艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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話数は変わりませんが、題名が変わります

サンフランシスコから送られて来た新型艦、ワシントン

まだまだ覚え盛りのワシントンは、沢山の物、人を見て覚えて行きます

その裏で赤城とアトランタは…


295話 はじめてがいっぱい

「…」

 

ワシントンと呼ばれた少女は起き上がった後、もう一度辺りを見回す

 

「俺はマーカスだ」

 

「私はジェミニよ⁇」

 

「…」

 

俺達二人を交互に見るワシントン

 

「あー、えっと…お父さんと、お母さん‼︎」

 

きそが分かりやすく説明し、俺も横須賀も一瞬きそを見る

 

少女はきその言葉に顔を向けるが、恐らく分かっていない

 

「パパ、ママですよ、ワシントンさん」

 

「ぱぴー、まみー」

 

「そうだそうだ‼︎」

 

「偉いわね‼︎」

 

「此方をどうぞ‼︎」

 

親潮から服を貰い、俺はワシントンを拭いた後に着替えさせる

 

「ぱぴー」

 

「ん〜⁇どうした⁇」

 

ワシントンの目線の先には、きそがいる

 

「あの人はきそだ」

 

「きっそ」

 

次は親潮に目線が行く

 

「あの人は親潮だ」

 

「おやちお」

 

それを聞いて、俺と横須賀は微笑む

 

「はいっ‼︎おやちおですっ‼︎」

 

「よしっ‼︎ワシントンの朝ごはんは何にしようか‼︎」

 

ワシントンはジーッと俺を見ている

 

「ワシントン、いーってしてご覧」

 

「いー」

 

俺が歯を見せると、ワシントンもマネをして歯を見せた

 

パッと見た所、しっかり乳歯が生え揃っている

 

「よしっ‼︎じゃあ、間宮で初めての朝ごはんだな⁇」

 

ワシントンの手を取り、地に足を付かせる

 

立って分かったが、たいほうより少しだけ身長が高い位だ

 

「立てるか⁇」

 

口を尖らせてジーッと床を見た後、視線を俺に戻すワシントン

 

「おてて繋ごうな⁇」

 

「てておてて」

 

「そうだっ」

 

「きそと親潮は私と繋ぎましょうね⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

ワシントンと手を繋ぎ、工廠を出る

 

 

 

 

外に出たワシントンは口をへの字に閉じたまま、ジーッと空を眺めている

 

「あれは飛行機だ」

 

「ひこーき」

 

「あれはお船だ」

 

「おふね」

 

ジーッと見てはいるが、色々目移りするワシントンに色々教えて行く

 

赤城同様、まずは簡単な事からだ

 

「ここは間宮だ」

 

「まみー」

 

間宮に着いたので紹介をすると、ワシントンは横須賀の方を向いた

 

「どうしたのワシントン⁇」

 

「ふっ…ワシントン‼︎レストランだ‼︎」

 

間宮と教えると、ワシントンは横須賀をマミーと呼ぶので間違える

 

ここはレストランと教えた方が正解だな

 

「れすとらん」

 

「そうだっ。ご飯を食べるんだ」

 

「ごはん」

 

「いらっしゃいませ〜‼︎」

 

伊良湖に出迎えて貰い、入って右側のいつもの席に座る

 

「きそと親潮は何にする⁇」

 

「僕はクリームソーダ‼︎」

 

「親潮はクリームココアを‼︎」

 

「私は久々にチョコレートケーキとホットコーヒーを‼︎」

 

「ワシントンはどれにしようか⁇」

 

ワシントンの前にメニューを広げると、メニューの写真を見始めた

 

「おー」

 

「ドリアにするか⁇」

 

「どりあ」

 

ミートソースが乗ったドリアなら、ワシントンも食べられそうだ

 

伊良湖に注文し、ドリアが来るのを待つ…

 

「ぱぴー、まみー、きっそ、おやちお」

 

ワシントンはちゃんと名前を覚えており、俺達を順番に見ながら名前を言って行く

 

「おっ⁇もう覚えたのか⁇」

 

ワシントンは俺の顔を見る

 

「ひこーき、おふね、どりあ」

 

「偉いぞワシントン‼︎きっそとおやちおは、ぱぴーとまみーの娘だ‼︎」

 

先程まで少し気を張っていたきそと親潮の顔が綻んでくれた

 

「むすめ」

 

「ワシントンもよ⁇」

 

「むすめ」

 

「お待たせしましたー‼︎」

 

注文した物がテーブルに並んで行く

 

「わしんとんのどりあ」

 

「そうだっ。スプーンを使うんだ」

 

ワシントンの前にもドリアが置かれ、俺ももう一つのドリアを一緒に食べる

 

「こうやって掬って、ふーふーして食べるんだ」

 

「おー」

 

ワシントンはスプーンを握り締め、俺のマネをしてドリアを冷ました後、口に入れる

 

「かむかむ」

 

「かむかむ」

 

「ごっくん」

 

「ごっくん」

 

「美味しいか⁇」

 

「おいすい⁇」

 

「ドリアを沢山食べたいと思ったら、美味しい、だ」

 

「おいすい」

 

「よしよし‼︎」

 

ワシントンは実に美味しそうにドリアを食べる

 

ほとんど目線はドリアだが、時々俺の顔を見てはまたドリアに視線を戻す

 

「いよいよ父親の貫禄ね…」

 

「主夫が板に付いて来てるよ…」

 

「これでまた一つ道が開けましたね…」

 

正面では、恐らく俺の悪口を言っている親子三人がいる

 

「そう言えば、赤城はどうした⁇」

 

「赤城は今日は保育部で赤ちゃんを見てるの」

 

「赤城がか⁉︎」

 

「由良に教えて貰ってるらしいわ⁇」

 

「赤城さんが赤ちゃんに手を上げたりしている所を見た事ありませんよ⁇」

 

「レイに似たんじゃない⁇」

 

きそがイタズラに笑う

 

「大淀博士の議題に上がりそうだ…」

 

俺がそう言って頭を抱えると、ワシントン以外が笑う…

 

 

 

その頃、赤城のいる保育部では…

 

「おいで」

 

赤城の前にはアトランタ

 

アトランタは赤城にプラスチックのボールを顔面に投げ、赤城を否定する

 

「おいで」

 

しかし赤城は瞬き一つせず、いつもの笑顔のまま、アトランタにジリジリ寄る

 

アトランタはそれを見てゆっくり後退する

 

「おいで」

 

おいでしか言わない赤城に恐怖を覚え、アトランタは更にボールやおもちゃを赤城の顔面に当てる

 

「おいで」

 

それでも一度の瞬きもせず、両手を広げて近寄って来る赤城に、アトランタは遂に追い詰められた

 

「だっこ」

 

「くんな」

 

防御本能で遂にアトランタが初めての言葉を口にした‼︎

 

「しゃべった」

 

「くんな」

 

「かなしい」

 

そうは言いつつ、赤城はアトランタを抱き上げる

 

抱き上げられたアトランタは案外大人しく、ご飯を食べる椅子に座るまでジッとしていた

 

赤城にご飯を置いて貰い、スプーンとフォークを渡される

 

「すーぷん」

 

「…」

 

赤城は一生懸命説明してくれるが、アトランタは赤城を一点見つめ

 

「ふぁーく」

 

「ふぁっ○」

 

「かなしい」

 

アトランタは分かって言ってるのか、言っていないのか…

 

それでも赤城は怒る事なく、アトランタと一緒にご飯を食べる…


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