艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、297話が終わりました

今回のお話は、乗艦式の謎が少し分かります

一体どの様に行われるのか…


298話 乗艦式

横須賀に着き、執務室に来た

 

「涼平はどうだった⁇」

 

「強かったぞ⁇隊長とラバウルさんを振り切ったからな‼︎それと、あの機体が気になる」

 

「これ見て」

 

横須賀から紙を貰う

 

そこには涼平が乗っていた白い震電の写真や資料が書かれていた

 

 

 

震電(綾辻搭乗機)

 

サンダース隊員である綾辻涼平が空母棲姫と“乗艦式”を行い生産された機体

 

速度、火力共に通常の震電より高いスペックを誇る

 

特筆すべきは、何らかの深海の力を得て機体が白くなった事。原理は不明

 

コードネームは“White Bell”

 

軽量なら爆装可能だが、搭乗員である綾辻は当機に無誘導噴進弾を好んで積載する為、爆装はこれとする

 

 

 

「いい名前だな⁇」

 

「ホワイトベルならちょっと可愛いでしょ⁇」

 

横須賀に微笑みながら、一文を見直す

 

「…乗艦式か」

 

「アンタも出来るでしょ⁇」

 

乗艦式は一握りのパイロットと艦娘にしか出来ない

 

俺はたいほう

 

親父は瑞鶴

 

そして涼平とシュリさん…

 

艦娘がパイロットを妖精や矢にし、空へと飛ばすのは同じなのだが、未だに原理が分かっていない

 

それに今回、涼平は深海と行った

 

これは初だ

 

「大淀博士が記録を取ったらしいのよ」

 

「これは興味深いな…俺も原理を知りたい」

 

横須賀に促され、大淀博士の研究室に向かう…

 

 

 

「やー‼︎おかえりレイ君‼︎」

 

「ただいま。涼平の乗艦式の記録があると聞いた」

 

「あるよ‼︎ちょっと待ってね‼︎」

 

大淀博士は早速PCを弄り、一本の動画を流し始めた…

 

 

 

涼平がシュリさんの前に跪いている

 

シュリさんが涼平の頭に手をかざす

 

“この命、海征く貴方に捧げます…”

 

“コノイノチ、アマユクアナタニササゲマス…”

 

互いに言葉を掛け合い、涼平の体が一瞬深海化した後、シュリさんの手に収まる白く小さな矢に変わる…

 

その光景は神を信じていない俺でさえ、神聖と言う言葉が似合うと思っていた…

 

「他の深海の子達が言ってたんだけど、深海の人達にとってこの乗艦式は結婚式のそれに近いんだって‼︎」

 

「だろうな…」

 

言葉を失う、本当に美しい光景…

 

「あ、そーだレイ君‼︎アークロイヤルbisに来いってさ‼︎」

 

「分かった、すぐに向かう。ありがとうな⁇」

 

「お礼はハグでいいよ‼︎」

 

大淀博士をハグした後、アークロイヤルbisに向かう…

 

 

 

執務室では…

 

「シャドウブラックの正体があの人なら納得だな‼︎」

 

「これで合点が行きましたね‼︎」

 

「道理で強いはずです‼︎」

 

隊長、ラバウルさん、アレンの三人が横須賀と共に笑う

 

「レイにはちょっと驚いて貰うらしいです‼︎」

 

「名案だなっ⁇」

 

「えぇ‼︎これは驚くでしょう‼︎」

 

「どんな反応するかな…」

 

 

 

 

「マーカス‼︎貴方も呼ばれたの⁇」

 

「そっ。俺だけ召集っ‼︎」

 

アークロイヤルbisに乗ろうとした時、イントレピッドがいた

 

「ふふっ‼︎きっと良いもの見れるわ‼︎行きましょう‼︎」

 

既に目の前に良い物はある気がしながらイントレピッドに腕を組まれ、アークロイヤルbisの艦内に入る…

 

 

 

「オルコット大尉及び、イントレピッドさん、到着しました」

 

「甲板に呼んでくれ。私もすぐに向かう」

 

二人の到着の知らせを受けたヴィンセントは、甲板へと向かう…

 

 

 

「イントレピッド…その…」

 

「ヨメとどっちが大きいかしら⁉︎」

 

「やめてくれよ…」

 

「ふふっ‼︎冗談よ‼︎」

 

