艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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305話 双子のシマエナガと白いパイロット(2)

「ひとみさん、いよさん、ありがとうございました‼︎」

 

「まられす‼︎」

 

「あたまど〜れしたか⁇」

 

「とても乗り心地良かったです‼︎」

 

ひとみといよは涼平に良く懐いている

 

普段涼平がレイと一緒にいるから、護ってくれてるのね

 

「つきあした‼︎」

 

「えいしゃ〜ん‼︎」

 

研究室のドアが開き、中にレイと大淀博士がいた

 

「おぉ。来たか‼︎どうした涼平⁇ちょっと戻ったのか⁇」

 

「蒼龍さんに半分だけ戻して貰いました‼︎」

 

「やっぱりだよレイ君‼︎」

 

レイと大淀博士が微笑む

 

「さっき分かったんだが、乗艦式には個別にやり方が存在するんだ」

 

「たいほうちゃんに教えて貰ったわ⁇」

 

「たいほうは頭を撫でる、隼鷹は抱き締める。色々やり方があって、それに準じたやり方じゃないと、乗艦式は行えない」

 

「まなしゃん、ちぉっとれきました」

 

ひとみが言う通り、隼鷹と蒼龍は乗艦式のやり方が抱き締める事

 

「同じ乗艦式のやり方の艦娘なら、半分だけの性能が発揮されるんだ」

 

「よく分からないわ…」

 

「色々条件はあるけど、簡単に言えば、同じ乗艦式のやり方と、何方か一方が片思いや憧れを持っていると、乗艦式は半分だけ性能が発揮される…と言えば早いかね⁇」

 

まとめるとこうだ

 

同じ乗艦式のやり方の艦娘がいる

 

片方は普通に行え

 

もう片方は半分だけの性能が発揮される

 

そのもう片方は、艦娘かパイロットが片思いや憧れを持たなければそれも発揮されない

 

つまり、涼平は蒼龍に片思いか憧れを持っている事になる

 

「蒼龍さんは憧れですよ‼︎自分が初めて演習に参加した際に物凄く強い相手だったんです‼︎」

 

「すきちあう⁇」

 

「おちちでかいで⁇」

 

「えと…ど、どう言えば…」

 

涼平はひとみといよのイタズラな質問に対し、大人三人に視線を送る

 

「ひとみ、いよ⁇涼平の事好き⁇」

 

そこで膝を曲げて答えたのは横須賀

 

「「しゅき‼︎」」

 

「じゃあ、レイの事は⁇」

 

「「しゅき‼︎」」

 

「そっ。ひとみといよがレイと涼平のどっちも好きみたいに、涼平も蒼龍の事も好きなのよ⁇」

 

「あかりあした‼︎」

 

「いいことです‼︎」

 

横須賀の説明は分かり易い

 

「ありがとうございます、元帥」

 

「ふふっ、感謝なさい‼︎」

 

「問題は隼鷹だな…」

 

後は隼鷹が起きてくれれば、涼平は元に戻れるはず…

 

 

 

 

「…」

 

ひとみといよ、横須賀は早めのお昼ごはんに向かった

 

俺と大淀博士と涼平は研究室におり、涼平は第三居住区の設計資料と睨み合っている

 

「し、失礼します‼︎」

 

「来たか」

 

ようやく隼鷹が来た

 

「ホントに小さいじゃないか‼︎済まない事をしたよぉ…」

 

「気にしないで下さい。中々楽しかったですよ⁇」

 

「そらっ‼︎」

 

隼鷹はすぐに涼平を抱き締めた

 

「ん〜、何度見ても良い物だねぇ…」

 

「愛が成せる事かっ…」

 

隼鷹に抱き締められてすぐ、涼平は元の姿に戻れた

 

「ありがとうございます‼︎」

 

「あたしが悪いんだよ…ありがとうなんて、言わないどくれ…」

 

「あ、そうだ‼︎自分はこれから航空演習なんです‼︎」

 

「行けるか⁇」

 

「はいっ‼︎勿論です‼︎行って来ます‼︎」

 

涼平はすぐに研究室を出て行った

 

その背中を見送る隼鷹の顔は、やはり母親の顔をしている

 

