで行く奴は立派な父親さぁ‼︎」

 

「…ありがとう、ボス‼︎」

 

後はトラックだな…

 

「赤ちゃんが…マーカスさんもお盛んですねぇ⁇」

 

「そうなんだ。それで、協力をして欲しいんだ」

 

「良いですよぉ〜‼︎蒼龍ので良ければいつだって‼︎」

 

「マーカス。何なら、私が離乳食を作ってパックしましょうか⁇」

 

トラックさんも話に入る

 

「助かる‼︎もう一人は途轍もなく食うんだ‼︎お礼は必ずする‼︎」

 

「勿論‼︎食事の事ならいつだって‼︎」

 

これで母乳と離乳食が手に入った

 

数日後…

 

「これ‼︎榛名の手は食いもんじゃねーダズル‼︎白露はピラニアダズルか‼︎」

 

「これすっごい美味しいリュ‼︎」

 

「良い子良い子ニム‼︎」

 

単冠湾はようやく落ち着いた

 

相変わらず白露はバクバク食べているが、トラックさんの離乳食が来てから更に拍車が掛かっている

 

フミーも母乳と栄養剤を交互に飲む様になった

 

「いでっ‼︎今はこれでおしまいニム‼︎」

 

フミーは余程母乳や栄養剤が美味しいのか、それとも白露の様にピラニアの素質があるのか、終わりと分かるともう少しとニムの腕の肉を摘んでせびる様になっている

 

「こりゃしばらく大変ダズルな‼︎」

 

「白露⁇食べたらダイエットリュ‼︎」

 

「フミーも運動ニム‼︎」

 

白露とフミーをカーペットの上に置き、三人は距離を取る

 

「イッチニーダズル‼︎」

 

「頑張れリュー‼︎」

 

「ヨチヨチニム‼︎」

 

三人の母親達は、二人の子供をハイハイで手元に向かわせる

 

ワンコはその光景を見て、安堵の溜息吐き、少し微笑んだ…


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