艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、306話が終わりました

今回のお話は、突如として横須賀に現れた謎の画伯

マーカスは診察を依頼されるが…


307話 画伯と空飛ぶ医者(1)

「大尉大尉大尉‼︎大変ですよ‼︎」

 

「アンタが本当に大変な時は俺に命令するだろ⁇何だ⁇」

 

書類をワキに挟んで横須賀の執務室に行こうとした俺を、香取先生が止めて来た

 

「かの有名な秋雲さんが横須賀に着任するんです‼︎」

 

「秋雲…」

 

香取先生が言う位なら、相当な手練れの子なんだろう…

 

執務室に向かいながら、香取先生を横に付けて歩く

 

「今までは何処に居たんだ⁇」

 

「今までは一般人ですよ‼︎」

 

「ほぅ…それが急に横須賀に⁇」

 

「そうなんですそうなんです‼︎あぁ、どうしましょう‼︎」

 

香取先生を見る限り、秋雲と言う存在に恐怖を抱いている素振りは無く、何か別の楽しみがあるみたいだ

 

「それで大尉にお願いが」

 

香取先生の顔がシュッと変わる

 

「身体検査をお願いしたいのですが…」

 

「分かった。いつ頃になるか、また連絡してくれ」

 

香取先生は足を止め、満面の笑みを見せる

 

「ふふ‼︎この後すぐです‼︎」

 

「ったく…コーヒー買って表で待っててくれ」

 

「了解です‼︎」

 

何だかよく分からんが、面倒に巻き込まれる予感がする…

 

 

 

「俺だ」

 

「開いてるわ」

 

執務室に入ると、横須賀と親潮がPCに向かっていた目を俺に向けた

 

「航空演習の結果。それと、ここ最近撃墜した敵機の情報がある」

 

「ありがと。助かるわ」

 

「俺は今から診察があるから、何かあったら来てくれ」

 

「頼むわよ‼︎ほんっと凄い子なんだから‼︎」

 

急に大声を出したので、親潮がビクッと肩を上げた

 

「秋雲…だったか⁇」

 

「そう‼︎有名な漫画家よ‼︎」

 

「そ、そっか…」

 

親潮は特に知らなさそうだが、香取先生や横須賀の反応を見る限り、売れっ子の漫画家らしい

 

漫画家ねぇ…

 

 

 

「大尉、こっちです」

 

外に出ると、両手にコーヒーを持った香取先生がいた

 

「大尉はこっちです」

 

「ありがとう」

 

香取先生からアイスコーヒーを受け取り、診察する為に工廠に向かう

 

「漫画家なのか⁇その秋雲って子は」

 

「そうです‼︎」

 

「どんな漫画だ⁇」

 

「…」

 

香取先生は上目遣いで俺を見ている…

 

「うっ…」

 

「そこは大尉自身でお知りになって下さいっ。いいですね⁇」

 

「分かったよ…」

 

あれか…

 

隊長が年下の押しに弱いなら、俺は年上の押しに弱いみたいだな…

 

横須賀も年上、貴子さんも年上、香取先生もバリバリ年上…

 

そうか、アークもか…

 

工廠に入り、いざ診察を始める…

 

 

 

白衣に着替え、彼女が待っているカプセルがある区画に向かう

 

「初めまして、だな⁇」

 

「初めまして初めまして大尉‼︎お初にお目に掛かります、秋雲と言います‼︎」

 

いきなりポニーテールの少女に手を握られる

 

この子が秋雲らしい

 

「お⁉︎まぁ座ってくれ‼︎」

 

「ではお言葉に甘えて…」

 

秋雲は丸椅子に座り、ジッとし始める

 

聴診器を当て、目や舌を見る

 

「ちゃんと栄養摂ってるか⁇」

 

「あはは…ちょいと忙しくて〜」

 

「ここに来たからには、しっかり三食食べて貰う。栄養ドリンクだけ飲むのは、あまりよろしくないからな」

 

「何で分かったのさ‼︎」

 

「何で分かると思う⁇」

 

「大尉⁇質問を質問で返してはいけません。まずは与えられた質問を答えなさいっ」

 

同伴している香取先生に怒られた

 

「何人も艦娘を診て来た。それ位すぐ分かる」

 

「…ホントにお医者さんなんだ」

 

「空飛ぶお医者さんなんですよ⁇」

 

カルテを書きながら二人と話を続ける

 

「ここに来た理由は⁇」

 

「えと…開放日にここに来て、いい所だなぁ、って…」

 

「そっか。栄養不足以外に目立った疾患はない。動機も中々だ。後は少し過去を調べさせて貰う。いいか⁇」

 

「あ、あの‼︎引かなければオッケーです‼︎」

 

「…」

 

何故か秋雲は急にテンパったので、少し目を見る

 

あまり見過ぎると、横に居る末恐ろしい女教師に、少女相手に“眼”を使うなと言われそうだ…

 

「大丈夫です‼︎悪い経歴は無いんで‼︎」

 

「心配するな。先生、秋雲を寮へ案内して欲しい」

 

「分かりました大尉。では秋雲せ…秋雲さん、此方へ」

 

「ありがとうございましたっ‼︎」

 

秋雲と香取先生が工廠を出たのを見送った後、スカーサハに向かう

 

「ヨナ、開けてくれないか」

 

《いらっしゃいませ、お父様》

 

スカーサハに入り、メインルームに来た


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