この人と二人きりになると気が狂いそうになる…

 

好きな人が多いはずだ…

 

「さっ‼︎着いたわ‼︎」

 

甲板に着いたが、露天駐機以外の機体は見当たらない

 

「そう言えば黒いトムキャットを見たわ⁇マーカスはなんて呼んでるの⁇」

 

「シャドウブラックだ。奴は手練れだ」

 

「そちらに変えた方が響きは良さそうですね」

 

「ヴィンセント‼︎」

 

背後からヴィンセントが来たので、イントレピッドから離れようと腕を振るが、イントレピッドはニヤケ顔をして離そうとしてくれない

 

「大尉、貴方には色々恩があります」

 

「俺は何も…」

 

「その一つを、今返そうと思いましてね…」

 

「ジッとして…マーカス…」

 

「や、ヤダ…何か嫌な予感がする‼︎」

 

二人は意味深に微笑む

 

イントレピッドに至ってはニヤケ顔でガッチリホールドしている

 

ジタバタしていると、ヴィンセントの背後からヘルメットを着けたままの男性が来た

 

「はっ…」

 

感覚で分かる…

 

こいつがシャドウブラックだ…

 

すると、イントレピッドが俺をホールドする手が解かれた

 

シャドウブラックは俺の顔を見た後、イントレピッドの方を向き、ヘルメットを外した…

 

「親父⁉︎」

 

シャドウブラックの正体はリチャード…つまり親父だった

 

俺とヴィンセントに歯を見せて笑ったあと、親父は真剣な顔をしてイントレピッドの前に跪いた…

 

 

 

「My wings to you who loved me…(愛した貴方に我が翼を…)」

 

「Give my life to you who I loved…(愛した貴方に我が人生を…)」

 

 

 

目の前で乗艦式が行われる

 

親父は一瞬で黒い銃弾に変わる…

 

「…」

 

「どっ⁉︎ビックリした⁉︎」

 

イントレピッドはウインクしながら、いつの間にか手にしていたライフルに黒い銃弾を装填する

 

俺は言葉が出ないでいた…

 

「ジェミニ元帥達の言うシャドウブラック…我々で言う“キングバード”…」

 

「リチャード‼︎ロックンロール‼︎」

 

イントレピッドは空にライフルを放つ

 

黒いF-14が美しく上昇して行く…

 

「リチャードがその正体です」

 

愛された人間は強い…

 

今正に目の前で見せられている光景が、その言葉が正解だと語り掛ける…

 

「リチャード‼︎帰って来なさい‼︎」

 

数分後、キングバードはアークロイヤルbisに着艦した

 

「今後、緊急時以外の発着艦はアークロイヤルbisで行います」

 

「リチャードがね⁇みんながヤキモチ妬いちゃうだろーって‼︎」

 

「だろうな…」

 

「まだ放心状態だわ‼︎」

 

「ギューしたら戻るかしら⁇」

 

「ずっと放心状態でいたくなるからやめてくれ‼︎」

 

「ふふっ‼︎良かった‼︎」

 

その時、あまりにも自然にイントレピッドがまた腕にくっ付いているのに気が付かなかった…

 

 

 

 

その日の夜、パイロット寮…

 

「リチャード」

 

「んぁ⁇」

 

気の抜けた返事をしながら、イントレピッドが淹れてくれたカフェラテを飲むリチャード

 

「マーカス、昔のリチャードに良く似てるわ⁇」

 

「欲しいってか⁇」

 

鼻で笑いながら返すリチャード

 

しかし、イントレピッドは黙ったまま、リチャードを見る目は本気

 

「…マジか」

 

「昔のリチャードと重なっちゃったぁ…」

 

イントレピッドの目が一人の少女に戻る…

 

リチャードは察する

 

あぁ、これは本気なのだと…

 

「お前もまだまだ乙女って事だな‼︎はっはっは…はっ‼︎」

 

いつの間にか目の前から消えたイントレピッド

 

「ふふっ…聞いた私がバカだったわ〜‼︎グッナイ‼︎リチャード‼︎」

 

気付いた時には既に遅し…

 

「はぐっ‼︎」

 

リチャードは一撃で落とされ、ベッドに放り投げられた

 

「リチャードが悪いのよ…貴方が振り向かないから…バカッ…」


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