艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、295話が終わりました

今回のお話は一話しかありません

基地に帰って来たマーカス

赤城の言った通り、アトランタは少し話せる様になっており…


296話 小さなギャルの独占欲

「ただいま〜…みんな寝てるか…」

 

忍び足で食堂に入り、手洗いうがいをしてから冷蔵庫を開けてサイダーを取る

 

食堂のソファーに座り、サイダーを飲んで一息つける

 

「あら…マーカス君。おかえりなさい」

 

「起こしましたか⁇」

 

貴子さんが起きて来た

 

「ん〜ん…ちょっと目が覚めただけ…」

 

随分眠たそうな顔をした貴子さんは、キッチンで水を飲むとまた寝室に戻って行った

 

今日はここで寝よう…

 

サイダーを飲み干して床に置き、そのままソファーで横になった…

 

 

 

「マーカス君‼︎朝ごはん出来たわ‼︎」

 

「んぁ…」

 

貴子さんの声で目が覚める

 

ソファーから起き上がり、子供達が目に入った

 

「おきまちた‼︎」

 

「えいしゃん、おなかすいた⁇」

 

ひとみといよが朝ごはんの準備のお手伝いしている

 

「お腹空いた‼︎よしっ、食べよう‼︎」

 

子供達がいるテーブルに着き、手を合わせる

 

俺はいつも通りに座ったはずだった

 

だが、それは子供達が何気無しに“いつもここに俺が座るだろう”と思って開けてくれていた席

 

隣にはアトランタがいる

 

「アトランタ、美味しいか⁇」

 

「おいしい」

 

「ホントだっ…」

 

アトランタは何食わぬ顔でコーンフレークを頬張っている

 

俺の後ろでは、大人連中が一斉にアトランタの方を向いている

 

貴子さんと隊長に至っては、食パンを咥えたまま停止している

 

ついでに子供達も何人か停止している

 

「アトランタ⁉︎いつからお話出来る様になったの⁉︎」

 

「今話し始めたのか⁉︎」

 

「ごはんたべたい」

 

「そ、そうね‼︎」

 

「後にしような‼︎」

 

アトランタは黙々とコーンフレークを頬張る

 

心なしか、体も成長した気もする…

 

 

 

ごはんを食べ終え、夕方の哨戒任務の時間まで食堂で子供達と過ごす事にした

 

アトランタはたいほうから借りたのか、お魚のフィギュアをカーペットに並べている

 

「アトランタはどのお魚が好きだ⁇」

 

「ねて」

 

俺に気付いたアトランタは俺の足を押し、横になれと促す

 

「よいしょっ…」

 

横になった途端、お魚のフィギュアを持ち、俺の背中に手を掛ける

 

「へぐっ‼︎」

 

乗って来た瞬間、朝ごはんが出そうになった‼︎

 

ダメだ‼︎やっぱりデカくなってる‼︎

 

「あ''…あどらんだ…」

 

「おさかな、おさかな、かお」

 

アトランタはいつも通り俺の背中にオモチャを置いて遊んでいる

 

「うごいちゃだめ」

 

後頭部にお魚のフィギュアを置かれた

 

こいつが床に落ちると酷い目に遭う…

 

が、どうやら先に俺がダメそうだ…

 

「いぎでぎない…あぁ…」

 

アトランタは絶妙に呼吸が出来なくなる位置に座っている

 

俺はそのまま意識を失った…

 

 

 

数十分後…

 

「おさかなぐんたい、みどりぐんたい」

 

俺の背中は戦場と化した

 

「ありぁ、えいしゃ〜ん」

 

「おきお〜」

 

しかし俺は気絶している

 

「きぜつしてあす」

 

「たかこしゃんよんれくう‼︎」

 

ひとみが貴子さんを呼びに行き、いよが俺を呼び続ける

 

「えいしゃ〜ん、おきてくだしゃ〜い」

 

「すてぃんぐれいねんねしてるの⁇」

 

たいほうも来て、俺を呼び続ける

 

「すてぃんぐれい⁇どうしたの⁇」

 

「マーカス君⁉︎」

 

ひとみが貴子さんを連れて来て、たいほうも異変に気付く

 

「アトランタ‼︎降りなさい‼︎マーカス君‼︎マーカス君しっかり‼︎」

 

しかし反応は無い

 

「どうした⁉︎」

 

隊長も来て、気絶した俺が目に入る

 

「きそ‼︎酸素マスクを‼︎」

 

「分かった‼︎」

 

子供部屋に居たきそを呼んだ隊長はきそに酸素マスクを頼む

 

「アトランタ‼︎降りなさい‼︎マーカス君死んじゃうから‼︎」

 

「しなない」

 

「死んじゃいそうなの‼︎降りなさい‼︎」

 

「持って来たよ‼︎」

 

酸素マスクを当てられると、ようやく呼吸が出来た

 

「はっ‼︎」

 

「おきまちた‼︎」

 

意識が戻るが、アトランタはまだ乗っているので起き上がれない

 

「アトランタ…潰れちゃう…」

 

「つぶれない」

 

「アトランタ…」

 

食堂の空気が一気に強張る…

 

「たたた貴子…」

 

隊長が焦っているのが見える

 

「いけましぇん‼︎」

 

「まだこどもです‼︎」

 

ひとみといよが貴子さんの足に付いて止めている

 

「ひとみ‼︎いよ‼︎来い‼︎」

 

「「ぐわー‼︎」」

 

