艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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マーカスが逢いに来た人物は…


294話 叔父と父親のララバイ(3)

タバコを吸いながら、東京方面に向かう

 

《創造主様。今どちらに⁇》

 

下道を走っていると、親潮から通信が来た

 

「首都高に乗るか迷ってらぁ‼︎」

 

《現在首都高速道路は復旧作業が完了していない区間があります。あまりオススメはしません》

 

「目的地は国会議事堂だ。行けそうか⁇」

 

《単独戦闘もオススメしません‼︎攻撃ならグリフォンによる空爆を強くオススメします‼︎》

 

「違う違う‼︎人に会いに行くんだよ‼︎」

 

《あっ…申し訳ありません、取り乱して…では、500m先のインターから首都高速道路に入って下さい》

 

親潮は俺が一人クーデターを起こすと思っていたらしい

 

首都高に乗り、一発目の料金所に近付く

 

《現在料金所は機能していません。バーは降りていますか⁇》

 

「ぜーんぶ降りてらぁ」

 

料金所全てに、立ち入り禁止のバーや料金所自体のバーが降りている

 

《左から2番目の料金所、右側のバーが脆いです》

 

「踏み倒しだな‼︎よし‼︎」

 

バーを破壊し、料金を踏み倒す

 

「あ〜らら…」

 

《う〜らら、ですか⁇》

 

「たまにはちょっと上から見る街も良いモンだなってな」

 

防音壁が所々破壊されており、久方振りに軽く上から東京の街を見れた

 

未だに所々復旧が終わっていない街…

 

倒れかかったビル群…

 

街ごと水没したエリア…

 

復旧なぞ、無理な話なのだろうか…

 

《首都自体は機能している様子です。昔の様には行きませんが、人は活気を取り戻しています》

 

「…」

 

《創造主様⁇》

 

「何でもない。考え事をしてただけだ」

 

《そうですか。次のインターで降りて下さい。料金は踏み倒しでお願いします》

 

「どのバーが柔らかい‼︎」

 

《お好きなのを。オススメは正面突破です‼︎》

 

親潮も相当俺を分かって来てくれている

 

首都高を降り、国会議事堂に近付く…

 

 

 

「ここは無事だったんだな」

 

《記録によると、国会議事堂だけは守り抜いた様子です》

 

「止まれ‼︎」

 

国会議事堂前で止められた

 

「この先は一般人立ち入り禁止区域だ‼︎」

 

「友達に逢いに来たんだ。通してくれ」

 

「ご友人の名前は」

 

「アクィラだ」

 

「確認を取ります」

 

数分足止めをされ、返答が来る

 

「申し訳ありませんマーカス・オルコット様‼︎アクィラ様及び総理の了承が取れました‼︎」

 

そう言って貰い、内心ホッとした

 

なんせいきなりの訪問

 

跳ねられる可能性の方が高かったからだ

 

「誘導に従って真っ直ぐ向かって下さい‼︎」

 

「ありがとう」

 

誘導に従ってジープを進ませ、駐車区域でジープを停めた

 

紙袋を持ち、国会議事堂の中に入る…

 

 

 

「マーカスが直々に来るとは…矢崎‼︎コーヒーと羊羹を‼︎」

 

「はっ‼︎直ちに‼︎」

 

「総理、マーカス大尉が此方に来ると連絡を受けました」

 

アクィラが総理の所に来た

 

「何かあったのだろう…丁重にもてなしてくれないか」

 

「畏まりました」

 

アクィラが一礼した時、総理のいる部屋がノックされた

 

「開いている」

 

「失礼しますっと…」

 

紙袋を抱えた俺を見て、総理とアクィラは生唾を飲んだ

 

「すまない、急に顔を見たくなっただけさ」

 

「まぁまぁ座ってくれ‼︎今矢崎にお茶を淹れさせている‼︎」

 

「アクィラ、るいちゃんは⁇」

 

「いるわよ‼︎るいちゃ〜ん‼︎」

 

「あ〜い‼︎」

 

隣の部屋から声が聞こえた

 

ドアが開き、るいちゃんが来た

 

「あっ‼︎パーパ‼︎」

 

飛び付く様に俺の所に来たるいちゃんを抱き締める

 

「すまないな、ずっと逢えなくて」

 