「隼鷹」

 

「なんだい⁇」

 

俺は隼鷹に一つの封筒を渡す

 

「後で一人で中を見てくれ。何なら、今ここででもいい」

 

そう言うと、隼鷹は封筒を開けた

 

「あぁ…」

 

ため息を漏らす隼鷹の手には“遺伝子情報酷似、親族及び親子の可能性大”と、書かれた書類が握られている

 

「紛れも無い息子だ」

 

「良かった…」

 

「あ…えと…」

 

「涼平‼︎」

 

「「涼平君‼︎」」

 

研究室の入り口はいつの間にか開いており、そこに涼平が立っていた

 

「第三居住区の設計図を忘れちゃって…」

 

「聞いたか、今の」

 

「隼鷹は…自分の母なんですか⁇」

 

隼鷹は小さく頷く

 

俺と大淀博士は小さくだが、既に臨戦態勢に入っている

 

涼平がこの事実を知って、DMM化しないとは言い切れない

 

俺はさり気なく腰の後ろに手を回し、麻酔銃を

 

大淀博士は立ち振る舞いは普通に見えて、腰に下げた同じく麻酔銃を手に掛けている

 

「何で…」

 

「涼平…」

 

涼平の手に力がこもる…

 

あの日、隼鷹を襲おうとした時と同じだ…

 

「何でもっと早く言ってくれないんですか‼︎」

 

「あたしは…」

 

「もっと早く言ってくれれば…いや、でも最初はやっぱり同じか…」

 

全員がズッコケる位に涼平は急に冷静になった

 

顎に手を置き、悩む素振りを見せる涼平を見て、俺も大淀博士も臨戦態勢を解除する

 

「でも…すぐには母さんと呼べないかも知れません」

 

「いいんだ…ずっと呼ばなくてもいいよ…」

 

「分かりました‼︎何か言われて腹立つので言いますね‼︎行って来ます、母さん‼︎」

 

「い、行ってらっしゃい‼︎」

 

涼平は設計図を取り、今度こそ航空演習に向かった

 

「あれでこそ涼平君だね‼︎」

 

「普段はもっともっと素直で良い奴なんだぞ⁇」

 

それを聞き、隼鷹は笑う

 

多少誤算はあれど、後はこの二人次第だ…

 

 

 

 

「ソッカ」

 

航空演習が終わり、二人はパンを食べながら埠頭で座って話をする

 

涼平が最初に説明した相手は、航空演習で発着艦したシュリさん

 

「ヨカッタ‼︎リョーチャンカゾクイタ‼︎」

 

「うんっ…」

 

底抜けに明るい表情を見せるシュリさん

 

涼平は少し悩んだ

 

自分の母親とは言え、シュリさんの仲間を殺した人が、旦那の母親で良いのか…と

 

「リョーチャン⁉︎」

 

「は、はひ‼︎」

 

シュリさんにブニュっと両頬を持たれ、口が尖る涼平

 

「イガミアイハ、オワリ‼︎ワカッタ⁇」

 

「わ、わかりまひた‼︎」

 

「リョーチャンガスキニナルナラ、ワタシモジュンヨースキニナル‼︎」

 

「ありがとごじゃいまふ‼︎」

 

「フフフ…コンドマヨッタラ、ハキューニタベテモラウカンネ‼︎」

 

「「「リョーチャンタベタイ‼︎リョーチャンオイシソウ‼︎」」」

 

足元の海では、いつの間にかいた三体のハ級が跳ねたりバシャバシャして涼平を見ている

 

「ふふっ…」

 

涼平は持っていたパンを小さく千切り、ハ級達に投げる

 

「「「キャー‼︎パンダー‼︎」」」

 

それはもうガボゴボ言いながらパンを食べるハ級達

 

涼平とシュリさんは苦笑いしつつも、互いに残っていたパンをハ級達に与えた

 

「サ、オウチカエルヨ‼︎」

 

「「「オウチカエル‼︎」」」

 

シュリさんがそう言うと、ハ級達は海岸に向かい、陸へと上がる

 

「カエロウ‼︎リョーチャン‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

シュリさんに差し出された手を取り、涼平は第三居住区へと戻って行った…


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