艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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話数は変わりませんが、題名が変わります

ワシントンはパピーことマーカスにオモチャを買って貰います

果たして何を選ぶのか…


295話 双眼鏡の向こう側

「おいすい」

 

「お皿が綺麗になったら、ごちそうさま、だ」

 

「ごちそさま」

 

「そうだっ」

 

ワシントンは綺麗にドリアを食べた

 

物覚えも早い

 

後はワシントンが興味を示す物が分かれば良いのだが…

 

「高雄さんの所は如何でしょうか⁇」

 

「なるほど、あそこならオモチャもあるな‼︎」

 

完璧に親潮に思考を読まれ、俺達は間宮を出て高雄の部屋に向かう

 

高雄の部屋に着き、きそと親潮は先に入る

 

俺と横須賀はワシントンをオモチャコーナーに連れて行く

 

「おー」

 

「ワシントンはどれが好きだ⁇」

 

カラフルなオモチャを目の前に、ワシントンは口を三角にし、目を輝かせる

 

「ぬいぐるみもあるわよ⁇」

 

横須賀の手には可愛いクマのぬいぐるみ

 

「みーぐるみ⁇」

 

「ぬいぐるみにするか⁇」

 

「んー」

 

ワシントンは下を向いて迷っている

 

どうやら興味はぬいぐるみではないみたいだ

 

「お服もあるぞ⁇」

 

「んー」

 

ちょっとずつワシントンが分かって来た

 

ワシントンの「んー」は、どうしようか迷っているか、好きでは無いみたいだ

 

ワシントンは色々見て回る

 

音の出る絵本、飛行機の模型、ぬいぐるみ、フィギュア、ラジコン…

 

中々の量がある中、ワシントンは中々決めない

 

「どうした⁇」

 

急にワシントンが壁に掛かっている何かを見始めた

 

「これは“双眼鏡”だ。軍人の人が使うんだぞ⁇」

 

「ぱぴー、つかう⁇」

 

「ぱぴーも使うぞっ。遠くを見る時に使うんだ‼︎」

 

双眼鏡が気になっている様子なので、見本の双眼鏡を持たせてみた

 

「こうやって使うんだ」

 

俺の手元でも見本の双眼鏡を持ち、ワシントンの前で使って見せた

 

「こう」

 

「ははは‼︎反対だ‼︎」

 

ワシントンは双眼鏡を反対に見る

 

逆にさせた後、もう一度ワシントンは双眼鏡を見る…

 

「おー」

 

「何が見える⁇」

 

「きっそ」

 

恐らくワシントンの目には、ドアップのきそが映っている

 

「気に入ったか⁇」

 

「これおいすい」

 

ワシントンは欲しいや好きの表現を、全部美味しいと思っている

 

「楽しい気持ちになったら、好きって言うんだ」

 

「これすき」

 

「よしっ‼︎じゃあこれにしような‼︎」

 

双眼鏡を高雄の所に持って行ったタイミングで、きそと親潮も何かを持って来た

 

「これでいいか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

きそは充電式電池パック、親潮は観光地図を持って来た

 

「何か欲しいか⁇」

 

最後に一応横須賀にも聞く

 

「そうね…このクッションにしようかしら⁇」

 

横須賀には珍しく、安いクッションを選んで来た

 

「これでいいのか⁇」

 

「えぇ」

 

お金を払い、高雄に袋に入れて貰っている最中に気が付いた

 

…クッションでサボる気だ

 

だが、今更気付いても遅い

 

高雄から袋を受け取り、高雄の部屋を出た…

 

 

 

 

執務室に戻り、ワシントンはカーペットの上に腰を降ろした

 

「ここがワシントンのお家だ」

 

「おうち」

 

「みんなでご飯を食べたり、おやすみする所だ」

 

「おー」

 

「ただいま‼︎おぉ‼︎可愛い子だな‼︎」

 

「いーちゃんも気に入ったぞ‼︎」

 

朝霜と磯風が帰って来た

 

「アタイは朝霜‼︎」

 

「いーちゃんは磯風だ‼︎」

 

「あたい、いーちゃ」

 

「そうだそうだ‼︎物覚えのいー子だ‼︎」

 

朝霜は子供の扱いが上手い

 

アトランタでさえジッとしている位だ

 

「ただいま」

 

「ただいま‼︎」

 

「帰って来た‼︎」

 

赤城が谷風と福江を連れて帰って来た

 

「あかちゃん」

 

「わしんとん」

 

赤城はワシントンを見るなり、両手を広げる

 

「おいで」

 

ワシントンは赤城に寄って行き、抱き上げられる

 

「かわいい」

 

「日頃からあの様な感じです、創造主様」

 

「なるほどなるほど…良い事だ‼︎」

 

「もう少ししたら、食堂に行きましょうか。清霜と早霜もそこに居るみたいなの」

 

「分かった。ワシントン、よく見えるか⁇」

 

「ぱぴーみえるよ」

 

ワシントンは双眼鏡をしたまま、俺の方を向いた

 

「嬉しそうだなぁ⁇大事にすんだぜ⁇」

 

「だいじ⁇」

 

朝霜が大切な事をワシントンに教える

 

「そっ。宝物は、大事に使うんだ‼︎みんなにも宝物があるんだぜ⁇双眼鏡がなくなったら、悲しいだろ⁇」

 

「かなすい」

 

「ワシントンは良い子だから分かってくれんな⁉︎」

 

「わかた」

 

口はへの字のままのワシントンだが、ちゃんと朝霜の顔を見て返事をしている

 

「おとうさん」

 

「おっ、どうした赤城」

 

「あとらんたちゃん、しゃべった」

 

赤城が急にアトランタが喋ったと言い出した

 

「ホントか‼︎なんて喋ってた⁉︎」

 

「くんな、ふぁっ○」

 

「アトランタぁ…」

 

流石に頭を抱える

 

第一声目は飲み物を飲んだ後に発する「あ」だが、自分の意思で発した第一声目が罵声とは…

 

基地に帰ったらどうなるのか…

 

俺はその日の夜を横須賀で過ごし、次の日の明け方、基地に戻った…


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