「るいちゃん大丈夫‼︎マーマも、ソーリも、ヤザキもいるの‼︎あとフミちゃんとホーショーさん‼︎」

 

「そうかそうか‼︎パーパな、るいちゃんにこれ買って来たんだ‼︎」

 

るいちゃんに持って来た紙袋を渡した

 

隊長とグレカーレを見ていると、急にるいちゃんに逢いたくなった

 

「お人形さんだ‼︎パーパ、ありがとう‼︎」

 

紙袋の中身は、文月とるいちゃんの分の着せ替え人形と服のセット

 

それと申し訳程度のお菓子

 

「遊んでおいで‼︎」

 

「うんっ‼︎パーパも来てね‼︎」

 

るいちゃんは部屋に戻って行った

 

「用事が済んだので、本官は帰投します‼︎」

 

「マーカス、茶位付き合ってくれ」

 

「ではお言葉に甘えて…」

 

「アクィラ、君もな⁇」

 

「ありがとうございます」

 

総理、アクィラ、矢崎と共に、少しだけ小さなお茶会が開かれる

 

もっぱら潜水艦の話ばかりだったが、俺は今日、話せて良かったと思う位有意義な時間を過ごせた…

 

 

 

「俺はそろそろ帰るよ」

 

「いつだって来てくれ。マーカスなら歓迎だ‼︎」

 

「今度は皆の分の土産も買って来るよ」

 

ジープに乗り、また首都高に戻る…

 

 

 

帰り道、無人のパーキングエリアにジープを停めて街を見下ろして見た

 

《創造主様、心拍数が上昇しています》

 

「色々思い出してな…」

 

東京にはあまり行った事がないが、こうも都市部が破壊されているのを見ると胸が痛む

 

《創造主様の帰る場所に似ていますか⁇》

 

「そうだな…ちょっと似てるかもな…」

 

親潮に言われて気付く、この胸の痛み

 

自分が帰る場所と重ね合わせたからだ

 

「どう言って良いか分からないんだ…その街に当てる感情ってのが…」

 

《創造主様の現在の思考を検索した結果、“恋愛”のそれに非常に近いものがあります》

 

「なるほどっ…いつか連れて行ってやるよ。良い街だぞ」

 

《楽しみにしています》

 

ジープを出し、横須賀へと戻る…

 

 

 

横須賀に着くと、隊長が発着場で待っていてくれていた

 

「すまないなレイ」

 

「気にしないでくれ‼︎よいしょっ‼︎俺も逢いたい人に逢って来た‼︎」

 

ジープから降りながら隊長と話を続ける

 

「今しがたサンフランシスコから連絡があってな、向こうでようやく艦娘が完成したらしい」

 

「ほ〜⁇そいつは楽しみだ‼︎」

 

広場の喫煙所を目指しながら会話を続ける

 

「こっちに来るらしいぞ、アークロイヤルbisと一緒にな⁇」

 

その名前を聞き、背筋がヒヤッとする

 

「…セイレーン・システムか⁇」

 

アークロイヤルbisに搭載されていたセイレーン・システム

 

もしあれが未だに造られているのならば、またややこしい分離作業をしなければならないかも知れない

 

「どうも違うらしい。カプセルに入れられた状態で到着するみたいだ。その辺りはレイの方が詳しいだろ⁇」

 

「見てから判断しろって事か…」

 

タバコに火を点け、ほんの少しだけ考える

 

今しばらくは安心出来なさそうだ…

 

話を変えよう…

 

「グレカーレはどうだった⁇」

 

「見た目と同じさ。イタズラ好きな子だが、礼儀は正しい」

 

「隊長、レイ‼︎」

 

横須賀が来た

 

「レイ、隊長から話は聞いた⁇」

 

「アークロイヤルbisの話か⁇」

 

「そっ。カプセルも一緒に到着するから、面倒を頼みたいらしいのよ」

 

「俺一人じゃ無理だ。手伝って欲しい」

 

そう言うと、隊長も横須賀も笑って頷いた

 

「任せて‼︎何人見て来たと思ってんのよ‼︎」

 

「きっと良い子だ、心配するな‼︎」

 

二人に微笑みを返すが、新しい子が来る事に不安はある

 

どんな子が来るのだろうか…


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