隊長に抱えられ、ひとみ、いよ、たいほうが退散

 

きそは俺に酸素マスクを当て続けている

 

「退けと言っているのが分からんのか…」

 

「あっ…」

 

貴子さんが武蔵に戻っている‼︎

 

「だ、ダメだ貴子さん‼︎それだけは‼︎」

 

「あたしのだもん」

 

「マーカスはアトランタだけのものではない‼︎退かないなら、娘だろうと拳で退ける‼︎」

 

「おさかなぐんたい」

 

貴子さんがマジギレしているにも関わらず、アトランタはまた遊び始めた

 

「ぬんっ‼︎」

 

貴子さんがノーモーションでアトランタにストレートを向けた‼︎

 

すると、アトランタは俺の首根っこ部分の服を掴み、貴子さんのストレートに俺の顔面を向けた

 

「あああアトランタ‼︎良くない‼︎良くないって‼︎ぐわぁぁぁぁあ‼︎」

 

パガァン‼︎

 

バリィィィイン‼︎

 

俺は本日二度目の気絶をしながら、窓の外へと吹き飛んだ…

 

 

 

 

「顔面粉砕骨折、鼻骨骨折、歯が上下合わせて計12本粉砕、胸部圧迫、後脳震盪だね」

 

「う〜む…見事にボコボコだぁ…」

 

あの後、ひとみといよがぴ〜ぽぴ〜ぽ言いながら担架を持って来てくれて、隊長とローマが担架で俺を工廠のカプセルに搬送

 

後はきそが処置をしてくれた

 

「マーカス君…」

 

顔面が青ざめ、物凄〜く申し訳なさそうな顔の貴子さんが来た

 

「申し訳が立たないわ…」

 

「気にしないでいいさ‼︎これ位の生傷、しょっちゅう受けてる‼︎」

 

「大怪我じゃない…」

 

「気にしないでいいさ‼︎よいしょっ…俺はこの通り生きてますし‼︎」

 

立ち上がって、貴子さんに元気な姿を見せるが、貴子さんの顔は浮かない

 

「私、しばらくアトランタと基地を出るわ…」

 

「貴子さん」

 

「…」

 

「二度と言わないでくれ、その言葉」

 

「アトランタが迷惑かけるわ…」

 

「かけていいんです、何度だって」

 

「レイの言う通りだよ‼︎何なら、僕が何度だって治すから‼︎」

 

「ありがとう…」

 

「お願いだ…二度と出て行くなんて言わないでくれ…俺はそっちの方が嫌なんです」

 

「大丈夫、二度と言わないわ⁇その代わり、今回の件も絶対にお詫びをさせて。お願い…」

 

貴子さんの言葉に、一度だけ頷く

 

「さ、戻ろう‼︎」

 

「歩ける⁇」

 

「そらもうピンピンよ‼︎」

 

きそを横に置き、食堂に戻る…

 

丁度お昼ご飯が終わった位で、アトランタがカーペットの上にいた

 

「おこられた」

 

「アトランタ悪い事してないもんな⁇」

 

「うん」

 

アトランタに反省の色は無いように見えるが、散々貴子さん辺りに怒られたのか、乗ろうとして来ない

 

アトランタの前で肘をついて横になるが、乗って来ない

 

「乗らないのか⁇」

 

「のらない」

 

そう言って、俺の目の前にお魚のフィギュアを並べて行く

 

「おさかな」

 

アトランタはお魚のフィギュアを横一列に並べて行く

 

「アトランタはどのお魚が好きだ⁇」

 

「こいつ」

 

アトランタが腋に抱えていた鯉のぬいぐるみが、単横陣に置かれていたお魚軍隊の背後に置かれる

 

「ぜんぶてんぷらいき、ふぁいや」

 

お魚の軍隊はアトランタの手により、おままごとセットの鍋に入った

 

「緑の兵隊さんはどうするんだ⁇」

 

「あれぜんさい」

 

「前菜かぁ…」

 

しばらく遊んだ後、アトランタは俺の近くで鯉のぬいぐるみを枕にして横になり始めた

 

「まーかすおじさん…」

 

「どうした⁇」

 

俺の手を取り、いつも通り胸元に置かれる

 

「ごめんなさい…」

 

「いいんだ。アトランタは何にも悪くない」

 

アトランタも艦娘

 

成長が急激に来る時がある

 

恐らくアトランタは今なのだろう

 

「ねむたくなってきた…いつものやって」

 

「分かったっ…」

 

アトランタがかなりの力で握る俺の腕は胸元をゆっくり叩く

 

数分もすると、アトランタは眠った…

 

「マーカス君」

 

「ありがとう」

 

アトランタにタオルケットを掛けた後、貴子さんがコーヒーを淹れてくれた

 

「朝方はあんな事あったけど、あんなに懐くのマーカス君だけなの…」

 

「良かった…」

 

正直、周りからも言われてずっと気になっていた

 

アトランタは俺に懐いているかどうかだ

 

「多分なんだけど、アトランタの愛情表現は私と一緒なのよ…」

 

「どんなですか⁇」

 

コーヒーを飲みながら貴子さんの方を向くと、左手をコキコキ鳴らしていたのですぐに気付く

 

貴子さんもアトランタも、愛情表現が少し過激なのだと

 

「そろそろ哨戒ね⁇」

 

「行って来ます‼︎」

 

「ちょっとアトランタに教えておくわ‼︎気を付けてね‼︎」

 

マグカップを置き、哨戒に向かう…


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