艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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308話 画伯はなんでもお見通し(3)

間宮を出て、何となくだがイントレピッドの顔を見たくなった

 

決して昨日の晩に見た薄い本のせいじゃない

 

決してな‼︎

 

「Good Morning‼︎あらマーカス‼︎」

 

パイロット寮の入り口で掃除をしていたイントレピッドがいた

 

「親父は⁇」

 

「今執務室にいるわ⁇」

 

「ありがとう」

 

「ンフ…マーカス⁇」

 

イントレピッドは口元を抑えて微笑む…

 

「…はい」

 

この人もあれだ。背後に置くとヤベェタイプか…

 

イントレピッドは俺の背後から胸元に手を回し抱き寄せた後、耳元に唇を近付けた

 

「…あ〜、り〜、が〜、とっ。ギューしてあげるわっ…」

 

「ならんならんならん‼︎」

 

忘れてた‼︎

 

イントレピッドに許可を入れたとか言ってたな秋雲は‼︎

 

「フフッ‼︎さっ、行ってらっしゃい‼︎」

 

ようやく離され、パイロット寮の執務室を目指す

 

「危ない危ない…」

 

「あら⁇マーカスさん⁇」

 

「ジョンストンか‼︎今執務室に誰がいる⁇」

 

デカイジュースのペットボトルと、紙コップ二個を携えたジョンストン

 

今執務室にいる誰かと飲むのだろう

 

「今はヴィンセントがいるわ‼︎」

 

「顔見に来ただけなんだが、邪魔になるなら帰るよ」

 

「大丈夫‼︎ヴィンセント‼︎お客さんよ‼︎」

 

ジョンストンがドアを開けてくれた

 

「大尉‼︎いらっしゃいませ‼︎まぁ掛けて下さい‼︎」

 

「コップ持って来るわ‼︎」

 

「顔見に来ただけさっ」

 

「いいんですいいんです‼︎丁度良かった、イントレピッドのオヤツが出来る頃です‼︎」

 

ヴィンセントも一息入れる時間の様で、ソファーの前にある机に灰皿を置いてくれた

 

室内に入ったので革ジャンを脱ぐ

 

「そうだ。ちょっと失礼…」

 

香取先生から貰った茶封筒が内ポケットに入れてあるのが目に入った

 

「お金なら受け取らないと言ったら、別の品だと言われて…」

 

「割引券か何かですかね⁇」

 

「はい、どうぞ‼︎」

 

「ありがとう」

 

ジョンストンは紙コップを持って来てくれた後、ヴィンセントの横に座る

 

「どれっ…」

 

茶封筒から中身を取り出す

 

中身は外側からも予想が付いた紙の何か

 

「…」

 

「何、それ⁇」

 

出て来たのは俺が黙るレベルの内容の券

 

「これだったら金を寄越せと言うんだった…」

 

それはそれはもう欲しくない物が出て来た

 

何かしらの引き換え券だとは思ってはいたが、これは…

 

「大尉。もし差し支えなければ、私に頂けませんか⁇」

 

「いいんですか‼︎」

 

「彼女とはあまり関わりがありませんでしたからね。これを機会に是非」

 

思ってもみない提案に、俺はその券をすぐにヴィンセントに渡した


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