艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、298話が終わりました

今回のお話は、双眼鏡を持ってお散歩に行きたいワシントンのお話です

目線が横須賀になり、一緒にお散歩に出向きながら双眼鏡片手に色々な人と出会います


299話 おでかけワシントンちゃん(1)

「そうがんきょ」

 

「お出掛けするの⁇」

 

双眼鏡を首からぶら下げたワシントンが私の所に来た

 

「おでかっけ」

 

「マミーとお出掛けしよっか‼︎親潮、ちょっとだけお願いするわね⁇」

 

「畏まりました‼︎」

 

椅子から立ち上がってワシントンと手を繋ぎ、執務室を出る

 

 

 

「何が見える⁇」

 

「んー」

 

外に出たワシントンは早速双眼鏡で景色を見る

 

右手は私の手、左手で双眼鏡

 

双眼鏡の先にはひとみといよ、そして迅鯨がいる

 

「あの子はひとみちゃん、いよちゃん、迅鯨さんよ⁇」

 

「ひとみちゃ、いよちゃ、じんげーさ」

 

ワシントンは最後の“ん”だけ言わない癖がある

 

「あれはお魚よ⁇」

 

「おさかな」

 

三人はとれたての魚を串に刺し、いつも涼平が海岸で焚き火をしている場所で焼いている

 

「ぼーぼーぼわー」

 

「火でお魚を焼いて食べるのよ⁇」

 

「おー」

 

「あ‼︎よこしゅかしゃん‼︎」

 

「おしゃかなやいてう‼︎」

 

ひとみといよが私達に気付いた

 

実に美味しそうなお魚が五匹焼かれている

 

「あっ、元帥さん。丁度良かったです。お召し上がり下さい」

 

「頂くわ‼︎」

 

迅鯨から焼き魚を貰い、焚き火の前に座る

 

「ワシントンも食べてみよっか‼︎」

 

「どりあ⁇」

 

「これは焼き魚よ⁇」

 

「やきざかな」

 

「うぁ〜、あむっ」

 

「あぅ〜、がぶっ」

 

目の前ではひとみといよが器用に身を食べている

 

どれどれ、私も頂こうかしら…

 

「はむっ…」

 

私の食べる姿を、ワシントンは片手に魚の串、片手に双眼鏡を持ちながらジーッと見ている

 

私の食べ方を見て分かったのか、ワシントンも魚を食べ始める

 

「もっ、もっ、もっ」

 

「おいし⁇」

 

「おいふぃ」

 

ひとみがワシントンに言うと、食べながら頷いた

 

「ごちそうさあでちた‼︎」

 

「美味しかったですね‼︎」

 

「おくちふきふき‼︎」

 

ひとみは基地でいつもそうしているのか、ワシントンの口を拭いてくれる

 

「ありがとう、よ⁇」

 

「ありがと、ひとみちゃ」

 

「わちんとんしゃん⁇」

 

「そっ‼︎新しい子よ⁇」

 

「「おぉ〜」」

 

ひとみといよは驚いている

 

そう言えば珍しいわ⁇

 

いつもならひとみといよは赤ちゃんの相手をしてくれるのに、今日はあまり教えてくれない

 

ワシントンは苦手なのかしら…

 

「いよとひとみちぁん、じんげ〜しゃんとおりぉ〜りしあす‼︎」

 

「たいえ〜しゃんもいあす‼︎」

 

「今日は揚げ出し豆腐なんですよ⁇」

 

二人はこれから迅鯨と大鯨と共に料理を作るみたいね

 

三人はちゃんと火を消し、後片付けをした後、パイロット寮に入った

 

「おさかな、おいすい」

 

「また食べましょうね⁇」

 

「うん」

 

いざ立ち上がろうとした時、ワシントンは双眼鏡を見る

 

「あたい」

 

「あら‼︎覚えたのね⁉︎」

 

工廠から出て来て背伸びしている朝霜が見えた

 

折角なので朝霜の所にも行ってみる

 

「おー‼︎母さん‼︎ワシントン‼︎」

 

「あたい」

 

「覚えてくれたのか‼︎ありがとな‼︎」

 

朝霜は朝霜でワシントンを可愛がってくれる

 

今も膝を曲げ、ワシントンの目線に合わせてくれている

 

「母さんとお散歩か⁇」

 

「おでかっけ」

 

「そうかそうか‼︎アタイはもうちょい工廠にいるかんな‼︎」

 

「ん」

 

ワシントンは朝霜の事を良く聞く

 

工廠に戻る朝霜をワシントンは見送っている

 

その目線の先には、銀色に輝く朝霜の髪

 

あぁ、そっか

 

ワシントンも銀色、朝霜も銀色

 

どこか通じる物があるのね⁇

 

「ぱぴーのとこ」

 

「今日はどこかしらね…」

 

ひとみといよがいるって事は、レイは横須賀にいるはず

 

「可愛らしい子ね⁇」

 

「この子がワシントンちゃんだね‼︎」

 

「ヒュプノス‼︎大淀博士‼︎」

 

レイが言っていたけど、この二人は足音も無く人に近付ける

 

「私はヒュプノスよ。イク、でもいいわ⁇」

 

「いくちゃ」

 

「大淀さんは大淀さんだよ‼︎」

 

「おおよどさ。わしんとん」

 

「偉いわ⁇お父様はヨナの所にいるわ。きっと遊んでくれるわよ⁇」

 

レイからそう教わったのか、ヒュプノスも膝を曲げてお話をしてくれる

 

一時のヒュプノスの事を思うと、随分母性に目覚めている…

 

「…これもレイ君の影響だよ⁇」

 

目の前で話すワシントンとヒュプノスを見ながら、大淀博士は話す

 

「レイの⁇」

 

「そっ…レイ君の傍に居る子は、母性に目覚めるのがとても速いんだ」

 

「例えば⁇」

 

「今目の前にいるヒュプノス…それとタナトスのAIであるゴーヤちゃん…叢雲ちゃんもそうだね」

 

「言われてみればそうだわ…」

 

この時、大淀博士は二人を見る私を横目で見て優しく微笑み、小さく呟く

 

「…君もそうだよ、ジェミニちゃん」

 

大淀博士は気付いていない

 

当の本人の大淀博士もその影響を受けている事を…

 

「さっ、行きましょう。お腹空いたわ⁇」

 

「そうだね‼︎ヒュプノスの好きな丹陽で担々麺食べよっか‼︎」

 

「嬉しいわ。じゃあね、お母様。お母様もまた行きましょうね⁇」

 

「約束よ‼︎」

 

ヒュプノスは微笑んだ後、大淀博士と手を繋ぎ、繁華街に入って行った…


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