艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

1037 / 1086
職人アレン君


305話 愛の交差点(3)

「隼鷹、ありがとう」

 

「どう致しまして‼︎」

 

「あ、そうだ。自分も何か隼鷹に‼︎ちょっと待ってて下さい‼︎」

 

「ほぅほぅ…」

 

そう言って涼平が向かうは高雄の部屋

 

「いらっしゃいませ。あら少尉」

 

「あの、イヤリングは何方に…」

 

「此方です」

 

「あっ…すみません…」

 

数種類のイヤリングが乗ったケースを持って来てくれたのは高雄ではなく、見た事のないショートヘアの黒髪の女性

 

それも飛び切りの美人だ

 

「A&A maidの品になります」

 

「安くて質が良いからすぐ売り切れになるって有名な…」

 

「ありがとうございます」

 

「えと…」

 

涼平はその女性が持ったケースの中を見る

 

「これ…」

 

涼平は一つのイヤリングを手に取る

 

「お目が高いです」

 

隼鷹の色と同じ、紫色に輝く宝石が入ったイヤリングだ

 

「幾らですか⁇」

 

「2000円になります」

 

「ホントに安い…これで‼︎」

 

「サービスで此方の箱に入れて置きますね」

 

「ありがとうございます」

 

黒髪の女性が指環を入れる箱にイヤリングを入れている最中、涼平は彼女を見ていた

 

ふと気付く

 

彼女とは、何と無く会った事がある気がする…と

 

「あの…どこかでお会いして…」

 

「いけませんよ。逢瀬の最中に他の女性に目をやっては」

 

彼女は話を遮る様に言葉を返す

 

「すみません…」

 

「ふふっ…もう出来ますよ」

 

彼女はクスリと微笑む

 

笑った顔でさえ、男ならほとんどが落ちてしまいそうになる

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

「お気を付けて」

 

涼平は嬉しそうにイヤリングの入った箱を持ち、高雄の部屋から出た

 

 

 

「繁華街に戻りました」

 

《了解っ。後は飯だろうな》

 

 

 

 

繁華街に戻って来た二人は、ようやくご飯を食べる事になる

 

「あ、そうだ涼平君。あたし、ここの鍋食べてみたいんだ」

 

「自分もです‼︎行きましょう‼︎」

 

思惑通りなのか、たまたまなのか、二人は蟹瑞雲に入る…

 

 

 

「よく来たな。二名様で良いかな⁇」

 

「二名です」

 

「アレン君、ご案内を」

 

「へいっ‼︎」

 

「大尉⁉︎どうしたんですか⁉︎」

 

出て来たのは何故かアレン

 

しかも職人の格好をしている

 

「色々あったんでごわす‼︎」

 

「事故とはいえ、私の胸に顔を埋めてな。そのお詫びらしい」

 

「じ、自己申告制なんですか⁉︎」

 

「とても良い思いをさせて頂いたでごわす‼︎ささ‼︎お客人‼︎此方へ‼︎」

 

アレンに案内され、二人は個室に入る

 

「当店は蟹鍋と雑炊があるでごわす‼︎」

 

「蟹鍋で‼︎」

 

「がってんでごわす‼︎お酒はいかが致しましょ‼︎」

 

「涼平君は⁇」

 

「後で飲むので今は…」

 

「んじゃ無しで‼︎」

 

「がってんでごわす‼︎少々お待ちを‼︎」

 

アレンが厨房に戻る…

 

 

 

「その…なんだ。大尉」

 

「へい‼︎」

 

厨房に戻っても、アレンの態度は変わらない

 

「貴様も大変だな⁇」

 

「俺の部下である事に変わりはないさ。あ、変わりないでごわす‼︎」

 

一瞬いつものアレンに戻ったのを見て、珍しく日向が笑う

 

「ふ…よし、持って行ってくれるか」

 

「へいっ‼︎」

 

 

 

「美味ぁぁぁあい‼︎」

 

「こんなに美味しいんですね‼︎」

 

蟹鍋は一つで三人前分がある

 

隼鷹も涼平も、蟹を食べ進めて行く

 

「…」

 

「どんなの飲もうかね〜‼︎」

 

ふと涼平は気付く

 

隼鷹はいつも通りの振る舞いをしている

 

が、手元では蟹の殻を剥いては、さり気なく涼平の前に置いてくれている

 

涼平は“きっと子供にする癖だろう。自分もまだ子供に思われている”程度の認識でいた

 

その癖か思いやりか分からない隼鷹の行動に、今は甘える事にした…

 

 

 

「いやぁ‼︎食った食ったぁ‼︎」

 

「また来ましょう。美味しかったぁ…」

 

「おっ⁉︎いいねぇ‼︎また誘っとくれよ⁇」

 

隼鷹も涼平も満足行く結果で、蟹鍋を平らげた

 

「仕上げはお酒か⁇」

 

「そうだな‼︎涼平君が奢ってくれるらしいし⁇」

 

「そうです。バーでお気に入りを見つけたんです」

 

「んで、後はあたしはめちゃくちゃにされるって訳さ‼︎」

 

「貴様も隅に置けないな、少尉」

 

「あ、あれはその場の勢いと言いますか…」

 

「さぁ、早く行くんだ。バーはすぐ混むぞ」

 

「「ごちそうさまでした‼︎」」

 

二人は蟹瑞雲を出た


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。